シブヤ大学

授業レポート

2020/11/30 UP

【オンライン開催】つながる性教育

~きょうからはじめよう~

【オンライン開催】つながる性教育~きょうからはじめよう~

いま、学校を卒業した大人たちの間でも“性教育”が流行っています。以前から、日本は「性教育後進国・性産業先進国」といわれ学校や家で触れる情報と、ネットや街中に溢れるコンテンツとのギャップに違和感や危機感をよく抱きます。

今回の授業は、助産師として現場に携わりながら学校現場等で出張授業を行っている、ざいかわゆみこさんを先生にお招きし、日本の学校現場でいまどんな性教育がなされているのかを知り、そこから起きている日本の課題や外国での状況に目を向けた上で、性(=心+生!)について「考え、周りの人と話をする」きっかけをもつ目的で行われました!

【先生のご紹介】

ざいかわ ゆみこ(助産師)
相模原市南区でSUNFLOWER助産院を開業する助産師。小中高校に性教育の授業を行いつつ、保護者向けに家庭で始める性教育の講演で多数登壇している。2男2女の子育て真っ最中。

【授業の様子】
(1)ワークショップ①:性教育へのイメージ
グループに分かれて、『性教育に対するイメージ』を自己紹介と共に発表しました。

『性教育に触れたのはいつ?どこで?どんな気持ちになった?』

多くが小学校4~6年生の間に学校で男女分かれて話を聞いた思い出が初めての性教育の思い出のようでした。イメージとしては、恥ずかしい、隠したいイメージが多かったです。

(2)先生の自己紹介
次に先生の自己紹介として、助産師の仕事や普段、小中高生へ「いのちの授業」という性教育講演会をされている様子をご紹介いただきました。

(3)講義:現在の日本の性教育
日本の学校での性教育は、
4年生:保健体育 思春期にあらわれる変化
5年生:理科 生命誕生
宿泊研修前に月経について
中学校:年間3時間、3年間で10時間に満たない
という状況です。ちなみに、フィンランドでは年に17時間、隣国韓国は年に10時間だそうです。小中学校の学習指導要領は『はどめ規定』で、妊娠の経過に関しては取り扱わないそうです。(SEX,性交渉、避妊、コンドームという単語の使用に制限)
そのため、ざいかわ先生も講演の際は非常に気を遣う場面となっているそうです。
 また、ユネスコの年齢別学習目標と主な内容では、
5~8歳で赤ちゃんがどこから来るのかを説明する。
9~12歳でどのように妊娠するのか、避けられるのかを説明する。避妊方法を確認する。
12~15歳で妊娠の兆候、胎児の発達と分娩の段階を説明する。
15~18歳で生殖、性的機能、性的欲求の違いを区別する。
となっています。
なぜ日本はそれほど性教育後進国なのか。日本は妊娠の過程に関して根強いタブー感がある国で、背景には好奇心を刺激して行動を起こさせてしまったらどうするんだ!という意見や、卑猥な話、下品な話というイメージ、さらには裁判を起こされた学校もあることから学校現場では慎重に扱われているそうです。
 しかし、性産業に関しては先進国であり(アダルトサイトなど)、矛盾した背景、環境から歪んだ認識につながるリスクが高い状況です。性にはたくさんの側面がありますが、性交の部分にフォーカスされやすいそうです。
 性教育の根幹は“自己決定”と“自己肯定”であり、性教育=人権教育です。今回は性教育の根幹、自己決定、自己肯定の部分に焦点をあてます。

自己決定
・例えば、産む・産まない、何人産む、いつ産むなど・・・。知っているようで知らないいのちの仕組みのこと。
・例えば、日本では安全日などの都市伝説を信じる人も多いですがそれも幻想です。日本では避妊方法として8割の人がコンドームと答えますが、それは男性本位となりやすく、避妊率は低いため、他の国ではピルが第一選択となる国が多いそうです。
・例えば、性感染症から自分とパートナーを守ること。近年、クラミジア感染が増えているそうです。日本の16歳女子にクラミジア感染しているかを調査した結果は、17.3%で、他国では1~3%程度だったそうです。中には無症状の子もたくさんいます。こうして気づかないうちに不妊になってしまっていることもあるそうです。感染したら自業自得感が強い国が日本です。ざいかわ先生は非常に危険な雰囲気であるとおっしゃっていました。どれだけ注意していてもかかる感染症もあるそうです。自分の体を守るためにも正しい知識を身につけたいですね。
・例えば、性の情報。興味があって見に行く時代から様々な情報が降り注ぐ時代になっています。アダルトサイトはファンタジーの世界という認識を持ってほしいそうです。

ざいかわ先生は色々な年代の人に“NO、GO,TELL”を伝えているそうです。NOと言ってもいい、怖い・嫌だと感じたらGO、逃げていい、誰かに話てもいいということです。性被害は6割の人が口に出せないといわれています。警察に行くことができるのはたったの2割だそうです。NO,GOを言えなかった自分を責めてしまう人もいます。また、NO,GOがなかったために悪意がなく加害者となってしまうパターンもあるそうです。とにかく、NO,GO,TELLです!!最近先生がどこの学校に行っても学校の先生から話題に挙げられるのはデートDVだそうです。痴漢にも言えることだそうですが、NO,GO、TELLのようにコミュニケーションをしっかりとって自己決定をしてほしいそうです。

自己肯定
・例えば性器について、いのちをつなぐプライベートゾーンであるはずなのに、恥ずかしいところだから隠しなさいということがあります。それよりも大事なところを守りましょうと伝えていく。保護者からの一番多い相談は子どもの性器いじりだそうです。子どものそうした場面に、やめなさい、汚いなど否定的な言葉で注意すると否定的に受け止めてしまうそうです。また、それらを清潔に保つ方法も知られていない現状があります。
・女性の月経へのイメージも、ネガティブな言葉が多いCMのイメージとなっていたり、男の子の性を女の子が習わなかったり、そうしたお互いの無知によるハラスメントも起こります。

先生は、これらのような例も含めて子どもを自己肯定させるためにも、産んでやったという感謝の押し付けではなく、あなた自身がこんなに生きる力を発揮して誕生したんだという伝え方をしてほしいそうです。

(4)ワークショップ②:こんなとき、あなたならどうする?
最初にワークショップを行ったグループに分かれて、4つのお題についてフリーでロールプレイや意見交換を行いました。

『近所で、下半身を露出する人が出没する。小学校1年生のわが子にどう説明する?』
『恋人ができたといっていた友人が、「禁止されているから」と会ってくれなくなった。DVではないか、どう確認する?』

このようなケース質問に対して、1つのお題に絞ってロールプレイのように具体的な策を話し合ったグループもあれば、それぞれが感じた興味関心を意見交換したグループもありました。性についてネガティブな話が多い中でいかにポジティブに話すかというところが難しかったです。

(5)先生から
近年の調査ではLGBTの方の割合は7.6%と、左利きやAB型の人と同じくらい存在するそうです。2年ほど前からは学校で自己申告する子どもも増えているそうです。ざいかわ先生はそうした状況に、学校の先生方が理解しなければいけないという姿勢になっていることが気になるそうです。特別視するのではなく、みんながみんな多様でいいという考え方、誰もが『多様な性』の1人という“SOGle”という考え方があります。
性という文字は心と生でなりたっています。自分という存在を受け入れて、愛することができるように導くことが大切だそうです。私にとってあなたはとても大切な存在ということを伝えてくれる人が1人でもいるといい。とおっしゃっていました。さらに、気軽に婦人科に相談してほしいそうです。どうしても怖いところ、緊張するところ、恥ずかしいところというイメージがありますが小さな悩みや相談でも力になりたいので是非婦人科に来てください。というメッセージもありました。

多様なみんなが自己決定と自己肯定ができる社会に、人になってほしいと考えさせられる授業でした。