シブヤ大学

授業レポート

2008/7/25 UP

全国的な梅雨明けを迎えた19日、冷房の効いた青山ブックセンターの教室で、深夜ラジオのようにリラックスした対談形式の授業が行われました。
テーマは 「美しいものって何ですか?」。西村先生がまず30分、次に伊勢先生が30分、それぞれの「美しいもの」を語り、最後の30分で生徒さんらの感想・質問に答えてくれました。

■毎日繰り返されること

西村先生は"毎日繰り返されること"に美しさを覚えるといいます。
その一例として、先生のサウンドバムという活動で録音した、マレーシアにあるタマンネガラの森の「早朝の音」を聞かせてくれました。

鳥の声、動物や虫のうごめく音が幾重にもなって生まれるリズム...映像が無いぶんだけイメージが広がるのでしょうか。目を閉じると森に座っているような臨場感があって、驚きました。
この「朝の音」が夜明けの子午線とともに地球上を東から西へ動き、各地の生態系で音色を変えながら毎日グルグル回っていくようすを西村先生は「地球そのものが大きなオルゴールみたいだ」と表現しました。

■形容詞以前のこと

続いて西村先生が見せてくれたのは、漫画家・映像作家のタナカカツキさんが手がけたミュージック・プロモーション・ビデオと、ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた宇宙の果ての写真(ハッブルディープフィールド)。
「うれしい」「悲しい」といった形容詞では言い表せない、心を圧倒するような"そのもの"の持つ力が素晴らしいと語ってくれました。

■旅のなかで見えた命の在りかた

伊勢先生は数々の旅で見出した「美しいもの」を紹介してくれました。

大小をふくめて6852もの島から構成される日本列島。およそ2年の歳月をかけて数多くの島を訪れてきた伊勢先生は、海を見据えて生きる人間の在りかたに、ひとことでは言えない尊さを感じたといいます。
石川県で発掘された約2000年前のおにぎりに対しては、誰かが誰かのために握ったその気持ちに震え、産卵を終えたサーモンたちの累々たる屍体を川辺で目にし、生と死の連綿としたつながりを感じたそうです。
その他、サハリンの国境線に咲く花の話など、伊勢先生の豊かな感受性と、知らないものを積極的に見に行く姿勢に関心しました。

■「美しい人は誰ですか?」

最後の30分は、生徒さんから興味深い質問がたくさん出されました。
なかでも僕が一番印象的だったのは「美しい人は誰ですか?」という質問に、西村先生が「美しいものに見入っている人は美しいよね」と即答したこと。
カ、カッコいい......!

確かにうっとりしている表情や微笑んでいる表情には優しさがあふれています。なるほど。そうだとすれば、西村先生、美しい人を見る人も美しくなり、「美しさ」は伝染していくんですね。

両先生の言葉のひとつひとつが刺激的だった授業。
「美しさ」を探す新しいアンテナを手に入れることができたような気がします。

(ボランティアスタッフ 松本浄)