授業レポート
2024/9/2 UP
ネガティブケイパビリティを鍛えよう!
〜答えを急がないためのワークショップ〜
今回の授業は、「ネガティブケイパビリティを鍛えよう!〜答えを急がないためのワークショップ〜」と題し、米国ルイジアナ州在住の学者・博士の矢島祐作さんを講師にお迎えしての開催、そして34名の参加者の皆さんが集まりました。 この授業では、ネガティブケイパビリティの概念を頭で理解することよりも、実際に体感し練習してみることを大事にしたいという授業コーディネーターの言葉のあとで、まずはグループ分けを行いました。 全員が円になって机を囲んで立ち、テレビ番組「笑っていいとも!」風に、5人〜6人がちょうど当てはまりそうなお題を考えてもらい、当てはまる人は挙手、人数がぴったり揃ったらグループ決定!というようなかたちで進んでいきました。「朝ごはんにパンを食べた人」「東欧に行ったことがある人」「今日授業に遅刻した人(笑)」などのお題から、ワークショップのグループが6つできました。5人を狙うお題を当てることは案外難しく、予定よりも時間はかかったものの、終始和気藹々としたグループ編成タイムでした。
グループに分かれたら、自己紹介の時間。
お名前と授業に参加した理由を話し、緊張を解しました。全体が活気付いてきたところで、早速矢島さんからお題が出されました。そのお題は、各グループで『ネガティブケイパビリティを一言に定義して、代表1名が教室のホワイトボードにグループアンサーを書いてください』というもの。制限時間内に最適解をグループで考えるという「ポジティブケイパビリティ」=「問題に対してすぐに答えを出し『わからない』を『わかる』に置き換えていく能力(ネガティブケイパビリティとは真逆の力)」が試されるお題でした。私が参加したグループでは、「自分と相手の答えが出るまで待つ力」「わからないことをわからないままにする能力」などの答えが出てきました。
全てのグループがホワイトボードに答えを書き出すと、矢島さんが答えの横にA・B・C・D・・・Fとアルファベットを書いていきました。
この記号、皆さんはどんな感情を抱きましたか?
私は咄嗟に、正解とどれだけ近いかという「成績」の意味だろうか・・・と思いましたが、実際は何の意味もなく書いているだけ、との種明かしが。 これこそ、アルファベットを見ただけで成績だと先読みして判断してしまう癖がついている=ポジティブケイパビリティが強いということなのだと気付かされました。 その後は、矢島さんからネガティブケイパビリティの説明とともに、現代社会においてはポジティブケイパビリティを強く求められるということを伺いました。教育、受験、就活、ネット社会では、すばやく最適解を出すことが求められます。じっくり考えて立ち止まることよりも、スムーズに効率よく進めていくことが重要視される機会が多いですよね。 さらに人間の脳は、もやもやしたまま決断しないことを不快に感じるのだそうです。 そして、英語は結論がすぐにわかる言語であることから、ポジティブケイパビリティが強く出やすい言語だというお話もありました。
国や言語によっても傾向が違うということに面白さを感じました。ポジティブケイパビリティに偏った社会は、何が問題なのでしょうか? 社会全体としてポジティブケイパビリティの傾向が強いと、強くて速い意見が重視され、意見が違うもの同士の対話が難しくなるそうです。特にSNSにおけるコミュニケーションはこれに当てはまります。 ネガティブケイパビリティをもっと大切にできる社会になれば、より対話ができる社会になるのではないかと矢島さんは語られていました。
このような矢島さんのお話を経て、後半はネガティブケイパビリティを鍛えるワークショップを行いました。 ネガティブケイパビリティを鍛えるために「なるべく結論づけないように考えてみる練習」そして「考えをまとめずぼんやりしたままま終わらせる練習」をしました。 みんなにモヤモヤしてほしい、そしてこの授業もそもそも時間内に答えが出るものではないと話す矢島さん。 一体どんな時間になるのか、皆さんソワソワしてきました。 1回目のワークショップでは、2つのお題「偏差値の高い学校に行くべきか」「恋愛は一対一である必要があるのか」が提示され、1つをメンバーと選んで話し合いました。初対面かつ難しいテーマながらも、どのグループも大盛り上がりでした。私が参加したグループは後者の問いを選び、皆さんの個人的で具体的なエピソードから始まり、どうしてそう思うのだろうか?この人の立場だったらどう思う?あなただったらどう感じる?と掘り下げていきました。
誰の視点に立つかで見方や意見が変わるため結論を出すことは非常に難しく、全体発表では経過と現状で出た答えを発表しました。 どちらのテーマについて話すのか選べずに終わりました!というグループが出てきた際には思わず会場から拍手が!ネガティブケイパビリティが大いに問われる時間だったのではないでしょうか。答えの出ない問いを初対面の人同士で、結論を出さずに対話して考えを深めていく機会が滅多にないことから、問いに対するモヤモヤ感はあるものの対話ワークショップは楽しい時間でした。
2回目は「人種、宗教、性など社会のタブーとされているトピックは話すべきか/話さないべきか」と「平和教育では加害の歴史も学ぶべきか/学ばないべきか」から選んで、グループで話し合いました。2回目は、テーマがより大きく、時間も限られていたため、どのグループも対話の途中で終了して、より強くモヤモヤが残ったのではないかと思います。
全体を通して矢島さんのお話が大変興味深く、研究についてもっとお話を伺いたいと思いました。 授業中も授業前後も、多くの参加者の皆さんが先生に積極的に質問をされている姿が印象的でした。 ネガティブケイパビリティをたったの3時間で学び切ることはできませんが、モヤモヤする練習を通して多くの学びと発見に出会える素敵な授業になりました。 ありがとうございました!
(授業レポート:佐藤華子、写真:武田環、江藤俊哉、片山朱実)
グループに分かれたら、自己紹介の時間。
お名前と授業に参加した理由を話し、緊張を解しました。全体が活気付いてきたところで、早速矢島さんからお題が出されました。そのお題は、各グループで『ネガティブケイパビリティを一言に定義して、代表1名が教室のホワイトボードにグループアンサーを書いてください』というもの。制限時間内に最適解をグループで考えるという「ポジティブケイパビリティ」=「問題に対してすぐに答えを出し『わからない』を『わかる』に置き換えていく能力(ネガティブケイパビリティとは真逆の力)」が試されるお題でした。私が参加したグループでは、「自分と相手の答えが出るまで待つ力」「わからないことをわからないままにする能力」などの答えが出てきました。
全てのグループがホワイトボードに答えを書き出すと、矢島さんが答えの横にA・B・C・D・・・Fとアルファベットを書いていきました。
この記号、皆さんはどんな感情を抱きましたか?
私は咄嗟に、正解とどれだけ近いかという「成績」の意味だろうか・・・と思いましたが、実際は何の意味もなく書いているだけ、との種明かしが。 これこそ、アルファベットを見ただけで成績だと先読みして判断してしまう癖がついている=ポジティブケイパビリティが強いということなのだと気付かされました。 その後は、矢島さんからネガティブケイパビリティの説明とともに、現代社会においてはポジティブケイパビリティを強く求められるということを伺いました。教育、受験、就活、ネット社会では、すばやく最適解を出すことが求められます。じっくり考えて立ち止まることよりも、スムーズに効率よく進めていくことが重要視される機会が多いですよね。 さらに人間の脳は、もやもやしたまま決断しないことを不快に感じるのだそうです。 そして、英語は結論がすぐにわかる言語であることから、ポジティブケイパビリティが強く出やすい言語だというお話もありました。
国や言語によっても傾向が違うということに面白さを感じました。ポジティブケイパビリティに偏った社会は、何が問題なのでしょうか? 社会全体としてポジティブケイパビリティの傾向が強いと、強くて速い意見が重視され、意見が違うもの同士の対話が難しくなるそうです。特にSNSにおけるコミュニケーションはこれに当てはまります。 ネガティブケイパビリティをもっと大切にできる社会になれば、より対話ができる社会になるのではないかと矢島さんは語られていました。
このような矢島さんのお話を経て、後半はネガティブケイパビリティを鍛えるワークショップを行いました。 ネガティブケイパビリティを鍛えるために「なるべく結論づけないように考えてみる練習」そして「考えをまとめずぼんやりしたままま終わらせる練習」をしました。 みんなにモヤモヤしてほしい、そしてこの授業もそもそも時間内に答えが出るものではないと話す矢島さん。 一体どんな時間になるのか、皆さんソワソワしてきました。 1回目のワークショップでは、2つのお題「偏差値の高い学校に行くべきか」「恋愛は一対一である必要があるのか」が提示され、1つをメンバーと選んで話し合いました。初対面かつ難しいテーマながらも、どのグループも大盛り上がりでした。私が参加したグループは後者の問いを選び、皆さんの個人的で具体的なエピソードから始まり、どうしてそう思うのだろうか?この人の立場だったらどう思う?あなただったらどう感じる?と掘り下げていきました。
誰の視点に立つかで見方や意見が変わるため結論を出すことは非常に難しく、全体発表では経過と現状で出た答えを発表しました。 どちらのテーマについて話すのか選べずに終わりました!というグループが出てきた際には思わず会場から拍手が!ネガティブケイパビリティが大いに問われる時間だったのではないでしょうか。答えの出ない問いを初対面の人同士で、結論を出さずに対話して考えを深めていく機会が滅多にないことから、問いに対するモヤモヤ感はあるものの対話ワークショップは楽しい時間でした。
2回目は「人種、宗教、性など社会のタブーとされているトピックは話すべきか/話さないべきか」と「平和教育では加害の歴史も学ぶべきか/学ばないべきか」から選んで、グループで話し合いました。2回目は、テーマがより大きく、時間も限られていたため、どのグループも対話の途中で終了して、より強くモヤモヤが残ったのではないかと思います。
全体を通して矢島さんのお話が大変興味深く、研究についてもっとお話を伺いたいと思いました。 授業中も授業前後も、多くの参加者の皆さんが先生に積極的に質問をされている姿が印象的でした。 ネガティブケイパビリティをたったの3時間で学び切ることはできませんが、モヤモヤする練習を通して多くの学びと発見に出会える素敵な授業になりました。 ありがとうございました!
(授業レポート:佐藤華子、写真:武田環、江藤俊哉、片山朱実)