授業レポート
2020/3/3 UP
都市型工房と考える小さな一歩
本日の授業は、一人でも多くの「つくりたい」に応える都市型工房を目指す「光伸プランニング」さんと、光伸プランニングの工房で行なわれました。
第1部では、ABCD4つのグループごとに自己紹介をして、事前課題の共有が行われました。
事前課題は、「日々何とかしたいなと思っているモヤモヤ」。これを、個人・地域・社会レベルで考えてきて、それぞれ紙に書いて発表しました。
「京浜東北線止まりすぎ!」(個人)
「YouTube中毒を何とかしたい」(個人)
「地元のお祭りに人が少ない」(地域)
「キャッシュレス化が進まない」(地域)
「海のゴミ、食品ロス」(社会)
「70歳まで働くなんて思わなかった」(社会)
などなど、様々なモヤモヤが出ました。
次に、この意見をグループごとにまとめて、解決策や「こんな場(機会)があったらいいな」という提案を考えました。
Bグループでは、「物を減らせない」という個人レベルのモヤモヤに対し、「渋谷区には服の回収BOXがある」という具体的な解決策が出ていました。また、年齢と働き方のギャップのモヤモヤには、「大人のインターンシップを行う」といった新しい提案が出ました。
Cグループでは、ゴミに関してのモヤモヤがたくさん出ました。提案や解決策として、リサイクル回収先がリサイクルの先を伝えることでゴミを考えるモチベ―ションとする案や、「家庭ゴミを肥料にできる場所をつくる」、「フードロスを持ち帰れる環境をつくる」といった案も出ました。
Dグループでは、「高齢の母のような情報弱者はどうしたら快適に過ごせるか」、「情報過多で何を信じていいかわからない」といった情報に関する意見が出ました。それに対し、「幼いうちからメディアリテラシー教育を行うこと」などが提案として挙がっていました。
全体的には「地域コミュニティ」「働き方」「情報」「ゴミ」「教育」に関するテーマが多く挙げられていた印象でした。
そして、授業にはトートバッグの専門ブランド「ルートート」の神谷社長も参加してくださり、少しお話をしていただきました。
神谷さんは、モノづくりをする以上は廃棄が出るとしたうえで、リサイクル・再利用の技術を利用した商品を紹介してくださいました。10%、20%でもその意識でモノづくりをしていきたいとおっしゃっていました。さらに、既存のものを何らかの価値があるものに変えていくことは個人的にも好きなので、本日の授業はワクワクしているとおっしゃっていました。
第2部では、光伸プランニングの原さん、飯塚さんからお話がありました。
まず、光伸プランニングの業務内容の説明がありました。
光伸プランニングは1人でも多くの「つくりたい」に応える都市型工房。企業だけではなく、デザイナーや美大生からの依頼もあるそうです。
今までもお仕事をいくつか紹介していただき、工房内見学も行いました。アクリル板の作り方の説明や3Dプリンターが実際に動いている様子等をみることができました。見学中には生徒さんから「この機械は大体いくらしますか?」、「アクリル板の厚さはどれくらいまで切れるんですか?」といった普段なかなか聞くことができない質問も出ました。工房内には誰もが見たことのある看板やディスプレイ、広告のポスターがたくさんありました。
次に、光伸プランニングの日々のモヤモヤについてのお話がありました。光伸プランニングさんでは、廃棄が出る場面が2パターンあるそうです。
1つ目は、モノを作る際に出る廃材(余り)。
2つ目は、作ったものを使い終わったときにそれ自体が廃材になる場合です。
昨年末にこれらの大量の廃材を捨てる際のお写真と共に説明してくださいました。「だいぶ衝撃的だと思います。」という前置きとともに、4tトラックに廃材が積まれている様子や、廃材であふれた工房内の様子が映し出されました。アクリル、スチレンボード等が多く出る廃材として実物と共に用途等も紹介されました。
さらに衝撃的だったのが、「ゴミを作っているような気持ちになる」という社員の方の声です。また、光伸プランニングさんの廃材問題には3つの課題がありました。
・ブランド名やロゴが入っていると再利用ができない
・捨てるのはもったいないが、保管しておく場所がない
・必要なところに届けたいが、運ぶのにコストがかかる
これらを踏まえて、光伸プランニングさんのモヤモヤを解決する策をグループごとに話し合いました。グループワーク中には原さん、飯塚さんに周っていただきながら、第1部よりも白熱したディスカッションが行われていたのが印象的でした。
各グループから出た廃材活用のアイディア
Aグループ:モノを作ったときの廃材はハンドメイドをする人にとっては宝物!毎週第3土曜日は廃材がもらえるイベントの企画を行う。使った後の廃材は、企業の人に再プロダクトを提案して元からそのようにデザインを行う。アートイベントと協働する。
Bグループ:学生に工房まで取りに来てもらうことによって運ぶコストを解決し、そのような取り組みを行っていることを情報発信する。ルートートとリプロダクトを行う。廃材を使って大人のインターンを行う。使用後の再利用の許可を企業に取る。再利用を見越したデザインを心掛ける。
Cグループ:そもそも捨てないモノをつくる。ミュージアムで展示する。廃材を使ったデザインコンペを行う。筒でベンチを作るワークショップの開催。工房内でバザーを行う。学校の文化祭へ提供する。
Dグループ:国連大マルシェに参加する(素材フリマと外注MD化)。同業他社と連携して廃材MAP化、そしてそれをサイトでPRする。ハンドメイドアプリを利用する。仮設住宅でのカスタマイズに使ってもらう。
原さんも飯塚さんも発表を聞きながら真剣にメモをとられていて、先生と生徒、企業と個人が一緒に学びあっている光景が印象的でした。
最後に、ゲストのお2人から感想をいただきました。
原さん「廃材は日々接しているものだから当たり前になっていたが、廃材が出る過程を知らないクライアントも多い。それをどう認知するのかを考えたい。イベントの定期開催や、廃材MAPづくりなどの意見は前向きにクリアできるのではないか。想いをかたちにする工房なので、きちんとかたちにしていきたい。」
飯塚さん「第1部とつながる部分があり、問題を可視化することが解決への近道だとわかった。どんな人が廃材を欲しているのかがわかるとより動きやすくなると思う。まずは廃材の存在を知ってもらい、そこに楽しい要素を入れるながら認知を広めることが大事だとわかった。」
今まで、企業は作る側、個人は消費する側という違う立場という認識でしたが、授業を通して、もっとお互い関わりあっていけることがわかりました。モノづくりに限らず、食べ物やファッションなど、何でも揃う渋谷の街だからこそ、色々な角度で一緒に考えていけるのではないでしょうか。
4月以降も光伸プランニングさんと授業を行う予定なので、ぜひ参加してください!
(光伸プランニングさんも素敵なレポートを作成してくださいました!→こちらからどうぞ)
(授業レポート:中村彩恵 / 写真:鈴木夏奈)
第1部では、ABCD4つのグループごとに自己紹介をして、事前課題の共有が行われました。
事前課題は、「日々何とかしたいなと思っているモヤモヤ」。これを、個人・地域・社会レベルで考えてきて、それぞれ紙に書いて発表しました。
「京浜東北線止まりすぎ!」(個人)
「YouTube中毒を何とかしたい」(個人)
「地元のお祭りに人が少ない」(地域)
「キャッシュレス化が進まない」(地域)
「海のゴミ、食品ロス」(社会)
「70歳まで働くなんて思わなかった」(社会)
などなど、様々なモヤモヤが出ました。
次に、この意見をグループごとにまとめて、解決策や「こんな場(機会)があったらいいな」という提案を考えました。
Bグループでは、「物を減らせない」という個人レベルのモヤモヤに対し、「渋谷区には服の回収BOXがある」という具体的な解決策が出ていました。また、年齢と働き方のギャップのモヤモヤには、「大人のインターンシップを行う」といった新しい提案が出ました。
Cグループでは、ゴミに関してのモヤモヤがたくさん出ました。提案や解決策として、リサイクル回収先がリサイクルの先を伝えることでゴミを考えるモチベ―ションとする案や、「家庭ゴミを肥料にできる場所をつくる」、「フードロスを持ち帰れる環境をつくる」といった案も出ました。
Dグループでは、「高齢の母のような情報弱者はどうしたら快適に過ごせるか」、「情報過多で何を信じていいかわからない」といった情報に関する意見が出ました。それに対し、「幼いうちからメディアリテラシー教育を行うこと」などが提案として挙がっていました。
全体的には「地域コミュニティ」「働き方」「情報」「ゴミ」「教育」に関するテーマが多く挙げられていた印象でした。
そして、授業にはトートバッグの専門ブランド「ルートート」の神谷社長も参加してくださり、少しお話をしていただきました。
神谷さんは、モノづくりをする以上は廃棄が出るとしたうえで、リサイクル・再利用の技術を利用した商品を紹介してくださいました。10%、20%でもその意識でモノづくりをしていきたいとおっしゃっていました。さらに、既存のものを何らかの価値があるものに変えていくことは個人的にも好きなので、本日の授業はワクワクしているとおっしゃっていました。
第2部では、光伸プランニングの原さん、飯塚さんからお話がありました。
まず、光伸プランニングの業務内容の説明がありました。
光伸プランニングは1人でも多くの「つくりたい」に応える都市型工房。企業だけではなく、デザイナーや美大生からの依頼もあるそうです。
今までもお仕事をいくつか紹介していただき、工房内見学も行いました。アクリル板の作り方の説明や3Dプリンターが実際に動いている様子等をみることができました。見学中には生徒さんから「この機械は大体いくらしますか?」、「アクリル板の厚さはどれくらいまで切れるんですか?」といった普段なかなか聞くことができない質問も出ました。工房内には誰もが見たことのある看板やディスプレイ、広告のポスターがたくさんありました。
次に、光伸プランニングの日々のモヤモヤについてのお話がありました。光伸プランニングさんでは、廃棄が出る場面が2パターンあるそうです。
1つ目は、モノを作る際に出る廃材(余り)。
2つ目は、作ったものを使い終わったときにそれ自体が廃材になる場合です。
昨年末にこれらの大量の廃材を捨てる際のお写真と共に説明してくださいました。「だいぶ衝撃的だと思います。」という前置きとともに、4tトラックに廃材が積まれている様子や、廃材であふれた工房内の様子が映し出されました。アクリル、スチレンボード等が多く出る廃材として実物と共に用途等も紹介されました。
さらに衝撃的だったのが、「ゴミを作っているような気持ちになる」という社員の方の声です。また、光伸プランニングさんの廃材問題には3つの課題がありました。
・ブランド名やロゴが入っていると再利用ができない
・捨てるのはもったいないが、保管しておく場所がない
・必要なところに届けたいが、運ぶのにコストがかかる
これらを踏まえて、光伸プランニングさんのモヤモヤを解決する策をグループごとに話し合いました。グループワーク中には原さん、飯塚さんに周っていただきながら、第1部よりも白熱したディスカッションが行われていたのが印象的でした。
各グループから出た廃材活用のアイディア
Aグループ:モノを作ったときの廃材はハンドメイドをする人にとっては宝物!毎週第3土曜日は廃材がもらえるイベントの企画を行う。使った後の廃材は、企業の人に再プロダクトを提案して元からそのようにデザインを行う。アートイベントと協働する。
Bグループ:学生に工房まで取りに来てもらうことによって運ぶコストを解決し、そのような取り組みを行っていることを情報発信する。ルートートとリプロダクトを行う。廃材を使って大人のインターンを行う。使用後の再利用の許可を企業に取る。再利用を見越したデザインを心掛ける。
Cグループ:そもそも捨てないモノをつくる。ミュージアムで展示する。廃材を使ったデザインコンペを行う。筒でベンチを作るワークショップの開催。工房内でバザーを行う。学校の文化祭へ提供する。
Dグループ:国連大マルシェに参加する(素材フリマと外注MD化)。同業他社と連携して廃材MAP化、そしてそれをサイトでPRする。ハンドメイドアプリを利用する。仮設住宅でのカスタマイズに使ってもらう。
原さんも飯塚さんも発表を聞きながら真剣にメモをとられていて、先生と生徒、企業と個人が一緒に学びあっている光景が印象的でした。
最後に、ゲストのお2人から感想をいただきました。
原さん「廃材は日々接しているものだから当たり前になっていたが、廃材が出る過程を知らないクライアントも多い。それをどう認知するのかを考えたい。イベントの定期開催や、廃材MAPづくりなどの意見は前向きにクリアできるのではないか。想いをかたちにする工房なので、きちんとかたちにしていきたい。」
飯塚さん「第1部とつながる部分があり、問題を可視化することが解決への近道だとわかった。どんな人が廃材を欲しているのかがわかるとより動きやすくなると思う。まずは廃材の存在を知ってもらい、そこに楽しい要素を入れるながら認知を広めることが大事だとわかった。」
今まで、企業は作る側、個人は消費する側という違う立場という認識でしたが、授業を通して、もっとお互い関わりあっていけることがわかりました。モノづくりに限らず、食べ物やファッションなど、何でも揃う渋谷の街だからこそ、色々な角度で一緒に考えていけるのではないでしょうか。
4月以降も光伸プランニングさんと授業を行う予定なので、ぜひ参加してください!
(光伸プランニングさんも素敵なレポートを作成してくださいました!→こちらからどうぞ)
(授業レポート:中村彩恵 / 写真:鈴木夏奈)