シブヤ大学

授業レポート

2006/12/1 UP

冬の匂いもすがすがしく、高い空が気持ちよい。そんな絶好のお天気に恵まれ、「こんにちわー」と本日の授業をして下さるNPO法人「響」の井梅先生が現れた。緑色のパーカーに傘地蔵に出てくるあの帽子を被っている・・・何やら始まりそうだということは皆が思っただろう。
まずは一時間ほど先生の説明を聞きながら東京ドーム15個分、本殿まで約20分の明治神宮内を散策する。「目をつぶってみて下さい」と先生。周囲の音が耳に入る。奥に足を踏み入れるほどに、電車や車、人のざわめきが消えていく。代わりにひんやりとした空気が肌で感じられるようになり、風や木々の存在が音としてしっかりと伝わってくる。もはや都会のど真ん中ではなく、今自分は神聖な森の中にいるという事が分かる。この明治神宮という場所は、戦争の跡地でもありそういったことから神社を作ることになったそうだ。全てに神が宿っているといわれ、落ち葉一枚も神宮外には持ち出さず森に返す。計算し尽くされて作られたこの人工森は、何十年もの時とそれぞれの時代の人の手を借りながら、今も尚変化し続けているのだ。
新宿の高層ビルが覗く広い芝生で昼食タイム。それぞれのお弁当を持ち寄りしばし休憩。先生が食べ終わるとごろんと横になった。皆で寝転がって空を見上げる。
「それではどんぐり拾いです!」と先生。このどんぐり拾いは、落ちて来た実が人間に踏まれてしまう前に救出して育て、そして苗にして森に帰すのが目的だ。普段は入れない奥の森に案内される。そこには猛烈な勢いでどんぐりどんぐりどんぐり・・・・・。この時期はもう落ちきってしまう頃で、落ち葉をめくればどんぐりの山。皆、軍手をはめ、掬うようにして袋にいれていく。無言でしゃがみ込み、正に一心不乱。一時間もやれば2千個ほど採れるそうだが「もっとがんばって下さい」と言われてしまった。場所によって実の種類が違うのだが、帽子をかぶっている様なおなじみのどんぐりや、長い物等3種類ほどがあった。
種類別に分けた後に水に2日間浸け、中の虫を追い出したり発芽選別をする。沈んだものが合格となる。あらかじめ選別したどんぐりを黒くて栄養満点そうな土と共にポットに詰めていく。20cm程に育った苗を持ち帰り、各自育てるのがこの授業の宿題となった。歴史と共に先人が育ててくれた森を、この先も仲間が引き継いでくれる事を願いながら私達も育てていくのだ。

(ボランティアスタッフ 砂押悠子)