シブヤ大学

授業レポート

2008/1/9 UP

    

古伊万里を現代の生活の中で使うとしたら、あなたはどのように使いますか?
今回で13回目となる「やきもの鑑賞入門編」は、古伊万里を含めた陶磁器の特徴と
それに適した活用方法について、実物を目の前にしながら学びました。

授業前半の1時間は、美術館内の応接室を教室として講義が行われました。

前半は先生が器の種類ごとにその特徴を説明して下さいました。
まずは磁器。
その特徴はなんといっても丈夫なところです。色は白く、表面は釉薬によって
ガラス化しており、高温で焼かれているので硬く、叩くとカーンカーンと高い音がします。
(ちなみに陶器は器の表面には釉薬はかかっていますが吸水性があり、叩くとにぶい音がします。)
有田焼や九谷焼などは磁器に分類されます。絵がガラスの膜の下に書かれているものは絵が
消えにくく、またガラスの膜のお陰で水も油もしみません。これらの特徴により、磁器は食器
に適していると言えます。ただ、磁器の中でも伊万里焼は若干やわらいかい為に、古伊万里など
は色がにじんでいることも多いのだそうです。でもそんな時は漂白剤に一度つけると綺麗な色に
なるそうです。この方法は先生のお父様がかつて骨董商をされていた時にも実践されていたとの
ことでしたが、磁器にのみ使用できる方法ということなので、見分け方に自信がない場合は
避けたほうがいいと思います。

次にやきしめについて。備前焼や信楽焼などがやきしめに分類されます。
やきしめはガラスの膜がないので、使用する前に2時間ほど水にひたしておくと、器自体の色が
綺麗に変化するとともに水や油がしみにくくなるそうです。また、その特徴を考慮して、器の
上に葉っぱを敷いてから食べ物をのせるなどの心がけが必要です。
次に素焼について。素焼は陶磁器の焼方の1つで、釉薬をかけずに焼き上げられたもの
で、水や油を吸い込みます。土器や、神社の祭事で使われている器は素焼です。
その特徴を活かした器として、素焼のワインクーラーがあります。器に水をしみこませてから
ワインボトルを入れると、器にしみこませた水が周囲の熱を奪いながら徐々に蒸発し、
クーラー内部が冷えるのです。自然の力で冷えるなんて、環境にもやさしいですよね。

そして一通り特徴が分かったところで、授業後半は先生が用意して下さっていた古伊万里の器や
唐津焼の器と色紙などを使って、対話形式で器のコーディネート方法を参加者全員で考えました。
まずは色の組み合わせから。実際に器の中に色紙を様々な組み合わせで入れてみると、思いもよらない
素敵な色の組み合わせが見つかりました。
例えば、青と白の組み合わせが美しい古伊万里の器、実は赤がとっても似合いました。
茶色の大きなやきしめの器。これには緑などが似合いました。
真っ黒の唐津焼のかたくちには、白がとても映えました。
その他にも、器を食器以外に使うとしたら何に使えるか、陶磁器とガラスや木などの異素材
を組み合わせてみたりしました。
先生の問いかけに対して生徒さんからも様々なアイデアが出され、楽しい授業でした。
教室での授業の最後には実際に器に触らせていただき、その後は、美術館の2階にある展示を先生に
解説していただきながら鑑賞して、授業は終わりました。

観賞用としてではない陶磁器の可能性に気付かされた魅力いっぱいの授業でした。

(ボランティアスタッフ 疋田容子)