シブヤ大学

授業レポート

2008/7/16 UP

      

日本酒とよく合う料理を教えてくれるという今日の授業。日本酒は飲むけれど、あまり詳しいことはわからないな…、と、素人もしくは素人以下の22歳の私が、この授業をレポートします。結末から言うと、とにかく楽しくて、日本酒が100倍好きになる授業でした。

日本酒と料理を楽しむといえば、やっぱり教室は和室。
畳の教室に足を踏み入れた生徒さんを待っていたのは、
一人につき4種類のお酒が注がれたカップたちでした。

さて、よくよく見るとこの4種類のカップの下には、一枚の紙が引いてあります。
何やらカップの下に、それぞれ一文字ずつの漢字が、ふられているではありませんか。
――――「薫」・「爽」・「醇」・「熟」。
この正体は実は、先生が作った、新しいお酒の分類なんです。
薫酒(くんしゅ)、爽酒(そうしゅ)、醇酒(じゅんしゅ)、熟酒(じゅくしゅ)。

ところで日本酒って、なにするもの?って言われたら、
やっぱり、「飲むもの」です。つまりは、それを飲む『私』がおいしいと思えるお酒は何か、を考えるにあたって、味・香り、味わいが、しっかり伝わる、わかりやすい表現が必要だと、先生は数あるお酒を、この4つに大体分類したのだそうです。
これまで、吟醸・大吟醸、純米…そういう、製造上の基準を表している用語や、生もと(きもと)などの難しい専門用語や、ブランド・価格などの区別で表示されているお酒。
そんな用語たちを知って、酒屋さんで、飲み屋さんで、飲まずともその味を想像しながらラベルを読めるようになるのが目標。そのためにわかりやすく分類したのがこの4種なのです。

お酒に合う料理は、基本的に味が似ている、仲間同士を選びます。この日の素材は「春菊」。和室からキッチンへ移動して、先生によるお料理デモンストレーションが始まりました。それでは先ほどのお酒の細かい分類と印象と、それに合う料理をご紹介しましょう。

薫酒は、大吟醸や吟醸酒などの、香りの高いお酒。原材料の磨きが高く、雑味が少ないのが特徴。すっきりとしてやさしい味です。吟醸・大吟醸などは繊細で、冷蔵庫で保管するのがいいのだそう。そんなすっきり感にはハーブが合います。洋風の春菊とグレープフルーツのサラダがこの日の前菜となりました。2年くらい前まで春菊って苦手だったので、春菊の「苦手スポット」ってなんとなくわかるのですが、これはサラダなのに斬新すぎる組み合わせだからか、この苦手感は感じません。むしろ春菊を食べていることを忘れます。甘酸っぱいサラダが、さっぱりとしてちょっと甘めの薫酒にはぴったり。

それから、爽酒。その名の通り、すっきりとなめらかで、軽いタイプのお酒。生酒とか生貯蔵酒とか、発泡性のあるようなものも含みます。これもやっぱりさっぱり系でまとめるのが吉!ってことで、生春巻きです。ちょっとすっきり辛口の爽酒には、ピリ辛の春巻きがまたあう、合う。

醇酒は、香りが高くて味が濃いお酒。個人的にはこの日飲んだ中で私はとてもこれが好きでした。純米酒など、甘くてなめらかなお酒は、常温15度以上の保管が良いそうで、熱燗もいけます。このお酒に合う料理はやっぱり、ちょっとこってりしたクリーミーな品。この料理、本当に香りがいいのです。鮭が酒によってまた甘めになっているのが、ばっちり醇酒向き。

熟酒は、古酒などを含む長期熟成のお酒。味わいは、少し変わっていて、紹興酒のような味がする、と口々に言われていました。まぁ紹興酒ではないのですが、そういう味わいのお酒といったらやっぱり中華風の、濃厚な味が吉。
キッチンでは生徒さんと先生の距離もぐっと近くなり、なんだかみなさん、ヒートアップしてきました。作ってるお料理はおいしそうだし、先生の料理さばきはやっぱりお見事だし。このときの、料理学校時代のお話や、ボランティアスタッフとの絡みなどの余談、おもしろかったですねぇ。

そして熱燗の温め方もデモンストレーション。お酒の種類の区別に注意しながら、お湯の温度を調節して温める。思っていたよりも簡単なんですね。これなら自分でもできそうです。ちなみに熱燗向きなのは、熟酒や醇酒。味が濃い目で甘めのものが、温めるとより魅力を発揮するわけです。逆に薫酒や爽酒は逆に風味を壊してしまうことがあるので注意です。

そしてみなさんお待ちかねの、酒ごはんタイムに突入。シブヤ大学には常連さんもいらっしゃるので顔見知りのこともあるようですが、参加者のみなさんは、それぞれがほとんど初対面。けれども不思議と、お酒とごはんが進むとより一層、あらみなさん本当に楽しくお話しされています。お酒とごはんの力ってすごいです。今回は特に年齢層が幅広く、各テーブルごとに様々な構成ができていたのにもかかわらず、なんだかどのテーブルもにぎわいを見せていたように思います。

最後に、先生の今年お勧めのお酒はなんですか、というある生徒さんからの質問には…出てくる出てくる、答えの数々。新潟、広島、そして先生の地元、静岡…。いろいろなところ出身のお酒の名前が並びます。
しかし先生の表現は独特でした。

「静岡の『正雪』は、水がサラサラしていて、とてもやさしい味。そう、「女子中学生」みたいなイメージなんです。」

「女子中学生みたいなお酒!?」と、生徒さん一同、びっくり。そして爆笑。
こういう、「自分流」の表現を持てるようになるのは、お酒を楽しめる、大きな要素の一つなんだろうな、と改めて感じさせられる瞬間でした。「酒ごはんコーディネーター」、すなわちお酒を楽しむスペシャリストである先生。
上級者のワザ、学ばせてもらいたいと思います。

(ボランティアスタッフ 天野咲耶)

【参加者インタビュー】
1.北田彩さん
感想:「シブヤ大学は、3回目くらいです。今回は全部落ちたので、キャンセル待ちで、運よくここにこれました。日本酒はこれまでもたまに飲んでいたけれど、あくまで「酔うためのもの」っていう感じだったので。今回いろいろなお話を聞いたり、試してみたりして、これからもっとこだわってみようかなと思えました。吟醸・大吟醸とか、名前は少し知っていたけれど、今回作り方から知れて、それぞれの「貴重さ」の意味がわかってきたことが嬉しいです。お酒だけで飲んだ時は辛口は少し苦手かと思ったのですが、お料理と一緒に飲むと、断然飲みやすくなりました。料理は、鮭の酒粕煮がおいしかったので、つくってみようかなと思います。」

嬉しそうに語ってくれた北田さん。お酒への満足感を表すように、そのお顔は真っ赤でした!!