シブヤ大学

授業レポート

2023/5/25 UP

自分らしい生き方探求部「肩書きとわたし(私史)」

今回は、シブヤ大学には過去ゲストで登壇している吉田めぐみさん(グミさん)がコーディネーター、シブヤ大学学長の大澤悠季さんがゲストという、ちょっと珍しい授業です。グループワークを中心に、肩書きを通じた自分らしさについて考えていきます。

会場の恵比寿社会教育館の和室には、4人ずつのグループ席を3卓セッティングしました。来場した参加者からあいている席に座っていきます。
席には数枚の紙が用意されていました。はじめに使うのは名札のシート。今の肩書きと名前を書いておきます。

授業はまずグミさんが、授業をつくった経緯や肩書きについて悩んだことから話し始めました。肩書きと、そのしっくり度・もやもや度について、参加者に配られた記入用紙と同じフォーマットで説明します。
スライドに書かれたグミさんの自己紹介には、コミュニティデザイナー、ブランディングディレクター、コンテンツディレクター、プランナーといった肩書きがずらりと並んでいました。フリーランスとして活動するグミさんが現在手伝っている会社でいただいた名刺上に書かれた肩書きなどから抜粋したそうです。これらは間違いなくその企業の仕事をする上での肩書きではありますが、同時に自分を表す本質的な名前ではないと感じているそうです。
グミさんはフリーランスになる前、コワーキングスペースのコミュニティマネージャーとして働いていました。始めた頃はコミュニティマネージャーという職業自体が真新しく浸透していませんでしたが、世の中への認知が広がると同時に職業名だけが一人歩きしてしまい、もやもやし始めたそうです。仕事の領域が広いことやカタカナ職業によりコミュニティマネージャーに対する一人一人の定義が異なるため、期待値のずれを感じ、違和感を抱えていたそうです。
一方で、当時の自分を表す上でしっくりした肩書きは「ハンバーグのパン粉」。これは会社の名刺の裏に記載していたキャッチフレーズだそう。人と人とをつなげるイメージや、コミュニティをねって美味しくしていく様子がピッタリだなと思ったといいます。また、名刺交換の際に「これ、何?」と話題のきっかけにもなるため、自分の目指すコミュニティマネージャー像を伝えることができたといいます。
続く大澤さんの自己紹介では、シブヤ大学の「学長」という肩書きには、言葉の持つ様々なイメージが先行してしまうことでもやっとする場面があるという裏事情的なお話がありました(笑)たしかに学長というとえらい人というイメージで、風格ある男性を思い浮かべてしまうので、大澤さんとはかなり違いますね…。

二人の自己紹介トークを踏まえて、次は参加者が考えていくワークショップです。
横軸に年齢を、縦軸には肩書きのしっくり度(+100)・もやもや度(-100)をあらわした私史グラフを作り、どんなところがしっくり・もやもやするかを書き出していきます。
それをグループでシェアして、付箋に①しっくり度が高いときの共通点、②もやもや度が高いときの共通点、③名札に書いた今の肩書きに対してはどう感じているか、の3点をまとめます。
皆さん初対面同士ですが、ふだん関わらない仕事や趣味の話が飛び交って、とてもにぎやかになりました。話しながら誰が発表するかまで決めていきます。
発表では、1番目のグループから「しあわせに肩書きは関係ない」という強いフレーズが飛び出しました。また参加者のコバヤシさんからは、苗字がよくある名前だと「〇〇のコバヤシさん」と言わないとわからない、肩書きに頼るという話がありました。
2番目のグループでは「一児のパパ」という一生ものの肩書きにしっくりしている男性がいる一方、参加者最年少女性の肩書きは今しか名乗れない「ハタチの大学生」。本人はもやもやしているものの、貴重な肩書きに感嘆、羨望の声があがりました。
3番目のグループは4人が同世代で共通点が多かったそうで、共感しながらおだやかに話し合っていた様子でした。もやもや肩書きとして挙げられたものが、他人から見るとわかりやすいものもあるという指摘が出ていました。
どうやら、人によってイメージが違う職業名だと、先入観を持たれるもどかしさがあるようです。対して、自分の思う自分の印象が伝わりやすいのが「しっくり」肩書きなのかなと思いました。

休憩を挟んだあとは、自分の新しい肩書きを考える時間。
用意された最後のシートに、今までの肩書きと、その肩書きでは表現しきれていない自分の性格や思考、それから新しい肩書きを書いていきます。
肩書きにはキャッチコピーもつけます。グミさんなら[肩書きに悩んだ結果イベントまでしちゃった]フリーランスのグミ、というように…。大喜利のような例に笑いがおこったあと、みんな真剣に黙々と書き始めました。
そして、いよいよ新しい肩書きを使って、順番に自己紹介タイムです。
一人ずつの発表なんて緊張するものですが、そこは様々なコミュニティやコンテンツを応援してきたグミさんのコーディネート手腕が発揮されていました。フォーマットには肩書きを書くだけでなく、合いの手を入れるところまで指示してあるのです!
フォーマットに沿って自己紹介を読み上げていくと、指示にしたがって参加者がノリよく「お~!」「なるほど!」「いいねっ!」と囃し立てます。
そして新しい肩書きが発表されると、一同拍手!!
こういうポジティブな反応は、わかっていても嬉しいものです。発表者は合いの手につい笑ってしまい、おかげで緊張がほぐれて、とても盛り上がりました。

今回は「肩書き」といっても堅苦しくない和気あいあいとした雰囲気で、終始話し合いが活発だったように感じます。授業後アンケートでも「楽しかった」「雰囲気が温かくてよかった」という声が多く寄せられていました。
グループワーク形式の授業にはシブヤ大学では初めて参加したのですが、自分一人では気づかなかった意見が次々に出てきて、いろいろな立場からのとらえ方を知ることができました。
自分を見つめ直し、自分をどう伝えるか、考えて実践する楽しい授業となりました。

(レポート:武田 環、写真:Sachiyo Akizawa)