シブヤ大学

授業レポート

2008/7/7 UP

法廷という場所に対してみなさんはどんなイメージを持たれますか?
厳粛であまり馴染みにくいイメージを持っておられる方が多いのではないでしょうか。
あるいはTVドラマ『HERO』などの影響でポジティブなイメージを持たれている方もおられるかもしれません。
 
しかし、現実の法廷とは至って「普通」の場所なのです。

普通の場所??普通って一体どういう意味?

つまり裁判官も弁護士も特別に威厳があったりするのではなく、あなたが町でよく見かけるようないわゆる普通の人々なのです。被疑者もしかりです。さらには、裁判所の風景もTVドラマで出てくる装飾された裁判所ではなく、荘厳なデザインでもなく発言をする弁護士が格好良くスポットライトを浴びるわけでもない。殺風景な場所なのです。つまり裁判所も私達の日常生活で当たり前にあるような殺風景な場所なのです。

今回の授業は、普段私達があまり関わることのない(人によってはよくお世話になっている笑)法廷について『ぐるりのこと。』を監督された橋口先生と法廷画家の染谷先生の対話形式でお話いただきました。

みなさんも法廷画家が描いた裁判の絵はTVニュースなど見たことがあるでしょう。
通常、法廷画家は1件の裁判で2枚の絵を描き上げます。
染谷先生が最初に行った法廷画の仕事は93年に起きた甲府での銀行女子行員誘拐殺人事件でした。始めの一年間の法廷画家としての仕事は3件しか来なかったので、当然仕事としては成立するはずもありませんでした。その後、徐々に仕事は増えはじめ、2000年には149件に達しました。ちなみ今年は96件だそうです。現在もほとんどの法廷画家の方々がそれだけでは食べていけず、二足の草鞋を履いているのです。
 
想像する限りディープで大変そうな法廷画家のお仕事。しかも、それだけでは食べていけない。そこまでして染谷先生が法廷画家を続ける理由はどこにあるのでしょうか。
その答えは「仕事というよりは使命感」なのだそうです。法廷画家の描いた被疑者の姿は、例え法廷画家の主観が入った姿形となっていたとしても、描かれたままの姿がお茶の間に届けられてしまいます。被疑者の顔を知らない私達一般大衆は、描かれた被疑者の姿を鵜呑みにしてしまうでしょう。ですから描く際は主観を加えずにありのままに描き切らなければなりません。染谷先生はこういった緊張感は非常に強く感じているのだそうです。
また、様々な大事件の被疑者に会ってみると、そのほとんどがどこにでもいそうな普通の人なのだそうです。ですから、被疑者をセンセーショナルに描きようもないという現実もあるのです。

裁判所内に関しても私語一つない静かな場所ではなく、裁判の際は報道関係の方々が行きかい、ざわざわしているようです。そして、判決が出るや否や報道関係者達がいち早く第一報を伝えるために裁判所の外にあるカメラに向かって猛ダッシュをする。でも、裁判所の廊下はツルツル滑るぐらいきれに磨かれているもですから、記者の方々がズッコケるなんて場面もしばし見かけられるそうです。

来年から始まる裁判員制度など近頃何かと話題にあがる法廷。
法廷という場が何か特別な場所のような気がして、これまで私自身あまり身近に感じていなかったのですが、橋口先生と染谷先生が話を聞き、法廷とはそれに関わる人々もその空間も私達が生活している環境と同じよう所なのだと感じました。
つまりごくありふれた普通の場所なのでしょうね。

最後に授業の質疑応答の際、ある生徒さんに至っては、「この映画を観終わった後、彼からプロポーズされました。先生すばらしい映画をありがとうございました!」という発言まで飛び出してきて・・・・
法廷の様子がわかるだけではなく、橋口監督の「希望は人と人の間にある」という思いがじんわりと伝わり、温かい気持ちになれるそうですよ!

(ボランティアスタッフ 後藤知宏)

【参加者インタビュー】
1.男性
―参加理由は?
「法廷画家がどのようなことを考え、仕事をしているのか。監督の映画に対する想いなどを知りたくて参加しました。」

―感想は?
「染谷先生の法廷画家としての使命感がひしひしと伝わってきました。
また、橋口先生の伝えようとする想い非常に強く伝わってきました。以上2点がとてもよかったです。」

2.女性
―参加理由は?
「今回が初めての参加ですが、以前からシブヤ大学には興味があり参加したいと思い参加しました。また裁判員制度などニュースでよく耳にします。それのことがらにも興味がありました。」

―感想は?
「先生方の語り口が身近に感じられました。
また、裁判も日常のことなのだという気持ちになりました。
染谷先生の描かれた法廷画も授業の中で実際に観ることができてよかったです。」