シブヤ大学

授業レポート

2008/2/21 UP

            

外はちょっと肌寒い空模様ですが、今日の教室は女性が多く、とっても華やか。
教室のあちこちに、今日の先生のセキユリヲさんの素敵な作品が飾ってあります。
素朴でとってもかわいらしい作品に、なんだか気持ちもほっこりします。

「刺し子」とは、日本で古くから親しまれてきたもので、江戸時代にはあったという刺繍の様式。
昔は今と違って布はとても貴重なもので(順番でいうと絹 ・木綿 ・麻の順に高価だった)、特に東北地方では木綿が栽培できず、擦れたり破れたところも補強して長く使っていたということ。
そのなかでより美しさを追求するようになったのが刺し子で、地方によって様々な模様が伝承されているそう。

「ものを大切にすることを、すごく楽しみながらやっているんですよね。」とセキさん。
(予め配られたプリントを見ながら)ここに挙げたのはごく一部で、本にはもっと沢山の図案が載せてあるそうです。セキさんオリジナルの文様もあり、とてもモダンでステキです。

■体験スタート!!
「今日は並縫い、十字刺しまでやりましょう。」
各自持ってきた好きな布と各テーブルに用意された刺し子用針と草木染めの糸を使います。
草木染めの糸は優しいトーンですがカラフルで、見ているだけでも楽しくなってきます。
「色あわせも工夫してみましょう。布に柄がある人は、同系色の糸にすると失敗が少ないかもしれません。」
「大きいものは折り重ねて縫うと、厚みもふっくらしてかわいく、頑丈になりますよ。」

各テーブルに先生が回って縫い方や糸の色合わせのアドバイスをしつつ、刺し子の並縫いからスタート。
一段目と二段目で糸目が交互になるように縫います。(下図参照)
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― (一段目)
 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― (二段目)
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― (三段目)
 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― (四段目)
「基本的に刺し子は全部並縫いで進めます。」

「刺し子は玉止めはしません。ひと目かふた目くらい先のところから戻るように縫って、折り返せば充分。」と先生。
みなさんはじめはおそるおそるでしたが、だんだん夢中に。
「こんなに大勢で縫い物をするなんて学園祭の準備みたい。」
参加者のほとんどが30代前半~後半女性、わきあいあいととても楽しそうです。
うまく縫えない、という人や、目がそろわない、という人にも、「いいんですいいんです。」と笑顔の先生。
「ふぞろいな目や、歪んだラインも楽しんで。」

「縫ったところはすごく頑丈になりますね。」との声には、
「そうなんです。刺し子はすごく丈夫だから、火消しの人たちが着てた服は、総刺し子だったんですよ。」
びっくりです。刺し子ってすごい!!

糸が終わりそうになった時には布をたぐり寄せて、かなり先まで縫い進めてから針穴のところで糸を切る。
寄せてあった布をしごいて糸をならすと糸が戻されて、糸をギリギリまで使いきることができる。
そしてまた数目前から新しい糸で縫いはじめていく。
「糸も無駄にしないの。」と先生。

「そろそろ十字刺しに入りましょうか、とりあえず十字刺しまで体験して帰ってください。」
さきに並縫いをした目に合わせ、十字になるように縦に並縫いの目を入れていきます。(下図参照)
+ + + + + + + + + + +(一段目)
+ + + + + + + + + + (二段目)
+ + + + + + + + + + +(三段目)
+ + + + + + + + + + (四段目)
これが終わったら次は斜め右、そのあとは斜め左から並縫いをして、「米」の字にしていく。
米 米 米 米 米 米 米 米 米 米  (一段目)
米 米 米 米 米 米 米 米 米 米 (二段目)
米 米 米 米 米 米 米 米 米 米  (三段目)
米 米 米 米 米 米 米 米 米 米 (四段目)

「本当に並縫いだけでできるんですね。」
「やばい、十字にしはじめたら急にものすごい愛おしくなってきちゃいました!」という声も。
これには先生もにっこりと「そうでしょう?なんだか愛着がわくのよね。」
「目がそろっていなくても線が曲がっていても、手間をかけた分、特別な存在になる」とのこと。

みなさん十字刺しに入り、作品の完成が想像できるようになると、とてもうれしそう。
同じグループの人の作品に感心しあったり、他のグループの作品をのぞきに歩いたりも。
「みんなそれぞれ作品に個性がありますねー、やっぱり性格が投影されるのかしら。」
目の細かいひと、大きい人、糸のカラーリングがポップな人、シックな人。
唯一の男性参加者もかなりきれいな作品になり、みなさんとってもご満悦な様子です。
かつて刺し子を始めた人たちも、こんなふうに楽しんで、井戸端会議をしながらちくちくしていたのかもしれません。

みなさん、一目ひとめ時間をかけた自分の作品が本当にかわいくて仕方ない!といった様子。
だれかと集まって手芸をするというめったにない機会も新鮮で、とっても満足そうでした。

(ボランティアスタッフ 柏木初夏)