シブヤ大学

授業レポート

2023/7/6 UP

"死"の学校 第4回
「大切な人をどう看取る?」

誰にでも平等に訪れる【死】。みんなの関心ごとでありながら気軽に話すことが難しい、死ぬという事。今回もお馴染みの(株)アンドフォーアス代表柴田駿さんが主体となり、特別養護老人ホームケアプラザさがみはら施設長である大塚小百合さんをお招きして「老い」と「死」のリアルと題し、よりよい人生を送るために今から考えておくべきことをみんなで学ぶ機会となりました。

今回の受講者は18名。参加理由は祖父を自宅で亡くし考えるきっかけに、身近でいろいろあるなかで友人からシブヤ大学で死の授業をやっていると紹介されて、話したいけれどなかなか話せなかった、どう生きればよいのか、行政書士というお仕事柄お客様にどう伝えるか、子供がいて今自分が死んでしまったら、介護に直面している、などそれぞれの生活の中で感じるリアルをきっかけに参加されていました。みなさんの参加理由を聞きながら、ボランティアスタッフとして参加した私自身も95歳の祖母や高齢になってきている両親を思い出し、これから向き合うことになる大切な人を看取る心構えを学んで帰りたいと感じました。



自己紹介を終えて、最初の問いかけへ。
【あなたは自分が老いて死ぬとしたら、どこでどういう死に方をしたいと思いますか?】
なかなか普段日常生活において聞かれることのない問い。改めて聞かれて一瞬とまる教室。
やはり何かしらの病気にはかかりそうだし病院で?とか理想は眠るように自宅がいいなと感じている方が多かったように思います。その中で、自分はハイキングが好きなのでハイキング中にコロッと逝きたいとおっしゃっていた方が1人。最後まで好きなことをしながら死にたいという方も確かに多いような気がします。しかしながら、この後驚愕の事実が講師大塚さんによって明らかにされます!こちらはのちほどお伝えするとします。


“どこでどういう死に方”実際に日本ではどこで亡くなることが多いのか。データで見ると7~8割が病院。1割が自宅。その他は老人ホームなどの施設だそうです。自宅がいいなと思う反面、現実はほぼ病院という結果に。何故病院が多いのか。様々な理由が絡み合っているが、やはり国民皆保険が始まったことや、医療の発展がとても大きいとお話がありました。確かに何かあったらすぐ病院と私も思ってしまいます。その感覚は間違いではないけれど、いろんなことを知った上でその選択をしていますか?というところが今回ポイントになるようです。
さて、ここで先ほどのハイキング中にコロッと逝きたいというお話。例えば、すでに100歳で、日課にしている散歩をしている途中にコロッと倒れて心肺停止になったとします(自身の希望ではこのまま逝かせてほしい)。今の日本ではどのような対応になるでしょう。答えは救急車を呼ばれ、肋骨が折れながらも心臓マッサージ、家族が断らないかぎり心肺蘇生が続けられます。本人の希望する看取りとはまったく違うものになってしまう。大塚さんによるとこの話をするとみなさん驚かれるとか。仮に本人がその意思を書き残していたとしても、かかりつけ医師による診断や家族の合意がなければ叶えられないという現実。だからこそ、元気なうちから家族と死についてしっかり話をしておくことが大切と大塚さんは伝えてくれました。


死について家族や親しい人たちと話すとき、老衰とは身体の中でどんなことが起こっていくものなのか、大半の人が何かしらの病気で亡くなる中で生存期間の延長だけの意識で良いものか、終末期医療はどんなものなのか、など現実を知った上で考える機会や時間が必要と話す大塚さん。そこには人の数だけ死生観、価値観が存在し、とても難しい問題。繰り返し話し合う必要があることを教えてくれました。
話し合う中で出てきたキーワード【ACP(アドバンス・ケア・プランニング】。人生の最終段階の治療・静養について、患者・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセスという意味がありますが、これらについてご自身が所属する施設での取り組みを交えお話くださいました。
死の質(Quality of Death)の向上を通した生の質(Quality of Live)の向上という観点から、心残りゼロケアを目標に、わかりやすいフローチャートや人生史・趣味・嗜好・性格・思い出などを記録する聞き取り表、状態のステージごとにご家族目線でわかりやすく説明できる書類、看取りの説明会、グリーフケアの一環として希望を伺いお見送り会の実施などがあるということでした。
聞き取り表など私たちでもすぐに取り入れられそうな事から、施設で説明会があるということも知ることができたので、どこから手をつけていけばいいのか、困ったときの相談できそうな場所など、なんとなくイメージが少しできたのではないでしょうか。あっという間の2時間。講師の大塚さんも、受講いただいたみなさんも、まだまだ話し足りない聞き足りないご様子。終わった後も質問で列ができており、もっと話し合いの時間も欲しかったというお声がありました。次回に活かすそうです(笑)


誰かと話すことで自分にない価値観や考え方に触れることができ、新たな気づきに繋がると感じます。今後も柴田さんによる死の授業はいろいろな視点を持って様々な講師と共に続いていく予定です。知る事の入口はいろいろ。まずは気軽に参加して知ることから始めてみませんか?
※授業場所も今回は旧校舎で学生に戻ったような感覚で素敵な環境でした~。


 (授業レポート:竹鼻ゆか/写真:片山朱実、鈴木 陽)