授業レポート
2023/8/8 UP
「演じる」を楽しむ
~ものがたり遊びワークショップ~
酷暑の中、駅からやや距離がある恵比寿社会教育館にもかかわらず、欠席者がひとりもいない、期待値が高かった今回の授業ですが、授業のタイトルから「私何も考えずに申し込んだのですけど大丈夫ですか」受付で心配そうに尋ねられる方がおられるように演劇のワークショップということで少しハードルが上がったかもしれません。
ボランティアスタッフの私も参加させていただきましたが、結果的には多くの方々のアンケート感想にもあったとおり単純に「楽しかった!」体験になりました。
ワークショップは、演出家の青柳敦子さんが次々に提示するものがたりに俳優の田中英樹さん演ずる宇宙船の船長メイヤーとのやりとりもからめ、様々にチーム替えをしながら参加者同士で解釈を考え、さらにそれを即興で演じるという進行でした。青柳さんからのご説明のとおり「目標なし、台詞なし、人前でのコミュニケーションをただただ楽しむ」時間になりました。
参加者一人一人と田中さんに自由なアクションを加えた自己紹介とシブヤ大学名物30秒自己紹介でアイスブレイクしてからスタートです。
まず、青柳さんから今日のものがたりの最初の設定が提示されます。「はるか未来に、とあるミッションを帯びた宇宙旅行に40人の市民が志願する。そのミッションが成功するまでは、地球には帰ってこられない」この設定を受けて4つのチームに分かれて、「ミッションは何か?名前も付けて」「そのミッションにはどんなスペシャリストが必要かも考えて」とものがたりを参加者同士の話し合いから動かしていくことへタイムトライアルが始まります。
各チームの全く異なる紡ぎ出しには、青柳さんも驚きでした。
「ベイビープロジェクト、どのようにも時間軸を使える世界を見つける 赤ちゃんにも戻れる、ずっと運動会、ずっと昼休みも選べる 必要なスペシャリストは、物理学者、詩人」
「オナラ再生プロジェクト、温暖化の原因でもあるオナラが禁じられた地球から、無害にオナラができる方法を見つけ、快楽を取り戻す 必要なスペシャリストは 食材専門家 料理人」
「父を探すプロジェクト 地球環境を再生する神を探す旅 必要なスペシャリストは、修道女 神父」
「伝説の愛の箱探しプロジェクト 愛の種が入っている箱を探して持ち帰る 必要なスペシャリストは、面白い人 子ども」
続いてメイヤー船長が、同行する40人が何のスペシャリストなのかを参加者一人一人から表現してもらう出会いのセッションです。最初の論理的な回答から2巡目くらいには、瞬発力からの個性的な発想に変化していくことがはっきりしてきます。
一巡目「ひとの心読める・人を癒す・丈夫な体・詩人・料理人・息を止められる・食べて何か分かる・危険を回避する、など」
↓
二巡目「寝ない人・5センチ浮いている・無になれる・ざっくり何人か分かる・優しく撫でる人・まばたきしない見逃さない 、などなど」
次に最初の4チームで、「宇宙旅行に出発する搭乗員の最後の夜の過ごし方をパントマイムで表現して」との提示です。宴会で賑やかに、家族との別れをじっくりと、普段通りに、あらゆる生き物との別れをしっかりと などこちらも同じ発想にならないことに驚きでした。
旅立った宇宙船ですが、ある時アラームが鳴り響きます。謎の生命体が、目からビームを発射して船を溶かしています。さあ、この恐ろしい宇宙生命体を表現してみましょう。今度は、3チームに編成替えで新しいメンバーにも出会い、3つのユニークなパフォーマンスも交えた発表です。
なんとか危機を乗り越えることができた宇宙船ですが、故障した箇所があり、100%の安全が保障できない状況であることが分かりました。これからどうするか、ミッションを放棄しようか、それともこのまま旅を続けるか、メイヤー船長は、乗組員の意見を聞くことにします。難しい選択を敢えて迫ったところほぼ真っ二つに意見が分かれました。
青柳さんから何故そう判断したのかを補強する意見を2チームで話し合って、勇気ある代表者同士でディベートしてみることに。放棄派は、起こったことを伝えるために帰る、次の可能性に賭けるなど。続行派は、行けば新たな可能性がみえる、リスクは同じなどと決着がつきません。
メイヤー船長はどうするかまだ決められません。そんな中、一部の乗組員には、陰で「どうせ無理さ」などストレスから無気力になってしまう者も出てきました。さて、彼らはどうしてそのように思うのか今度は2人一組で話し合うことに。参加者同士の日常体験を共有する場にもなりました。
迷っているメイヤー船長に、乗組員が2列でトンネルを作り、近くを通る時に小声でアドバイスを送ります。今のままでいいよ、一緒に飲みましょう、お疲れ様、あきらめて、などなどトンネルをくぐる船長は、あちこちで喜んだり、ずっこけたりしながら最後に「結構ダメージも受けたが、アドバイスありがとう。ダメな船長だが、なんとか結論を出すよ」と。そして、「先遣隊をだし、可能性を探る。私も行くが、小型艇に乗る4名の志願者を募る」と宣言しました。しかし誰も手を上げません。かわいそうな船長を見かねた2人がなんとか同乗することにはなりましたが、ミッションを続けることになった3人はなかなか戻って来ないというところで提示されるものがたりはここまでで終わりです。
このワークショップの最後は、元の4チームに戻ってものがたりの最高のエンディングを考えて表現しました。
「3人が争う、2人の宇宙生命体に仲裁され、ミッションの解決策を授かり、地球に戻ってくる」
「時間も空間もない世界に入り、先遣隊が地球に戻って神とアダムとイブになり人類を再生する」
「別の星に着いて船を補修、3歳の子どもが伝説の箱を見つけ、先遣隊を助ける。箱には愛と勇気が詰まっていた」
「正月休みにマツコデラックスがテレビ番組のつまらなさから寝落ちする。その間先遣隊は戦ってミッションを解決する。マツコが自分のオナラで目覚めるほどの一睡の間の出来事だった」
2時間半と長丁場に休憩もないなかでも集中して、本当にあっという間でした。授業終了後もあちこちで感想を語りあい、講師の見送りを受けて皆さん授業前とは違ういい表情で帰られました。ただ楽しく遊ぶことは大人にも必要な時間だと感じられました。
(授業レポート:元木秀樹)
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こんにちは。シブヤ大学ボランティアスタッフの佐々木です。今回は7月15日に行われた「「演じる」を楽しむ~ものがたり遊びワークショップ~」のレポートです。
場所は恵比寿社会教育館の和室です。二部屋のふすまを開いて、総勢16人が十分に動き回れるスペースの中で、社会人1年目の女性から定年間近のシニアまで、年齢も性別も多様な方々が集まりました。授業が進行するにつれて、この参加者の皆さんの想像力と表現力にたまげることになります…(笑)。
始めにアイスブレイクを兼ねて、輪になって30秒自己紹介です。隣の方がストップウォッチを片手にタイムキーパーを務めます。16秒で終わる簡単な自己紹介をする人から30秒ギリギリ、ちょっとオーバーする人まで様々。
自己紹介が終わると、いよいよものがたりのストーリーが与えられます。今回のストーリーは、皆で宇宙船に乗って地球を脱出するというもので、参加者はみな、その宇宙船のメンバーだというのです。ちなみに先生の田中英樹さんが宇宙船の船長役を務めます。そこでまず、5人で1つチームを作り、4つのグループに分かれてプロジェクト名を考えるというワークをすることに。
このワークで出てきたプロジェクト名がかなりユニークです。1つ目の班は「おなら再生プロジェクト」。地球温暖化で人類はおならが禁止され、薬を飲んで我慢する日々…。そこで人類がおならをまたできるようになるための何かを探してくるのがミッション、という設定です。ほかに、「宇宙の父(神)を探しに行くプロジェクト」、「新しい時間軸を探しにいくプロジェクト」「伝説の愛の箱探しプロジェクト」と、どの班も面白そうな企画を次々打ち出してきます(笑)。
その後、青柳さんから、船長の田中さんにあなた自身は何のスペシャリストなのかアピールするようにという指示が出されます。また輪になって一人ずつ、我こそは宇宙船に必要なスペシャリストなのだとアピールしていきます。「10分息を止められるスペシャリスト」「神と対話できるスペシャリスト」「3センチ浮き続けられるスペシャリスト」「酸素を作れるスペシャリスト」などみんな必死で考えます。だんだん自己アピールに疲れてきてありのままの自分でいいんじゃねえ的な意見が出てきます。「大ウソつきのペテン師スペシャリスト」「怠け者スペシャリスト」「なんでもひっくり返すスペシャリスト」など…。個人的には「優しくなでるスペシャリスト」っていうのがいいなと思いました。船長の田中さんは戸惑いつつも「君こそ宇宙船に必要なスペシャリストだ!」と言って場を盛り上げてくれます。
休む間もなく次のワークの支持が青柳先生から。見事全員スペシャリストとして採用されたので、最後の夜を思い思いに過ごしてくださいと。それをパントマイムで表現するというものです。また5人くらいのチームに分かれ、最後の夜を表現します。先ほどのチームに戻りみんなで考えます。ディズニーランドのパレードを表現したものから、家族との涙ながらの別れを表現したものなど、言葉がない分、全身で表現していきます。ちなみに私は犬役を演じ、お手や遠吠えを表現した後、最後に主人公と遠い流れ星を眺めました。犬役を演じたのは人生初かも(笑)。
その後、宇宙船は謎の生命体に襲われ、ピンチに。今度は違うチーム構成で謎の生命体を表現します。チームワークでおどろおどろしさを表現するチームから、這う、白目をむくなど個人の異才が放たれるチームまで様々…。正直、迫りくる生命体がホント怖かったです涙。
宇宙船が破損してしまったので、チームは進むべきか否か多数決を取ることになります。驚くべきことに「いったん帰って次の可能性にかけるべきだ」という地球に帰る派と、「ここまで来たら帰れない、手ぶらで地球に帰れない」というミッションを続ける派に、意見は真っ二つに分かれることに…。その後、隣の人と二人で一つのチームを作り本音を話し合うと、船長への陰口がどんどん飛び出します。こんなことになるなんて聞いていないよ~、船長が頼りなさすぎるんじゃないか、等々。田中船長、ピンチ!
田中船長はみなの意見を聞く中で決心します。一人、小宇宙船に乗ってミッションを遂行すると。皆は、みなでミッションを続けてほしいと…。誰か私と一緒に来てくれますか…、というか細い問いかけにはじめ誰も名乗り出ず、船長は落ち込みます。そんな船長にみんなで声をかけるのですが、お世辞にも優しい意見はほとんどありませんでしたね~~~。田中船長、ダメ船長役を熱演されてました!その後無事に二人、船長との運命共同体が見つかり(ひとりは次期船長を虎視眈々と狙っている方でしたが)、3人で小型船に乗って飛び立っていかれました~~。
さてさて、このワークショップもついにフィナーレを迎えます。参加者はそれぞれの当初のチームに戻って、最後それぞれのミッションがどのような顛末を迎えたのかを考えます。神様を探しに行くプロジェクトは無事神様に会えたようです。愛の箱探しプロジェクトも無事愛の箱を探し出し、船長たちを拾って地球に帰還。おなら再生プロジェクトは最後おならをして夢から覚めた(宇宙船の冒険はすべて夢だった)というびっくりな結末。
大人になってしばらく使っていなかった感覚を思い出し、とても満足度の高い時間を過ごすことができました!最後に参加者の方とお話していたら、普段は全然違う仕事されているけれど、自分のうちに秘める表現欲求をフルに使ってみたかったという方もいらっしゃいました。SNSやPCなど、表現の手段が文字や数字になってしまっている現代だからこそ、こうした身体全体を使って表現する時間というのは貴重でした!それをまたみんなでやると子どもに戻ったような楽しい遊びの時間がよみがえります。
青柳先生、田中先生、大人の遊び心をくすぐるアクティビティを考えてくださってありがとございました。授業コーディネータのオヤビンこと佐藤さんのコーディネート力にも脱帽でした。
(授業レポート:佐々木織恵)
(写真:江藤俊哉、片山朱美)
※ テアトル・エコー稽古場日誌 にも掲載していただきました。
ボランティアスタッフの私も参加させていただきましたが、結果的には多くの方々のアンケート感想にもあったとおり単純に「楽しかった!」体験になりました。
ワークショップは、演出家の青柳敦子さんが次々に提示するものがたりに俳優の田中英樹さん演ずる宇宙船の船長メイヤーとのやりとりもからめ、様々にチーム替えをしながら参加者同士で解釈を考え、さらにそれを即興で演じるという進行でした。青柳さんからのご説明のとおり「目標なし、台詞なし、人前でのコミュニケーションをただただ楽しむ」時間になりました。
参加者一人一人と田中さんに自由なアクションを加えた自己紹介とシブヤ大学名物30秒自己紹介でアイスブレイクしてからスタートです。
まず、青柳さんから今日のものがたりの最初の設定が提示されます。「はるか未来に、とあるミッションを帯びた宇宙旅行に40人の市民が志願する。そのミッションが成功するまでは、地球には帰ってこられない」この設定を受けて4つのチームに分かれて、「ミッションは何か?名前も付けて」「そのミッションにはどんなスペシャリストが必要かも考えて」とものがたりを参加者同士の話し合いから動かしていくことへタイムトライアルが始まります。
各チームの全く異なる紡ぎ出しには、青柳さんも驚きでした。
「ベイビープロジェクト、どのようにも時間軸を使える世界を見つける 赤ちゃんにも戻れる、ずっと運動会、ずっと昼休みも選べる 必要なスペシャリストは、物理学者、詩人」
「オナラ再生プロジェクト、温暖化の原因でもあるオナラが禁じられた地球から、無害にオナラができる方法を見つけ、快楽を取り戻す 必要なスペシャリストは 食材専門家 料理人」
「父を探すプロジェクト 地球環境を再生する神を探す旅 必要なスペシャリストは、修道女 神父」
「伝説の愛の箱探しプロジェクト 愛の種が入っている箱を探して持ち帰る 必要なスペシャリストは、面白い人 子ども」
続いてメイヤー船長が、同行する40人が何のスペシャリストなのかを参加者一人一人から表現してもらう出会いのセッションです。最初の論理的な回答から2巡目くらいには、瞬発力からの個性的な発想に変化していくことがはっきりしてきます。
一巡目「ひとの心読める・人を癒す・丈夫な体・詩人・料理人・息を止められる・食べて何か分かる・危険を回避する、など」
↓
二巡目「寝ない人・5センチ浮いている・無になれる・ざっくり何人か分かる・優しく撫でる人・まばたきしない見逃さない 、などなど」
次に最初の4チームで、「宇宙旅行に出発する搭乗員の最後の夜の過ごし方をパントマイムで表現して」との提示です。宴会で賑やかに、家族との別れをじっくりと、普段通りに、あらゆる生き物との別れをしっかりと などこちらも同じ発想にならないことに驚きでした。
旅立った宇宙船ですが、ある時アラームが鳴り響きます。謎の生命体が、目からビームを発射して船を溶かしています。さあ、この恐ろしい宇宙生命体を表現してみましょう。今度は、3チームに編成替えで新しいメンバーにも出会い、3つのユニークなパフォーマンスも交えた発表です。
なんとか危機を乗り越えることができた宇宙船ですが、故障した箇所があり、100%の安全が保障できない状況であることが分かりました。これからどうするか、ミッションを放棄しようか、それともこのまま旅を続けるか、メイヤー船長は、乗組員の意見を聞くことにします。難しい選択を敢えて迫ったところほぼ真っ二つに意見が分かれました。
青柳さんから何故そう判断したのかを補強する意見を2チームで話し合って、勇気ある代表者同士でディベートしてみることに。放棄派は、起こったことを伝えるために帰る、次の可能性に賭けるなど。続行派は、行けば新たな可能性がみえる、リスクは同じなどと決着がつきません。
メイヤー船長はどうするかまだ決められません。そんな中、一部の乗組員には、陰で「どうせ無理さ」などストレスから無気力になってしまう者も出てきました。さて、彼らはどうしてそのように思うのか今度は2人一組で話し合うことに。参加者同士の日常体験を共有する場にもなりました。
迷っているメイヤー船長に、乗組員が2列でトンネルを作り、近くを通る時に小声でアドバイスを送ります。今のままでいいよ、一緒に飲みましょう、お疲れ様、あきらめて、などなどトンネルをくぐる船長は、あちこちで喜んだり、ずっこけたりしながら最後に「結構ダメージも受けたが、アドバイスありがとう。ダメな船長だが、なんとか結論を出すよ」と。そして、「先遣隊をだし、可能性を探る。私も行くが、小型艇に乗る4名の志願者を募る」と宣言しました。しかし誰も手を上げません。かわいそうな船長を見かねた2人がなんとか同乗することにはなりましたが、ミッションを続けることになった3人はなかなか戻って来ないというところで提示されるものがたりはここまでで終わりです。
このワークショップの最後は、元の4チームに戻ってものがたりの最高のエンディングを考えて表現しました。
「3人が争う、2人の宇宙生命体に仲裁され、ミッションの解決策を授かり、地球に戻ってくる」
「時間も空間もない世界に入り、先遣隊が地球に戻って神とアダムとイブになり人類を再生する」
「別の星に着いて船を補修、3歳の子どもが伝説の箱を見つけ、先遣隊を助ける。箱には愛と勇気が詰まっていた」
「正月休みにマツコデラックスがテレビ番組のつまらなさから寝落ちする。その間先遣隊は戦ってミッションを解決する。マツコが自分のオナラで目覚めるほどの一睡の間の出来事だった」
2時間半と長丁場に休憩もないなかでも集中して、本当にあっという間でした。授業終了後もあちこちで感想を語りあい、講師の見送りを受けて皆さん授業前とは違ういい表情で帰られました。ただ楽しく遊ぶことは大人にも必要な時間だと感じられました。
(授業レポート:元木秀樹)
ーーーーーーーーーーーーー
こんにちは。シブヤ大学ボランティアスタッフの佐々木です。今回は7月15日に行われた「「演じる」を楽しむ~ものがたり遊びワークショップ~」のレポートです。
場所は恵比寿社会教育館の和室です。二部屋のふすまを開いて、総勢16人が十分に動き回れるスペースの中で、社会人1年目の女性から定年間近のシニアまで、年齢も性別も多様な方々が集まりました。授業が進行するにつれて、この参加者の皆さんの想像力と表現力にたまげることになります…(笑)。
始めにアイスブレイクを兼ねて、輪になって30秒自己紹介です。隣の方がストップウォッチを片手にタイムキーパーを務めます。16秒で終わる簡単な自己紹介をする人から30秒ギリギリ、ちょっとオーバーする人まで様々。
自己紹介が終わると、いよいよものがたりのストーリーが与えられます。今回のストーリーは、皆で宇宙船に乗って地球を脱出するというもので、参加者はみな、その宇宙船のメンバーだというのです。ちなみに先生の田中英樹さんが宇宙船の船長役を務めます。そこでまず、5人で1つチームを作り、4つのグループに分かれてプロジェクト名を考えるというワークをすることに。
このワークで出てきたプロジェクト名がかなりユニークです。1つ目の班は「おなら再生プロジェクト」。地球温暖化で人類はおならが禁止され、薬を飲んで我慢する日々…。そこで人類がおならをまたできるようになるための何かを探してくるのがミッション、という設定です。ほかに、「宇宙の父(神)を探しに行くプロジェクト」、「新しい時間軸を探しにいくプロジェクト」「伝説の愛の箱探しプロジェクト」と、どの班も面白そうな企画を次々打ち出してきます(笑)。
その後、青柳さんから、船長の田中さんにあなた自身は何のスペシャリストなのかアピールするようにという指示が出されます。また輪になって一人ずつ、我こそは宇宙船に必要なスペシャリストなのだとアピールしていきます。「10分息を止められるスペシャリスト」「神と対話できるスペシャリスト」「3センチ浮き続けられるスペシャリスト」「酸素を作れるスペシャリスト」などみんな必死で考えます。だんだん自己アピールに疲れてきてありのままの自分でいいんじゃねえ的な意見が出てきます。「大ウソつきのペテン師スペシャリスト」「怠け者スペシャリスト」「なんでもひっくり返すスペシャリスト」など…。個人的には「優しくなでるスペシャリスト」っていうのがいいなと思いました。船長の田中さんは戸惑いつつも「君こそ宇宙船に必要なスペシャリストだ!」と言って場を盛り上げてくれます。
休む間もなく次のワークの支持が青柳先生から。見事全員スペシャリストとして採用されたので、最後の夜を思い思いに過ごしてくださいと。それをパントマイムで表現するというものです。また5人くらいのチームに分かれ、最後の夜を表現します。先ほどのチームに戻りみんなで考えます。ディズニーランドのパレードを表現したものから、家族との涙ながらの別れを表現したものなど、言葉がない分、全身で表現していきます。ちなみに私は犬役を演じ、お手や遠吠えを表現した後、最後に主人公と遠い流れ星を眺めました。犬役を演じたのは人生初かも(笑)。
その後、宇宙船は謎の生命体に襲われ、ピンチに。今度は違うチーム構成で謎の生命体を表現します。チームワークでおどろおどろしさを表現するチームから、這う、白目をむくなど個人の異才が放たれるチームまで様々…。正直、迫りくる生命体がホント怖かったです涙。
宇宙船が破損してしまったので、チームは進むべきか否か多数決を取ることになります。驚くべきことに「いったん帰って次の可能性にかけるべきだ」という地球に帰る派と、「ここまで来たら帰れない、手ぶらで地球に帰れない」というミッションを続ける派に、意見は真っ二つに分かれることに…。その後、隣の人と二人で一つのチームを作り本音を話し合うと、船長への陰口がどんどん飛び出します。こんなことになるなんて聞いていないよ~、船長が頼りなさすぎるんじゃないか、等々。田中船長、ピンチ!
田中船長はみなの意見を聞く中で決心します。一人、小宇宙船に乗ってミッションを遂行すると。皆は、みなでミッションを続けてほしいと…。誰か私と一緒に来てくれますか…、というか細い問いかけにはじめ誰も名乗り出ず、船長は落ち込みます。そんな船長にみんなで声をかけるのですが、お世辞にも優しい意見はほとんどありませんでしたね~~~。田中船長、ダメ船長役を熱演されてました!その後無事に二人、船長との運命共同体が見つかり(ひとりは次期船長を虎視眈々と狙っている方でしたが)、3人で小型船に乗って飛び立っていかれました~~。
さてさて、このワークショップもついにフィナーレを迎えます。参加者はそれぞれの当初のチームに戻って、最後それぞれのミッションがどのような顛末を迎えたのかを考えます。神様を探しに行くプロジェクトは無事神様に会えたようです。愛の箱探しプロジェクトも無事愛の箱を探し出し、船長たちを拾って地球に帰還。おなら再生プロジェクトは最後おならをして夢から覚めた(宇宙船の冒険はすべて夢だった)というびっくりな結末。
大人になってしばらく使っていなかった感覚を思い出し、とても満足度の高い時間を過ごすことができました!最後に参加者の方とお話していたら、普段は全然違う仕事されているけれど、自分のうちに秘める表現欲求をフルに使ってみたかったという方もいらっしゃいました。SNSやPCなど、表現の手段が文字や数字になってしまっている現代だからこそ、こうした身体全体を使って表現する時間というのは貴重でした!それをまたみんなでやると子どもに戻ったような楽しい遊びの時間がよみがえります。
青柳先生、田中先生、大人の遊び心をくすぐるアクティビティを考えてくださってありがとございました。授業コーディネータのオヤビンこと佐藤さんのコーディネート力にも脱帽でした。
(授業レポート:佐々木織恵)
(写真:江藤俊哉、片山朱美)
※ テアトル・エコー稽古場日誌 にも掲載していただきました。