シブヤ大学

授業レポート

2006/9/20 UP

授業レポート

“ちょいワル親父”のような魅惑的な雰囲気を醸し出して1限目に現れたのは、2010年以降の有人惑星ミッションNASA宇宙飛行士候補の一人、アニリール・セルカン氏であった。
この宇宙飛行士候補は、元トルコのスキー選手として20歳でケガをするまで活躍していたアスリートであり、東京大学の教員、エール大学の客員教授であり、8カ国語を自由に操る科学者である。「“宇宙飛行士候補”だけではもったいないよね。」と笑顔で話す彼は、自分のもつ多くの肩書きを“趣味”だと言う。

“地球から宇宙まで行けるエレベーター”を作る研究をしていると聞いて、何て面白くて、創造力豊かな人だろうと感じた。しかし彼は、「別に宇宙に行きたいとか、このエレベーターで行けるとか思ってないんですよ。」と言う。このエレベーターを実際に建設すると想定した場合にかかる費用は、地球上の全ての戦争・紛争で使用されている武器とそれらから人々や国・地域を守るために必要なお金の一年分。
「宇宙に行くっていうのは自己満足。お金がもったいないですよ。」そういう彼が目指していることは、この宇宙開発の知識を“インフラフリーの居住環境”の研究に結び付けて、地球上の私たちの生活に役立てること。
“インフラフリーの居住環境”とは、電気、ガス、水道などのインフラに可能な限り依存しない、循環型の居住環境のことである。難民問題、人口問題、災害時の衛生問題など、日本を含む多くの国が支援をする、あるいは直面し得る問題は、“限られた資源と空間の中でいかに快適に居住できるか”を研究している宇宙開発の技術を応用することで改善できると考えているのである。

「宇宙は創造力の世界。そこから何ができるか、何が学べるかが大切なんです。」
「未来は分からない。だけど、みんなとの出会いを大切にして、ただ今を楽しまなくちゃいけない。そこで学ぶことがあるから。そうやって、未来は自分で創っていくもの。」
そんなメッセージを残してくれたセルカン氏は、「何歳ですか?」という生徒からの質問に、「生まれは昭和48年なんです。」と言うお茶目な面も見せる。
彼が宇宙に行ったら、何か凄いことをやってくれそうな予感がする、そんな期待を抱かせる33歳の“多趣味”な宇宙飛行士候補は、創造の天才だった。

(ボランティアスタッフ 桐村 愛)