授業レポート
2007/2/24 UP
『箱膳』のある食風景のなかに、祖先が培ってきた調和の心を見る
今回の先生、曽根原さんが設立したNPO「えがおつなげて」は、さまざまな活動を通して自然と社会の活性化を図る組織です。
農村の過疎化が深刻化する一方で、『スローライフ』や『ロハス』などのキーワード化によって農村へ関心を向ける若者が増えている現代。彼らは、使われなくなった農耕地を生き返らせる開墾作業や、味噌造りのイベントなどで若者と農村をマッチングさせる機会を生み出しています。
今回の『箱膳』紹介もそうした活動のひとつ。農村に古くから伝わっていた智恵を学び、それを自然と暮らしの調和について考えるきっかけとする企画です。
『箱膳』の説明は、授業紹介欄にも書かれているので省略します。
農耕生活をする人々のごく日常生活のなかに育まれたこの文化様式は、貴族の作法や伝統芸能といったものでは決してなく、純粋に人と物を大切にする心のあらわれだったそうです。だから箱の開け方とか閉め方とか、あまり堅苦しい制約はありません。お互いへ敬意を払った作法を守ればいい。曽根原さんは『箱膳』を通して五つの「心」を感じ取ってほしいとまとめました。
一、 文化の心/長い年月をかけて培ってきた知識の深さに触れ、日本の「良い部分」を見直す。
二、 環境の心/水や食料を大切にして、無駄のない生き方を知り節度ある生活をする。
三、 健康の心/過不足のない食事を心がけることで、その人の本来の生命力を発揮する。
四、 家族の心/全員がそろうまで箱を開けない習慣が、家族の意味を語らずとも教える。
五、 ひとの心/自分のことは自分で管理し、摂生を行う自律心を養う。
ここから、小黒さんが指導を務める調理実習。簡単な調理をして、自分たちで箱膳に盛り付けます。料理が下手くそな僕は、同じ班のみなさんの足をひっぱってばかり。ホントすみません。あれやこれやと右往左往しながら料理は完成しました。
ダシガラまでも利用したレシピは、自分の普段の自炊と比べて驚くほどゴミの量が少ない。しかも、そのわずかな生ゴミも、ヤギに食べさせるためにすべて小黒さんが回収していきます。無駄なく暮らす智恵の深さと尊さは体験あっての感動です。
気になるレシピは… 玄米ご飯、じゃがいもと昆布のお味噌汁、五目豆、白菜の蒸し焼き、花豆の煮物、お漬物でした。
箱膳に料理を入れてふたをすると、いよいよ食事の時間。和室に全員が移動したところで、再びふたを開けて、膳となった裏面に器を並べなおします。本来はここで「いただきます」ですが、曽根原さんの配慮で「撮影時間」を導入。昔ながらの箱膳を前に、みんなが携帯電話のカメラで撮影するという、なんとも奇妙な光景が笑いを誘います。
それから「いただきます」斉唱。どの品も本当に美味しい料理でした。
食べることに夢中だったのか、お漬物を一切れ残すことを忘れてしまった人もちらほら。最後に白湯と漬物で器を洗い、お湯を飲みます。布巾で器を拭きあげ箱へ戻し、さらに箱膳を所定の置き場所へ各自が運んで授業終了。
農村や家族、箱のように小さなコミュニティーのなかで「教え」と「道具」が当たり前のように調和し、完結した世界観が『箱膳』のなかには生きていました。次々とやってくる新しい物の波に押されて、現代に生きる日本人は「道具と作法」を発明する時間を失ってしまったのかもしれない。伝統の深みに触れて、ふと、そんなことを考えました。
標高800メートル以上の高地でなければ育たないという花豆の、瑞々しい食感とやさしい甘みが、授業のあとも僕のなかに残りつづけています。
(ボランティアスタッフ・松本浄)
農村の過疎化が深刻化する一方で、『スローライフ』や『ロハス』などのキーワード化によって農村へ関心を向ける若者が増えている現代。彼らは、使われなくなった農耕地を生き返らせる開墾作業や、味噌造りのイベントなどで若者と農村をマッチングさせる機会を生み出しています。
今回の『箱膳』紹介もそうした活動のひとつ。農村に古くから伝わっていた智恵を学び、それを自然と暮らしの調和について考えるきっかけとする企画です。
『箱膳』の説明は、授業紹介欄にも書かれているので省略します。
農耕生活をする人々のごく日常生活のなかに育まれたこの文化様式は、貴族の作法や伝統芸能といったものでは決してなく、純粋に人と物を大切にする心のあらわれだったそうです。だから箱の開け方とか閉め方とか、あまり堅苦しい制約はありません。お互いへ敬意を払った作法を守ればいい。曽根原さんは『箱膳』を通して五つの「心」を感じ取ってほしいとまとめました。
一、 文化の心/長い年月をかけて培ってきた知識の深さに触れ、日本の「良い部分」を見直す。
二、 環境の心/水や食料を大切にして、無駄のない生き方を知り節度ある生活をする。
三、 健康の心/過不足のない食事を心がけることで、その人の本来の生命力を発揮する。
四、 家族の心/全員がそろうまで箱を開けない習慣が、家族の意味を語らずとも教える。
五、 ひとの心/自分のことは自分で管理し、摂生を行う自律心を養う。
ここから、小黒さんが指導を務める調理実習。簡単な調理をして、自分たちで箱膳に盛り付けます。料理が下手くそな僕は、同じ班のみなさんの足をひっぱってばかり。ホントすみません。あれやこれやと右往左往しながら料理は完成しました。
ダシガラまでも利用したレシピは、自分の普段の自炊と比べて驚くほどゴミの量が少ない。しかも、そのわずかな生ゴミも、ヤギに食べさせるためにすべて小黒さんが回収していきます。無駄なく暮らす智恵の深さと尊さは体験あっての感動です。
気になるレシピは… 玄米ご飯、じゃがいもと昆布のお味噌汁、五目豆、白菜の蒸し焼き、花豆の煮物、お漬物でした。
箱膳に料理を入れてふたをすると、いよいよ食事の時間。和室に全員が移動したところで、再びふたを開けて、膳となった裏面に器を並べなおします。本来はここで「いただきます」ですが、曽根原さんの配慮で「撮影時間」を導入。昔ながらの箱膳を前に、みんなが携帯電話のカメラで撮影するという、なんとも奇妙な光景が笑いを誘います。
それから「いただきます」斉唱。どの品も本当に美味しい料理でした。
食べることに夢中だったのか、お漬物を一切れ残すことを忘れてしまった人もちらほら。最後に白湯と漬物で器を洗い、お湯を飲みます。布巾で器を拭きあげ箱へ戻し、さらに箱膳を所定の置き場所へ各自が運んで授業終了。
農村や家族、箱のように小さなコミュニティーのなかで「教え」と「道具」が当たり前のように調和し、完結した世界観が『箱膳』のなかには生きていました。次々とやってくる新しい物の波に押されて、現代に生きる日本人は「道具と作法」を発明する時間を失ってしまったのかもしれない。伝統の深みに触れて、ふと、そんなことを考えました。
標高800メートル以上の高地でなければ育たないという花豆の、瑞々しい食感とやさしい甘みが、授業のあとも僕のなかに残りつづけています。
(ボランティアスタッフ・松本浄)