シブヤ大学

授業レポート

2008/5/2 UP

降り積もる雪と、積み重ねられた生活の知恵。

今回のシブヤ大学ツーリズムは『冬を生きる~雪のある暮らしと芸術~@新潟』。新潟県の越後妻有で雪国の暮らしを体験してきました。

世界でも有数の豪雪地帯で、時には3メートル以上の積雪に交通さえもストップしてしまうほどの越後妻有地域。午前7時に出発したシブ大のバスも、渋滞と吹雪に見舞われ、現地への到着は12時過ぎに。予定より遅れてしまった一行を、今回のコーディネーターである関口さんや相澤さんたちは笑顔で出迎えてくれました。
関口さんたちはもう今年は雪が降らないと思っていたそう。「吹雪になるなんて、雪国を体験しに来たみなさんへの最高のおもてなしです」という優しい言葉に思わず顔がほころびます。

開校式が済んだらチームに分かれて活動スタート。暮らし編チームは相澤さんのお宅へ。相澤さんのお宅では、奥さんが腕によりをかけた郷土料理の数々で歓迎してくださいました。食材はほぼ自家製で、けんちん汁の中の豆腐やこんにゃくまでご自分で作られたとか!けんちん汁は手間をかけて作るから、この地域のおもてなし料理なんだそうです。
食事が済んだらカンジキを履いて屋根の上へ。高く積もった雪づたいに、はしご無しでヒョイヒョイ。25mプールぐらいある屋根のてっぺんの雪を生徒さんたちはシャベルで、相澤さんはその5倍くらいあるダンプでどんどん掘って、滑り台みたいな『とい』をつたわせて軒下まで落とします。

2時間近くかけて片面分をほぼ落としたところで雪掘りは終了。今度は「あんぼ」作りにチャレンジです。
「あんぼ」はこの地域の伝統的な食べ物で、米の粉でつくったおやきのようなもの。ご飯に米の粉と熱湯を加えてよくこねて生地を作ります。あんこや野沢菜、お漬け物を詰め、お湯で茹でたものを囲炉裏で焼いて、表面がカリッとしたら出来上がり。みんなでおしゃべりしながらいただきまーす♪

お腹いっぱいになったところで相澤さん家を出発する時間に。芸術祭チームと合流して日本三大薬湯のひとつ、松之山温泉へ。熱めのお湯で疲れを癒し、施設に戻ってそれぞれのチームの体験を発表しあいます。

芸術祭チームはアートトリエンナーレの作品「脱皮する家」の雪掘り&お掃除や、お汁粉を食べたり、雪だるまを作ったりして楽しんだり、地元のお母さんたちから、妻有の生活について聞いたり。
豪雪のおかげで雪解け水を使っておいしいお米が育てられることや(天水田と呼ぶそう)、芸術祭がきっかけで国内や海外とのつながりが生まれたことを「恵み」だって受け止めるお母さんたちが素敵だったそう。

発表の後は待ちに待った夕食&交流会。妻有の食材を使ったお食事と地酒をとっても美味しくいただきました。交流会は盛り上がって、夜中まで続きました。

2日目は魚沼産コシヒカリのほかほかご飯の朝食後、暮らし編チームは「雪山歩き」へ。そして芸術祭チームはわら細工に取りかかりました。
「松之山名老100選」のひとりでわらの達人、若井さんの指導を受けながらのしめ縄作り。手の平でよったわらの束を編んでいきます。一見簡単そうだけど、手の平の筋肉って普段あまり使わないせいか力の入れ方がムズカシイ。若井さんは『よる』のも『編む』のも同時にスイスイです。

「雪山歩き」チームが戻って来たら、みんなで餅つきです。つきたてのお餅がお昼ご飯。あんこやきな粉、おろしのからみもちにお雑煮と、バラエティー豊かなトッピングで楽しみました。
食事が済んだら荷物をまとめて閉校式。2日間お世話になった皆さんから一言ずついただきました。

閉校式で相澤さんがおっしゃった、
「雪国に住んでいない人は、ここにやってきて『すごい』とか『楽しい』とか言うけれど、住む人にとっては雪の中での生活は苦痛なんです。けれどさらに長くそこに住むようになると、雪とうまく付き合っていく生き方を考えるようになるんです。」という言葉、すごく印象的でした。

ツーリズムで来た私たちにとっては美しいだけの銀世界も、地元の人々にとってはなかなか厄介な代物。けれど吹雪を「最高のおもてなし」だと笑い、雪解け水は「天からの恵み」だねって受け入れる。厳しい自然の中で、みんなで協力しあって暮らしていく雪国の人々のぬくもりやたくましさが、じんわりココロに沁みる2日間でした。

帰り道に寄ったまつだい農舞台は、建築家や空間デザイナーが手がけた部屋のひとつひとつが個性的。机やイスへの落書き歓迎のまるごと黒板でできた教室や、窓や天井に農具がディスプレイされた部屋、そしてお茶目な仕掛けのあるトイレまで!(びっくりしてほしいので、内容はヒミツです。)ショップのお土産物もみんなキュートで、生徒さんたち、どんどん買い込んでいました。

コーヒーみたいな色の千手温泉のお湯で温まったら、新潟とはお別れ。東京へ向かいます。帰り道では高速道路で事故渋滞に巻き込まれてバスは約2時間立ち往生して、池袋駅への到着は23時半ととっても遅くなってしまいました。雪が降っているのに無理して先を急いで、交通事故に遭ってしまう。最後まで雪との付き合い方について考えさせられる授業となりました。

(ボランティアスタッフ 松本 典子)