シブヤ大学

授業レポート

2008/2/15 UP

                     

手紙はウレシイ。
だけど、「伝達するため」だけの手紙は、
書くのも、読むのも、
メンドクサイし、ワズラワシイことがある。

拝啓・敬具、時候の挨拶、頭語、結語…そんなルールよくわからないし…
手紙ってメンドクセー、と
思ってはいませんでしたか。

この日の授業テーマは、<手紙の書き方>と<道具の選び方>。
さてさて何だろう?とたくさんの「?」をもった生徒さんが、朝から約20名集まりました。

<手紙って?>
「手紙って、人との会話を楽しむためのもの。
手紙は、なかなか捨てない。そして、色褪せない。ずっと手元に残るもの。手紙は、出して、受け取ったらそれでオワリ、じゃないのです。それが残っている間、ずっと続いている、コミュニケーションなんです。それは、なかなかメールにはない醍醐味だと思いませんか?」
先生は、手紙という存在の大切さを優しく説いていきます。

<手紙の書き方>
「手紙の構成要素、とは「思いやり」と「自分らしいメッセージ」。これさえあれば、手紙は失礼なものにはなりません。たとえば久しぶりに会った人には、「最近どう?」「元気してる?」って、言いますよね。そういうアタリマエの、(久々に会った)その人が何を聞きたいか、言いたいか、相手の立場に立ってそれを想像する。手紙のフォーマットっていうのはそういうものなんです。

だから手紙って、
「前文(拝啓…で続く、季節のあいさつ)・主文(本題)・末文(締めの挨拶)+後付け(日付・名前・宛名)」
で、できているんです。」

これがわかると、「拝啓-敬具」の意味も、「季語」の意味も、よりわかってくるわけです。“思いやり”と“メッセージ”でできている、それが基本フォーマット。手紙を書くときに、「季語をいれなくちゃいけない」って考えて書く言葉と、「この季節感、相手も感じているかな」と尋ねるように書く言葉では、伝わるものが違いますね。と、そういうことなのですね。
これらのことって、ものすごく当たり前のことなのですが、そうやって説明されちゃうと、「なんだそうかぁ」と思ってしまいました。

<道具の選び方> 
そして、この日の会場の「ウイングド・ウィール表参道」は、お手紙の専門店。便せん、封筒はもちろんのこと、一筆せん、コレスポンスカードなど。一つひとつ手作りで、エンボス加工・箔押し加工…ちょっと凝ったものや、きれいなもの、かわいらしいものがここにはあふれていましたが、先生はその選び方についてじっくりお話してくれました。

<道具って何のためにあるの?>
「あくまで、「『道具』とは、自分の『メッセージ』(料理)を盛り付け、引き立たせてくれるもの。すなわちこれらの贅沢な道具たちは、またもや料理で言うと、贅沢なお皿でありボウルでありお玉でありおなべであり包丁であるわけです。道具だけ揃えても気持ちがなければ…とは思うけれど、それって逆に、自分の腕に自信がなくても、道具があればできるような気がしてくる。そんなことってありませんか?」

私もカタチから入るタイプなので、そういうことはよくあります。

<「道具の贅沢さ」とは?>
「道具の贅沢さといえば紙素材だって注目ポイント。日本で昔からフォーマルに使われる紙といえば楮(こうぞ)。障子なんかもそうですね。欧米のフォーマルといえばコットンペーパー。ウィングド・ウィールで使われている紙は、木材パルプで大量生産できる紙ではなく、これらの、手すきで丁寧につくられた紙。職人技ですね。しかもこれらの上質な紙を使うということは、森林の大量伐採につながる大量生産の紙の、販売促進をやわらげるっていうことにもつながるわけです。」

いやはやこれがはやりのエコってやつですね。

<お手紙上級者の「道具」>
「手紙ワードローブを持っておくといいでしょう。洋服だって、渋谷に買い物しに行く時と、友達の結婚式に行く時と、取引先の方にお会いしに行く時じゃ、違うものを選びますね。同様にお手紙も、シーンに応じて使い分ける「ワードローブ」・「引出し」を、自分で用意しておくのです。そうやっていろいろなものを試していって、自分の筆記特性や好みに合ったものを見つけると、その手紙はより、「自分らしく」なります、と。ちなみに私は仕事上でお世話になった人に感謝の気持ちを伝えたいとき、まず、公式・正式な「会社の代表」として、フォーマルな『レターヘッド』付きのお手紙を書いてから、その後、個人的な、カジュアルな『御礼状』を書きます。」

いやあ上級者ですね。上級者の持つワザを盗んでいくのは、ビギナーさんたちには必須ですね。

授業が終わるころにはお手紙が書きたくてたまらない!と、うずうずしていた生徒さんたち。先人たちのワザを学びながら、自分らしい思いやりとメッセージに富んだお手紙、これからもどんどん書いていきたいですね。

【参加者インタビュー】にしさん
「シブヤ大学には、毎月参加しています。手紙は、最近なかなか書けないけれど、今日はそれが書けるようになれればと思い、参加しました。お友達には、いい道具を使ったセンスの良いお手紙をくれる人が数人います。だけど、私はそういうのが結構苦手だったんです。やっぱり中身が大事だと思っているから、外見ばかり飾りすぎるのは好きではなくて。でも先生も「手紙を書く、ということの敷居を低くしたい」とおっしゃっていたけれど、こういう素敵な道具がたくさんあったら確かに書きやすい気がしますよね。だからこういうお店の存在はうれしい。手紙はやっぱり長くとっておけるし、メールよりも手書きで出したいですね。もらったらうれしいような手紙を、自分でも書きたいし、そういう風になれるかもしれないな、という気持ちにさせてくれるような授業でした。」

授業中にも積極的に質問をし、授業後もとてもうれしそうにしていたにしさん。その後用事があったのにも関わらずインタビューを受けてくださったにしさんに、私からお手紙を書きたいと思います。って、手書きじゃないのが致命的ですが…。

「拝啓 本当に寒い日が続きますね。こんな季節、いかがお過ごしですか?私にとっては、毎日変わる鍋のスープと、夜ともに寝る湯たんぽが、寒い季節の最大の楽しみです。にしさんも、寒い季節の楽しい過ごし方、たくさんご存じでいらっしゃいそうですね。よければ教えてくださいね。
 さて、先日はシブヤ大学の「手紙の書き方」についての授業で、インタビューに答えていただき、ありがとうございました。にしさんもその後、お手紙書いてみられましたか?私は祖母に書いてみましたよ。新たな楽しみを見つけて、今とてもわくわくしています。今度文通しませんか?メールでもできることを、手紙で行うというのは、なんだかオツな気がしますし。先生は、「手紙のフォーマットは、使わなくてもいい。でも知っていれば、使わない理由になる。」なんてことも言ってましたね。今それを思い出しました。メールの良さを知っているからこそ、手紙という贅沢なツールが選べるんですよね。うーん本当に贅沢ですね。
 それでは、くれぐれも暖かくして、湯たんぽとともに、この季節を楽しんでいきましょう。風邪など引かれませんように。 かしこ
十二月十五日 天野咲耶 にしさま」

追伸 「かしこ」が平安時代の女性の「イマ風」のカジュアルな言葉だなんて、おもしろいですよね!これからどんどん使っていこうと思っています。

(ボランティアスタッフ 天野咲耶)

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