シブヤ大学

授業レポート

2019/12/26 UP

「居心地」ってなんだろう?
~共に考える私とみんなのことば~

木のぬくもりのあるカフェに行った時に感じる「居心地」の良さ、
初対面の人が多い場で発表をする時の「居心地の悪さ、
そんな誰もが当たり前に使っている「居心地」を誰もがしっくりくる言葉に落とし込んでみるのが今回の授業です。


講師は佐野香織先生。早稲田大学で日本語研究の日本語教育分野の講師をされている方で、
古民家の再生や活用を通して空間と学びを考える空間研究所/那須コモンズの主催もされています。

授業の冒頭、佐野先生のお話が始まった頃は、全体的に緊張感がある雰囲気でした。
参加者は場づくりに興味がある人、コミュニティに興味がある人、ことばに興味がある人など様々で、
年代・性別もばらばら。
何を学ぶことができるのか、探り探りの様子。

まずは自己紹介の時間です。各々が今日の授業に来た問題意識について紹介しあいます。
私もグループに参加しましたが、サードプレイスに興味がある人、レストランの運営を行っている人など様々。
メモをしたり、頷いたり、驚いたり、少しずつ居心地がよくなってきた気がします。

その後に先生から空間研究所/那須コモンズのご紹介。
個人的には、はじめは空間と言われてもちょっと抽象的でイメージがわきづらいな、と思っていました。
その中で、空間✕におい、空間✕音と言ったテーマでのワークショップをされている話が出てくるなど、
少しずつ具体化されつつ、今回の授業のテーマにつながるヒントにもなっていたような気がします。
「体験に基づいてしゃべろう!」「聴くことが大事!」と注意事項を聞きつつ、
なんとなくイメージがわいてきたところで、グループワーク開始です。

まずは「イゴコチ」の事例についてみんなが付箋に書き出す時間。
自然の中での居心地の良さ、人とのコミュニケーションの中での居心地の悪さなど、
様々な角度から意見が出てきます。
私の班の中で出た意見で特に面白かったものを紹介します。
「この教室に入って、授業が始まるのを待って、自己紹介カードを書く時間が居心地悪かった。
話し始めれば楽なんだけど。」
「分かる!」
と私も含めて全員が同意したと同時に、スタッフの私は少し反省していました、、
ついでにほかの班のアイデアも紹介しますと、「銭湯は居心地がいい」
「バスに自分しか乗っていない時は心地が悪い」
と言うエピソードには、みんなが大きく頷いていました。
「イゴコチ」事例について共有し終わった後は、それらのグルーピングを行い、最後に誰もが納得できる定義に言語化をする作業です。
私たちの班は、自然や昔ながらの町並みなど、「不変的なもの」であることがポイントなのかな、
と思いつつも、たとえば友人といる時の居心地の良さは不変的とはちょっとイメージが違うな、と試行錯誤。
「イゴコチ」には2パターンあるのでは?という議論に移っていきました。
どこの班も悩んでいましたが、面白いのはどの班でもみんなが発言していることです。
「イゴコチ」は誰でもイメージがわいて、普段から使っているワードだからこそ、誰もが議論できる。
一方、みんなの思うシチュエーションがずれていて、そのイメージを合わせるのがとても難しい。

最後に、各班で結論づけた定義を発表する時間です。
構成する単語は大きく変わりませんでした。
「空間」「時間」「安心感」「五感」「感覚」
など。これらをどのように紡いでいくかによって、納得感に差異が出ます。

発表のスタイルは少し変わっています。
①自分たちで考えた「イゴコチ」
の定義を発表
②その理由について説明
③再度、自分たちで考えた「イゴコチ」の定義を発表

最初(①)は「ん??」と言うリアクションがある場合でも、最後(③)に発表する時には、
参加者みんなが「ほぉ-!!」というリアクションをしてくれます。


授業を通して、居心地の良さが、教室の中にはできあがっていました。
6つの班がありましたが、その中で、授業を通して作り上げた状況を一番素直に現した「イゴコチ」の定義があったので、紹介します。
「イゴコチ」とは自分と他者の存在を認め合うことである。

(授業レポート:金子健一郎 / 写真:兵藤まり)