シブヤ大学

授業レポート

2023/9/4 UP

"死"の学校(第5回)
「遺影 / 命をアーカイブする」

死の学校開催も第5回になりました。様々な切り口から参加者にわかりやすく、楽しく、時に遊び心を持って授業を企画する(株)アンドフォーアス代表の柴田駿さん。今回も個性豊かな仲間たちとともにイエーイ(遺影)をテーマに写真家Ralph spielerさんと株式会社写真弘社の柳澤由利さんとともに、参加者のみなさんと一緒に学びと気づきと発見に出会える授業となりました。では、逆光の柴田さんの写真からレポートスタートです!笑
自己紹介と、この授業に参加したきっかけなどグループでお話。“鳥を撮るのが好き”“人物を撮ることが多い”“写真の仕事をしている、遺影を撮る気分はどんな感じなのか興味がある”などが聞こえてきました。そんな中、遺影ってなんだ?という事で写真家Ralph spielerさんから自身の遺影撮影体験を通してお話がスタートします。

認知症のお母さまの遺影を表情が残っている間に残しておきたいという娘さんからの依頼。
その人にとって生きる時間を撮る。だから生活を共にしてから撮影した。最初はやっぱり反応がない。だから見守って撮る。日常を撮る。3ヵ月くらい経ってようやく本格的に撮りはじめ。好きな曲はなんですか?美空ひばり。曲をかけると嬉しそうに踊ったり歌ったり。その人らしさがどんどん現れる。撮影された写真は娘さんとの楽しそうな表情と柔らかな笑顔でした。AIの美空ひばりが偶然流れていた、、、などちょっと笑ってしまうエピソードを交えながらゆるゆるとお話をする写真家さん。参加者のみなさんも興味深げに聴きいっていました。
次に4人一組になり、【自分が亡くなったときに、残るものは】【万が一のとき、「遺影」にしたい写真はある?】をシェアしていきました。残るものとしては、生活していた日用品やお金、不動産、今ならではのスマートフォンやSNSなどのデジタル遺品と共通だった一方、遺影に関しては様々な疑問や意見が出て盛り上がっていました。

若い時の写真がいいのか、できるだけ今現在のものが良いのか。1枚ではなくお気に入りの写真を数枚組み合わせたい。父が亡くなって写真に困った時、葬儀屋さんで小さな写真を引き伸ばし修正し用意したが、これはその人なのか。遺影として撮ったわけではないが、好きな写真家さんに撮ってもらったお気に入りがある。そんな意見交換から生まれたのは、

遺影は誰のためのものなのか

自分で一番自分らしいと思う写真を選ぶのか。家族がその人らしいと思う写真を選ぶのか。様々なセルフイメージがある中で、こういう人がいたよね!と気持ちを残す一つの方法。それは必ずしも人じゃなくてもよくて、その人が大切にしていたモノや興味があったモノでもいい。この授業を通してみんなで考える大切なポイントが見つかった印象でした。

そんなポイントを共有したのち、いよいよ写真を撮る・撮られるワークがスタート。みなさんそれぞれのポジションを見つけて、和気あいあいと撮影していました。

写真を撮り終えたら、一番これだと思う写真をシェアし、写真家さんのコメント付きで振り返りました。自分で撮影した写真をプロの写真家さんに講評いただく機会はないので、みんなそわそわ。ぜんぶ素敵で写真家さんからは、どの写真もちゃんとその人の目を見ているのがわかる写真で素晴らしいと高評価でした!短時間でも質問しあったり、お話をしたりとその人を知る態度が写真に出るとお話がありました。撮る側と撮られる側の関係。撮る意識がどんな写真になるのかを学べた時間でした。

そして最後に株式会社写真弘社の柳澤由利さんからプリントの魅力についてお話を伺いました。1950年創業で73期目の写真弘社。数々のアート作品などのプリントも手掛ける老舗の会社です。最近はプリントを見る時間が少なくなったと語る由利さん。2011年3月11日東日本大震災。全てのデータがダメになったのに対し、プリントだけは残った。泥の中から見つかったフィルムを修復しプリント、思い出をよみがえらせた経験を交えながら、大切な写真はぜひプリントでと思いをお話しになっていたのが印象的です

写真は文化だ、プリント技術を育てて未来に写真を残す

とても印象的な言葉です。家族の思いを遺影に残す。遺影は考える時間や対面する時間をつくりだす。とても魅力的で大切なものだという気持ちが由利さんのお話から伝わってきました。手焼きである業務用プリントの技術取得は20年ほどかかるそうです。1秒の差が仕上がりに影響する世界。どこの業界も後継者問題を抱えていて、100年前のネガをプリントした写真をみながら、あらためて残すことの大切さも学んだような気がします。遺影という写真を通して様々な視点での気づきを得られた授業でした。

9月1日(金)~9月30日(土)まで神田モノクロ館2Fギャラリー・アートグラフにて今回講師でいらっしゃったRalph Spielerさんの写真展が開催されます。ぜひチェックしてみてください。私も時間を見つけて見に行ってみようと思います。
http://blog.livedoor.jp/shashinkosha/archives/55847217.html


そして、死の学校第6回もお楽しみに!最後にみんなでパシャリ!楽しかったですね!
(授業レポート 竹鼻ゆか / 写真 武田環 )