シブヤ大学

授業レポート

2008/3/27 UP

時代を超えて ~作品から職人たちの想いを感じる(鍋島焼)~

「やきもの鑑賞入門編16 殿様の器。~文様を知る~」。
今回の授業も、戸栗美術館内で行いました。

先生の説明を聞き、各作品を鑑賞しながら美術館内を歩いて回ります。
皆さんは、「鍋島焼」というものをご存知ですか?
伊万里焼と同材料、同技術、近い地域で創られるのですが、創られる方法が違うのです。

そして、何よりも鍋島焼は幕府・将軍への献上品。
将軍に気に入っていただけるような「宝物」を、全て完璧に手作業で創るのです。今の「素敵」とは少しニュアンスが違う、流行にとらわれず、世間一般で出回っていない、一般に流通してないような、格式の高い、唯一のものを職人たちは創る必要があったのです。

しかも文様は、白地に染付けの青のほか、赤、緑、黄の4色のみを用いることが原則。制限された範囲の中でシンプルかつ品のある美しさを職人たちは創り出していたのですね。

流行にとらわれない、シンプルな美しさ。
だからこそ、見る人に想像性を与え、また今の時代にもかえってモダンな印象を与えることが出来るようです。

先生の説明を聞きながら作品を見ていると、まるでその時代の情景や、職人たちの想いが伝わってくるようで、それぞれの「やきもの」の中に、様々な物語が込められているのを感じました。
先生の説明のおかげで、「やきもの」はもはやただの「もの」ではなく、当時こめられた命が再び目を覚まし、生き生きと私たちに話しかけるようでもありました。

作品の中に10枚同じ器が並んでいる場所がありました。
今でこそ10枚セットなんて当たり前ですが、この時代1枚1枚手作業で、細かく丁寧な絵柄の書いたものを何枚も同じように創ることは、それはもう、まさに超人の技だったのす。
でもよーく見てみると、同じだと思える作品も、それぞれかすかに絵が違ったりするのです。
手作りっぽくて、とても素敵ですね。やっぱり、それぞれがそれぞれの個性を持った唯一の存在なのです。

さて、最後の30分は、自分の気に入った作品の文様をスケッチしました。説明を聞くだけでも、十分職人たちの大変さがわかったのですが、実際に自分たちが体験してみると、その大変さがより実感出来ました。
「描いているうちに枠からはみ出してしまった」「細かくて最初の5分で投げ出したくなった」そんな声も聞こえるくらい、本当に細かい手作業なんです。細やかさ、それを感じ取る繊細な感性、センス、技術力、職人たちは本当に様々な力を兼ね備えていたのですね。

授業終了後、皆さんとても満足した表情で帰って行かれました。
人それぞれ感じるものは違ったと思いますが、それぞれの感性に何かを訴えかけ、様々な気づきを与える芸術作品は、いつの時代もやっぱり素敵ですね。作品をただ眺めるだけではなく、その時代、創った人の想いなどを感じながらみて見ると、また新しい感覚が味わえるということを、つくづく実感出来た授業だったのではないでしょうか。

時代を超えて、想いが伝わる - 芸術ファンがまた増えそうですね!

(ボランティアスタッフ 中川直美)

【参加者インタビュー】
1. 大城尚子さん
「渋谷にはよく遊びに来ますが、シブヤ大学の授業を受けるのは今回が初めてです。普段見れないものが見られて良かったです。やっぱり見るのと、描くのとでは全然違うんですね。新たな発見です。文様は、ただ色を塗りつぶしていると思っていたものが、実は細かく描かれていたりして、驚きました。」