シブヤ大学

授業レポート

2021/4/2 UP

【導入編】超参加型読書会アクティブ・ブック・ダイアローグで読む『人新世の「資本論」』

3月13日日曜日、オンラインにて「超参加型読書会アクティブ・ブック・ダイアローグで読む『人新世の「資本論」』【導入編】」が開催されました。当日の様子をレポート形式でお伝えします。

講師としてお越し頂いたのは、NPO法人場とつながりラボhome’s viの理事として企業や組織のファシリテーションを行う荒川崇志(あらかわたかし)さん。荒川先生は、今回の授業のテーマであり、近年新しい読書法として注目されている「アクティブ・ブック・ダイアローグ(以下、ABD)」の伝道師として活動されています。

ABDは、「一冊の本を複数人で分担して読み、対話を通じて相互理解を育む」読書法です。
それぞれ振り分けられた担当の箇所を他の人が分かるように要約・説明し、その後リレー形式で読んだ箇所をお互いに教え合います。対話を重視したプロセスの中で、参加者同士がそれぞれ気づきを与えあうことができるのが特徴です。

今回の授業で扱ったのは、昨年の9月に発売された経済思想家・斎藤幸平さんのベストセラー『人新世の「資本論」』(集英社新書)。
気候危機の根本的な原因として資本主義を痛烈に批判する本書は、発売当初から各主要メディアで取り上げられています。タイトルにある「人新世(ひとしんせい)」とは、「人類の経済活動の痕跡が、地球の表面を覆いつくした年代」を意味します。人類が生み出した産物が地球環境を侵し、その結果人間の力では制御できない大きな問題が生まれている今の時代。
斎藤氏は、本書で、そのような時代に個人レベルで行われる温暖化対策の消費活動も、国連が掲げるSDGsも、「現実の危機から目を背けることを許す「免罪符」でしかない」と痛烈に指摘しています。

今回の授業シリーズでは、【導入編】と【実践編】に分けて本書を読み解き、私たちがいま本当に向き合わなければならない現実は何なのか、より良い社会を作り出すためにはどうしたらいいのか、対話を通して考えていきます。

授業当日は、雨上がりの読書日和。
30代から80代まで、男女問わず幅広い年齢層の方々が集いました。
「アクティブ・ブック・ダイアローグを一度体験してみたかった」「『人新世の「資本論」』が気になっていた」など、参加の動機や授業開始時の気分を含め、軽い自己紹介から授業はスタート。開始当初は、「緊張する」「難しそう」といった声も聞こえていましたが、荒川先生の和やかな雰囲気に、皆さん「ホッとしました」と笑顔がチラリ。

ABDと授業の流れに関する説明を終え、いよいよ実践です。
当日は、参加者をそれぞれ5人グループの3チームに分け、同書の「はじめに」を各段落担当ごとに要約・簡単な発表を行いました。「資本主義」や「マルクス」など、やや難解な内容を含む箇所もあり、皆さん真剣に読解、要約メモに励んでいました。それぞれの作業が終わると、次はお互いが読んだ箇所を教え合うリレープレゼンに。あっという間の15分間でした。

グループごとの作業を終え、授業は終盤戦へ。
それぞれが読んだ箇所やお互いの発表を踏まえて、「今後どのようなことを話してみたいか」「どんなことが気になったか」を共有する対話の時間です。
「経済成長も大事だけど、環境破壊も止めないといけない。どちらか一方しか選ぶことはできないのか」「地球規模で起こっている気候変動のことは、一人ひとりが自分ごととして考え行動に移していかなければ何も変わらない」など、皆さん普段の読書では味わえない”15分間”を堪能した様子が伺える議論が繰り広げられました。

今回の授業では、【導入編】としてABDを体験しました。
授業終了後は、「とても新鮮な体験でした!」「また参加したいです」との感想を頂きました。
今回はオンラインでの開催でしたが、次回の【実践編】は対面授業を予定しています。

ABDに興味がある方、『人新世の「資本論」』を読んでみたい! という方、是非、参加お待ちしております!

(授業レポート:柴崎真直)