シブヤ大学

授業レポート

2025/1/17 UP

スマホ時代のクリティカルシンキングを鍛えよう!

今回の授業は、「スマホ時代のクリティカルシンキングを鍛えよう!」と題し、スマートニュース メディア研究所の研究員であり、メディアリテラシーを担当する長澤江美さんを講師に迎え、18名の参加者が集まりました。
参加者の年齢層は10代から70代と幅広く、多様な視点での意見交換が期待される場となりました。

前半:講義とゲームでクリティカルシンキングを体感
授業はまず、長澤さんによる「メディアリテラシーとは何か」という解説からスタートしました。
長澤さんは、メディアリテラシーを「メディアと上手に付き合い、自分の人生を生かす力」と定義し、特にスマホで手軽に情報を受発信できる「スマホ時代」において重要性が増していることを強調しました。

続いて行われたのは、シミュレーションゲーム「To Share or Not to Share」。スマートフォンの仮想タイムラインを見ながら、表示される投稿をシェアするか否かを判断し、フォロワー数を増やすことを目指すゲームです。
このゲームでは、実際の投稿をもとに作成された5つの投稿について、参加者は「シェアするかどうか」を決めるとともに、それぞれの信頼度を評価しました。
ディスカッションでは、参加者が各自の画面を見せ合いながら、どうしてシェアしたのか、またその記事に対する信頼度をつけた理由について意見交換しました。


「発信元が大手新聞社だから信頼できると思った」「公式バッジが付いていても鵜呑みにしない」「フェイクと知っていても拡散して害のないジョークや、闇バイトなど啓発目的であえてシェアする投稿もある」など、多様な視点が飛び交い、笑いも交えつつ活発な議論が展開されました。
また、「画像やアカウント名を調べる癖をつける」「生成AIの台頭で画像も信用できなくなっている」といった意見も出るなど、現代の情報への向き合い方を改めて考えさせられる場となりました。

長澤さんは、このゲームが作られた背景として以下の3点を挙げました:
1 投稿やシェアの動機が人それぞれ異なることを体感してほしい。
2 アルゴリズムの存在を体感してほしい。
3 フェイクニュースを見極める難しさを知ること。

今回のゲームやディスカッションを通じ、同じ投稿内容だったとしても、それを拡散、信頼する基準というのも人それぞれ異なることが実感できました。参加者からは「各自で(信頼の)リトマス試験紙がありそう」という感想も上がりました。


後半:ディスカッション
後半は、「情報を信じる、信じないのはどんな時か」というテーマを中心にディスカッションが行われました。
参加者からは、「テレビなどのマスメディアは比較的信頼できる」「不安を煽る情報は信じない」といった意見が出る一方で、「情報源や発信者を確認する」「エビデンスの有無を重視する」「信じても信じ込まないようにしたい」といった具体的な判断基準も共有されました。

さらに、長澤さんは「いつふくえびはつばい」というチェックリストを紹介(アメリカ図書館や大学授業で利用されているCRAAPテストを、スマートニュース メディア研究所で日本語訳したもの:https://smartnews-smri.com/literacy/literacy-2554/#index-3)

いつ:情報の発信日時はいつのものか?
ふく:複数の情報源で確認できるか?
えび:エビデンスがあるか?
はつ:発信元は信頼できるか?
ばい:(受け取り側である自分、もしくは発信者の)バイアスがかかっていないか?

このフレームワークを活用し、情報の真偽を慎重に判断する重要性が語られました。
また、すぐに白黒つけるのではなく、あれ?と思う情報があったら立ち止まったり、真偽の判断を保留にしたりすることも大事だと教えていただきました。 ディスカッションは「理想のSNS」というテーマにも及びました。
「攻撃性のないもの」「視野を広げるアルゴリズム」「世代を超えた交流ができるもの」など、参加者それぞれの視点から多くの意見が交わされ、SNSの可能性と課題が浮き彫りになりました。

総括
授業の最後に参加者からは、「日常の情報との付き合い方を見直すきっかけになった」「バランスよく情報を取捨選択していきたい」という声が上がり、授業後もなお議論が続くほど充実した時間となりました。
短い時間でしたが、クリティカルシンキングを深めるための多くのヒントを得られる授業でした。
長澤さん、そして参加者の皆さん、ありがとうございました!


((授業レポート:宗像あずさ、写真:堀江将)