シブヤ大学

授業レポート

2011/3/9 UP

古民家バーに流れる時間

この授業は、「ウィスキーを飲みながら、読書をしませんか?」ということで始まったバー読シリーズ3回の後を受け、
バー読ナイトウィークとして3週間に渡る全6回のシリーズ授業の第1夜目です。
今回のテーマは「時間」。


◆熟成されたお酒「竹鶴12年」

今回初めに飲ませて頂いた「竹鶴」は、日本のウィスキーの父である、竹鶴政孝名前を冠したウイスキーです。
北海道・余市と仙台・宮城峡、それぞれの蒸留所で長期の熟成を重ねたモルトウィスキーをヴァッティング。
その中でも、香りが良くてしかも飲みやすい12年です。
ウィスキーは醸造直後は、無色透明です。木製の樽の中で長い年月を過ごす事によって、あの豊かな風味と色合いが生まれるのです。


◆「田舎のおばあちゃん家に帰ってきた。」

すがはらは、円山町の路地にひっそりとある60年前の古民家をリノベーションしたお店です。昭和初期に芸者さんのお師匠さんのお宅でした。
当時を懐かしむお姐さんがお客様としていらっしゃる事もあるそうです。
古民家をリノベーションする際に使用する木材は、同じ年代の建物から移築します。木同士にも相性があるのだとか。

お店のコンセプトは、「田舎のおばあちゃん家に帰ってきた。」と言う事で、バーには珍しく靴を脱いで上がります。
ゆっくりくつろいで、リラックスするお客さんが多いそうです。

今回の先生である曽根さんは、30歳にしてバーテンダー歴15年。15歳からお父さんのお店でバーテンダー修行を始めたそうです。
普通職歴15年というと中堅というイメージがありますが、バーテンダーの世界ではまだまだひよっこで、やっとスタートラインに立ったところ。
小学校の卒業文集に「バーテンダーになる」と夢を書いた曽根さん。現在は夢を実現し続けている最中です。
そして、いずれは「閉店してしまった、お父さんのお店を復活させる。」と言う次なる夢の為にがんばっています。
何年・何十年後かにシブヤ大学HPの先生の近況に、曽根さんがバーをOPNEしたお知らせが載る日が楽しみです。


◆時の流れを感じる

おいしいお酒とBarすがはらの魅力について学んだところで、ここからは生徒さんが主体となって授業を進めていきます。
先ずは、自己紹介と自分が持ってきた本の紹介をします。

一番目の生徒さんは、「実は人前で話すことが苦手だけど、好きな本と一緒なら克服できる。」と言ってトップバッターを志願してくれました。
時間がテーマということで、タイムトラベルの本でした。人前が苦手だなんて事は全く感じられない、本が好きという気持ちが伝わる自己&本紹介でした。
その後も生徒さん達が思う「時間」「建物」に関する本&自己紹介が続きました。
紹介終了後は、気になった本を見せて貰って、本の話しやそこから広がった歌舞伎や建築の話し等、いろいろな話しで和やかに盛り上がりました。
お店のご好意もあり、授業終了後も11時近くまで楽しい時間が続きました。

最後に、曽根さんが89%の確率で上手くいく(?)と言う、すがはらの二階にある個室を見学してお開きとなりました。
気合を入れて帰っていった、男子達結果はどうでしょう?



今回紹介された本は次のようなラインナップです。
ご興味をお持ちの方はぜひチェックしてみてください。

・つばき時跳び/梶尾真治/平凡社
・文鳥・夢十夜/夏目漱石/
・ワシントンハイツ-GHQが東京に刻んだ戦後-/秋尾沙戸子/新潮社
・青葉茂れる/井上ひさし/文春文庫
・下駄の上の卵/井上ひさし
・きのね<上>/宮尾登美子/新潮文庫
・白井晟一、建築を語る-対談と座談/白井晟一/中央公論新社
・地下鉄に乗って/浅田次郎/講談社文庫
・宮大工棟梁・西岡常一 「口伝」の重み/西岡常一/日本経済新聞出版社
・沈黙博物館/小川洋子

スタッフ天野咲耶から感想
すがはらに足を踏み入れると、高級感がありながら、実家にきたような落ち着く雰囲気を持つ店内。
生徒さんも、バーカウンターやテーブル席に座り、お互いの距離の近さに少し緊張しているようす。
一杯目のウィスキーの飲み方を選び、バーテンダーの曽根さんから出された美しいほどのお酒を前にすると、なんだか密やかに高揚している雰囲気を私は見逃しませんでしたよ…。
美味しいお酒を堪能しながら、アサヒビールさんによる「竹鶴」についてのお話に聞き入る皆さん。
そして、バーテンの曽根さん(フィギュアスケートの高橋大輔さん似!)のテンポのいいお話と、お酒の力も手伝って、場も徐々に和んでいきました。
生徒さんは、SEの方や、建築士さん、新聞記者さんまで、幅広い。お互いの顔をじっくり見れる、濃密な授業でした。
平日の夜にも関わらず、結局11時近くまで、スタッフ・生徒さん含めみんな残って飲んでいました。「お先に失礼していいですか?」と少し遠慮がちに、授業企画担当の佐藤さんが言うと、曽根さんすかさず、「じゃあ僕もそろそろ…。」とひと笑いを買っていました。

すがはらの素敵な店内と、おいしいお酒と、曽根さんの人柄と、大好きな本と。
すべてが手伝ってか、それはとても、幸せな夜でした。

(ボランティアスタッフ 藤田知子)