授業レポート
2024/10/18 UP
マイ・リトル・ブッダをつくろう〜人付き合い編〜
「マイ・リトル・ブッダをつくろう!」シリーズは、“授業を通じてブッダの教え(仏教)を学ぶことで明日からの人生をちょっとだけ生き易くすること”を目的にしています。
以前に一度授業を行った際(マイ・リトル・ブッダをつくろう!〜仏教の考え方を日常に生かしてみる〜)には大好評をいただいき、シリーズ化を望む声もたくさんいただきました!
そこで、今回は「マイ・リトル・ブッダ〜人付き合い編〜」として、人間関係をテーマとして授業を行いました!
現代は、「ストレス社会」という言葉で表現されることはご存知の方も多いでしょう。インターネットが普及したことにより私たちの生活は一層便利になった一方で、SNSやリモートワークの発展・浸透により、対人関係でのストレスは日々、複雑に蓄積されているように思います。人付き合いの悩みは十人十色、このテーマに仏教はどのような教えを説いてくれるのか非常に興味がありました。 先生の秦さんはお寺*1にお生まれになりましたが、お坊さんになりたくなかったそうで 、大学を出て広告代理店へ就職し、今はベンチャー企業でマーケティングのお仕事をされているそうです。
しかし、歳をとるにつれ、お寺に生まれたことの意味や仏教に改めて興味を持ち、働きながら大学院に進学され仏教を研究することで修士号を取得されました。今では月一度ほどご実家に戻り、お寺のお手伝いをされているとのこと。ルーツはお寺にありながら、社会へ飛び出し仏教界隈を俯瞰して捉えつつ、アカデミックな領域からも仏教を語ることができる。
様々な角度から仏教を捉えている秦先生の授業は、仏教に馴染みのない方でも聞きやすく、いつもとても勉強になります!授業の前半は、秦先生による仏教の概説と人付き合いに対する仏教の考え方についてお話しがありました。
仏教はブッダ*2の問いである「どうすれば死に至るまでに、納得できる人生を送れるだろうか」に端を発し、この問いに対する悟り“苦しみが生まれるメカニズムと苦しみを滅する方法”を開いたことが起源だと言われているそうです。
しかしブッダは当初、自分の悟りは理解されないと考えていた。そこに神である梵天が現れ、ブッダの悟りを広く普及するべきと進言したことで、ブッダは仏教の普及に努めるようになったようです。
このため、仏教の基本スタンスは、“常に全ての人に伝わるとは思っていない。”というところにあるのだとか。 ブッダが悟った根幹には“一切皆苦(すべてのものは苦しみである)”という考え方があり、その中でも特に大きな苦しみを四苦八苦と言い、8つ挙げられています(四苦:生/老/病/死、八苦:愛別離苦/怨憎会苦/求不得苦/五蘊盛苦)。
すべて苦しみだという教えは一見すると刺激的ですが、納得させられる点も否めない、という曖昧な解釈が私の現状です(^^;
この四苦八苦のなかで、人付き合いや人間関係の悩みに近い言葉は“怨憎会苦”で、その意味は「怨み憎まなければならない人とも会わなければならない。」という...。言い得て妙ですよね。
結局、人間は独りでは生きていけないプログラムがなされていることをブッダは悟って言葉にしたのだろうと思いを馳せました。
それは現代になっても変わらず、今も社会/職場/学校/親戚/家族etc...という集団の中で個人が存在しているよ、とブッダに伝えたいと思いました。笑
この一切皆苦や四苦八苦などに表現される“苦”が生じる原因は、人間の持つ執着心や自己中心的な考え方にあるとブッダは説き、苦しみから抜け出すための道こそ“自分中心の考え方を手放し、世界を正しく見つめていく”こと。
諸法無我は“「私」や「私のもの」という実体は存在せず、すべて関係性において存在している”ことを表現し、縁起は“万物は互いに影響し合う無数の関係性の中に成立し、常に少しずつ変化する”という意味。
このブッダのお話を聞いたとき、その全てを咀嚼し理解しきれませんでしたが、一方で大きな気づきもありました。
自分中心に物事を考えてしまうから、自分視点で他者を評価(良/悪/好/嫌 など)してしまうことに対し、諸法無我や縁起の考え方を持って状況を俯瞰的に捉えられるようになると、自分視点での他者評価は限りなく存在しないことになり、悩むことは少なくなるのではないか。全ては関係性のなかで成立している、ということを日常的に意識し、定着できるよう頑張りたいと思います!
秦先生による仏教の概説や考え方を学び、後半はグループでのワークショプ(以下、WS)に移ります。WSは①〜③の手順によって進められます。
・①:煩悩ワークショップ*3
・②:マイ・リトル・ブッダと対面する
・③:戒律*4を定め、戒律用紙*5に記入し、戒律をグループ内にシェアする
テーマに沿った煩悩を真剣に考え、それをグループ内にシェアするワークショップは恐らく日本中探してもこの授業だけなのかな、と思っています。笑
そしていつも驚くのは、この煩悩ワークショップが大いに盛り上がります。
ご自身を悩み煩わしいと思わせている事象や内容、気持ちをシェアすることが大盛況になれるのは、シブヤ大学が開かれた学び場であり、そして授業してくださる秦先生のお人柄なのだと確信しています。
今回の煩悩ワークショップでは、授業タイトルにもなっている人付き合いや人間関係をテーマに考えてもらいました。
グループ内でシェアされた煩悩も様々で、職場での人付き合いに関する話から、親戚や家族内における事柄まで。そのどれもに対して、聞いている側の方々は素晴らしい傾聴の姿勢を感じられました。
個人の人付き合いに纏わる煩悩をグループ内でシェアした後は、秦先生の授業を通じて学んだブッダの悟りや仏教の考え方により、参加者それぞれの心に宿されたマイ・リトル・ブッダとの対面の時間がとられます。
それぞれのマイ・リトル・ブッダは何を語ってくれたのでしょうか。
参加者の方々は皆真剣にこの時間に向き合っていたように振返り、有意義な対面の時間を過ごされたのだろうと思います。
最後に、マイ・リトル・ブッダとの対話により得られた考えや工夫を、戒律として定め、その内容を戒律用紙に記入し、グループ内へシェアする時間もとられます。
煩悩ワークショップで出された煩悩が様々であった分、戒律も十人十色でしたが、それぞれの戒律には温もりある言葉が書かれていたように捉えています。
もし、日常生活で悩み煩わしいと感じるような出来事があったとき、お配りした戒律用紙を取り出し、「そうだった、そうだった。」と授業を振返ったり、気持ちを静めていただけたなら、これほど嬉しいことはありません。
授業シリーズ「マイ・リトル・ブッダをつくろう!」は日本人にとって非常に身近な仏教を題材とし、その仏教を日常生活に活かすことでメンタルヘルスやウェルビーイングを達成しようとする取組みです。
このレポートを閲覧し、ご興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、ぜひ次回の授業にご応募ください!お待ちしております!
(注釈)
*1...浄土真宗興正派 晟徳寺@札幌
*2...本名:ゴータマ・シッダールタ/約2500年前にシャーキア国の王子として生誕
*3...テーマに沿った煩悩を考えたり、持ち寄ったりして、その煩悩をシェアすること
*4...修行者の生活規律を定める言葉。この授業では自分ルールのような意味合いを持つ
*5...授業に参加いただいた方に、いつでも見返しやすいようなシートをお渡ししました!
(授業レポート:太田耕介、写真:鈴木夏奈)