シブヤ大学

授業レポート

2008/12/2 UP

"手芸のgoen"

書店に行って手芸本の棚を見てみてください。
男性は普段気付きませんが、女性向けのコーナーでは料理と手芸が人気を二分しています。「刺繍パターンのレッスン」とか、「初めての編みぐるみ」などという名前の本がたくさん置かれています。

授業の予習を兼ねてちょっと恥ずかしいけれど、そういった本をいくつか手に取ってみました。「フリーステッチを楽しもう」というタイトルの本を見てみると、「ダブルクロスステッチをしたあとは、次のステップに進んで」など、決まった型を多数マスターしてそれを組み合わせていくのが手芸の基本のよう。フリーステッチって、ちっともフリーな感じがしない。。。手芸って完全に女性の世界、しかもとっつきにくい。。。

そしていよいよ"手芸のgoen"の授業。男性による手芸集団「押忍!手芸部」の部長 石澤彰一先生とアートディレクターの森本千絵先生の豪華お二人による授業です。

こちらはもう、手芸という枠組みを超えたとびっきりフリーな授業でした!

「男気あふれる部長が、生徒代表役の千絵先生に、残布から携帯ストラップを作る方法をレクチャーする」という形で授業が進みました。生徒二十数名ほどで、男性が女性に手芸を教える姿を見守る。これはちょっと想像していなかった展開。手芸は男性がやってもかっこいいのですね。

このあとも既成概念の枠がどんどん取り払われていきます。

縫い方の説明は一切ナシ。生徒の皆さんの作業開始から十分以上経過した後に、部長が「針と糸もあります。一応、手芸部なんで縫ってもいいですよ」とおもむろに手芸セットを取り出されました。なんと、授業の最初は針と糸がなかった状態でした。最初はみんな布をハサミで切って、置いてあった「結束バンド(電線を束ねたりするバンド!)」でかろうじて止めていました。。。しかも部長は最初の説明以外、質問しないと特に何も教えてくれません。与えられるのを待っているだけではだめなのです。

このような状況の中で、生徒の皆さんが頭の中をフル回転させているのが伝わってきます。布を巻物のように巻く斬新なアイデアを思いつく方もいらっしゃって、自由な雰囲気の中で試行錯誤が続きます。

花の形にきれいに切り抜いた布を部長が見つけて、「使えるのは実はこっちの方」と切り抜かれた端切れの方を指さして、クールに去っていく。このアドバイスで生徒さんの想像力と創造力が発揮されるのです。

そんな中でも生徒代表の千絵先生はやっぱりすごい。「手元にあるものだけで楽しんじゃいます」という天才。布に切り込みを入れてそこを三つ編みにして作品を作られていました。途中、「縫い針がなくなっちゃった。足元に気をつけてね!」とちょっとした騒ぎに。みんなで探したら千絵先生のジーンズに刺さっていた! 「危なかったね!」と笑顔で爽やかに笑いとばしてしまう千絵先生。。。素敵です。

こうなってくると7、8名に分かれていた各グループでおしゃべりを楽しむ空気も出てきます。

授業は2時間。途中で作るのをやめて周りの方とずっとおしゃべりをしてしまうのも実はアリ。2時間あるからといって、2時間きっちり作業をする必要はないのです。1時間で携帯ストラップを作り終わったら、あとは余計なものを付け足さず、「はい、おしまい」とやめてしまってもいい。「かっこいい作品を作るのが目標」というのもいいけれど、「おしゃべりしてコミュニケーションを楽しむ」という考え方だってあっていい。時間配分も自由です。

「作ったものは使ってもいいし、使わなくてもいいです」との部長からのコメント。作る過程で楽しい時間を過ごせたのであればそれでいいよね。楽しみ方は人それぞれ。

知らない間にいろいろなことにとらわれてしまっている自分に気づく、そんな貴重な体験でした。

そして、参加してくださった方が、シブヤ大学にさらに興味をもってくださる、授業で知り合った方とお友達になる、手芸が好きになって趣味で始めてみるなど、この授業をきっかけに新しい"goen"が生まれたらうれしいなと思っています。

(ボランティアスタッフ 松井 健二)