シブヤ大学

授業レポート

2011/2/23 UP

患者とともに生きる医療

これまで心臓学科の授業では、ストレス、タバコ、食生活、AEDと、
具体的なアクションプランにつながることを中心に取り上げてきました。
第5回目となる今回は、「生きる」という大きくて深いテーマに着目。
三井記念病院の院長であり、日本心臓血管外科学会理事長も務める
髙本眞一さんにご登壇いただき、
ときに哲学的に、ときにご自身の経験を踏まえながら、
患者とともに生きる医療ついてお話していただきました。


医学の幻想と、医療でできること
医者は病気を治すものである。
病気はそのうち克服できる。
医療が進歩すれば、生命をつくることもできる。
私たちは、このような医学の幻想を抱いてはいないだろうか。
いまの医療では、こうすれば患者は治っていくだろうということは
わかっているが、人間の体は小宇宙であり、
そのメカニズムの大半は未だ究明されていない。
たしかに医学医療の進歩は目を見張るものがあるが、
治療の原動力となるのは患者の生命力であり
医師はそのガイド役に過ぎない。
例えるなら、医師は建築家というより、雨漏りを直す大工のようなもの。
人間の体はよくできていて、手術で心臓を見ると、神を見たような気になる。
医者は医療を通じ、生命を尊び、患者とともに生きることが大切なのだ。


ともに生きる医療へ
ともに生きる医療を実践するために、
医師は、自分の力が患者を治すという傲慢さを捨て、
看護師は、医師の言うことを鵜呑みにせず自分で考える意識を持ち、
患者は、チームの主役として自らも治療に責任を持つことが必要である。
そうやって、三者が協同して病気と闘うことで、
医師や看護師は患者を救うと同時に、患者に救われる。
ともに生きようという気持ちは、外交など何においても大切なこと。
人間の真理はともに生きることにあり、生きているだけですばらしい。
いい社会を実現するためにも、大きな真理を見つめよう。
人間は決して特別な存在ではなく、
広大な宇宙で生かされているに過ぎないのだから。

(ボランティアスタッフ:黒田紀行)