シブヤ大学

授業レポート

2009/3/31 UP

「0~3歳児を持つパパ限定」と参加条件がキビシかった今回の授業。申込み者は18名にとどまったものの、欠席1名&飛び入り1名で、実質の出席率はなんと100%!
子育てにかけるパパたちの気合いと責任感がビシバシ伝わってきます。先生は、『育児の東大』と呼ばれる(らしい)東京家政大学の井桁容子先生。第一線の育児研究者として、自身も2人の子を持つ親として、子育ての難しさと楽しさをたっぷり話していただきました。

全員の顔が互いに見えるよう円状に並べられたイスに着席し、まずは先生とパパたちの自己紹介。各自に「自分の名前」「我が子にどう育ってほしいか」「子育てに対する不安」を語ってもらったところ、聞いてないのに我が子の名前も紹介するパパが続出(笑)。なごむなぁ。二番目の回答は十人十色でしたが、子育ての不安については、テレビ・携帯・周辺環境などから自分の望まぬ外部情報が子どもに大きく影響していくことを心配する声が多かったようです。
自己紹介の次は、スクリーンを使った先生の講義に入ります。「赤ん坊は笑顔を一度失い、また獲得する」「いたずらは知性の表れ」「ほめるのではなく認めよう」「赤ちゃんを抱くときはパパも肌で直接」「ママの疲労ピークは2歳まで続く」「男女のホルモンと役割」「親子のアタッチメント」などなど、重要ワードが大豊作。講義はパパたちの質問を吸収してさらに膨らみながら、メモ帳が真っ黒になるほど盛りだくさんの内容に。
個人的には、子育てには大人の信頼関係が大切というお話が心にズシーンと響きました。たとえば、我が子が他人の子を叩いてしまったとき、「他人の痛みを学ぶ機会」として相手の親が寛容に見てくれるとは限らないですよね。人を叩くのがそれで何度目なのかによっても対応は変わるかもしれません。親の育児観だけではなく、成長への理解にも左右されるワケです。従って、一度きりの付き合いではない、大人同士の信頼関係がとても大切。ところが、現代社会ではそこがなかなか難しい……考えさせられます。

ところで井桁先生のお話は、現場の豊富な経験談だけじゃなく、赤ん坊の発達や男女で違うホルモン・神経活動など、学問的な視点からも組み立てられていて、ドラマチック&理路整然。説得力があり、理屈っぽい僕もすんなり飲み込めました。後から聞くと、ロジックを重視する男性を意識した『パパ向け講義』だったそう。感服します。
後半は三人一組となったパパグループたちが先生に質問を投げかけ、じっくりと質疑応答。最後には「理想は高くても親はみんな不完全、子育ては悩むより楽しんでください」ということで、仲良し父子を描いた絵本『おとこどうしのおるすばん』の読み聞かせ会を実施。パパたちは体育座りで先生を囲み、童心に帰って絵本を見上げるのでした。

誰よりわかっていそうで、案外よくわからない我が子の気持ち。ときには「わかろうとすること」自体へ鈍感になってしまうことも。この授業は、そんな自分の不完全さを省みつつも、あらためて「父」である幸福を感じる素晴らしい機会になったんじゃないでしょうか。家族が生まれるってスゴイですね。

(ボランティアスタッフ 松本 浄)