シブヤ大学

授業レポート

2012/4/18 UP

墨と筆で自分と向き合う旅にでる

自分の名前の由来知っていますか?
受け継いだ名前、縁起が良いもの、音から、文字から、色々な理由がありますが、名前というプレゼントにはつけてくれた人達の想いが込められています。
今回のワークショップでは名前の由来を知り、今までとこれからの自分に向き合い、大切にしたい自分の「軸」を文字にのせて墨と筆で表現しよう!という内容でした。

講師である書家の紫舟さんは、ドラマやCM・様々な商品の題字を手がけられ、個展の様子や作品を画像にあわせて丁寧に説明してくれました。例えば、大河ドラマの題字を書かれた時は、「龍」という横線が多く横に拡がりがちな文字を、主人公である龍馬の「しゃんと立って時代を見据えた姿」というイメージを伝える為に縦長な形にし、「型にはまらず東西を駆け巡った姿」を「馬」の脚の点を大胆にはみ出させ風になびくような書き方で描き、「伝」の最後の一筆を鋭く書くも払わず止めることで北辰一刀流の免許皆伝でありながら人を殺めなかった龍馬の太刀筋を表現されていました。そのたった3つの文字からだけで、主人公とドラマのお話がどんな内容なのか伝わってくる力強いメッセージを持った文字でした。

「伝えたい大事なことを字にのせて表現する」
紫舟さんは言葉を表現する時、情報を集め、本質と向き合うことから始めるそうです。そして、表現できるカタチが決まるまで色々なタッチと技法で書き続け、その数なんと500回!!とことん追求したからこそ伝わる力強いメッセージなんだ!と感じました。


お話を伺った後、ワークショップが始まりました。はじめに紫舟さんの問いかけに、紙に書き出しながら自分と向き合っていきます。
①自分の「名前」の由来は何か?
②これまでの人生はどんなだったか?
③どんな人になりたいか?
④どんな生き方(=仕事)をしたいか?
次に書き出した文章から、自分が大切だと思うキーワードに○をつけていきます。すると大事にしたい「言葉」があらわれてきました。

「言葉=大事なことを名前にのせて墨と筆で表現する」
目の前に拡げられた画仙紙は幅90cm×長150cm位のとても大きなもの。そこに大小の筆で名前を書いていきます。久しぶりの墨の匂いは懐かしく、参加したみなさんはむかーしの習字の授業を思い出したのかちょっと緊張気味。
紫舟さんのお題にそって、名前を書いていきます。
「まずは自由に書いてみて」「次は思いっきり右下がりで」「まっすぐな信念を表現して」「4歳時に戻ったつもりで」。
はじめは遠慮がちに筆を置いていた参加者も、テンポの良いお題につられて、どんどんダイナミックに自由な表現になっていきます。お互いの文字を見せ合い、「その表現おもしろいねー!」「名前にあってる!」などコミュニケーションをすることで、新しい刺激をもらいます。
「まあるいかたち」「初恋のようなきもち」「情けない気分で」「トゲトゲしたかたち」・・・、何種類のお題を書いたかわからなくなった頃、いよいよ最後のステップへ。今まで書いた文字の中から、表現したいタッチで描かれている文字を選び、みんなに発表しました。

それぞれに付けられた由来や物語があるように、文字も様々でとても興味深かったです。
「世界に飛び出していけるように、最後の一画は流れるような躍動感のある筆使いにしました。」とか、「真理をまっすぐ追究していけるように、芯のある中心線にしました。」などなど。
参加者の中には同じ名前の方もいましたが、表現は全く異なりその人が大事にしたいことが伝わってきました。

今回のワークショップを通して、みなさんしっかり自分の軸を探しにいけたのではないでしょうか。筆で表現するという作業は、中から外に向かって自分を解放していくような爽やかな気分を体感できる貴重な時間でした。これからも自分の軸と向き合っていきたいです。

紫舟さん、素敵な授業をありがとうございました!!

(ボランティアスタッフ:大石 千裕)