シブヤ大学

授業レポート

2007/10/10 UP

夏休みの日記

青く広い空。蝉の元気な声。夏の草木独特の心地よい匂い。田んぼ用水路に置かれたスイカから伝わってくるひんやりとした雰囲気。講師である白石さんをはじめ、里美発見団と遊学の方たちの笑顔に迎えられて3時間揺られたバスを降り、土の地面の感触を味わうと「田舎に来たんだなあ」という実感にやんわり包まれる。

スタッフを含め参加者総勢約40名。もちろん知らない人がほとんどだったけれど、バスの中で行った「他己紹介」のおかげですっかり壁は無くなっていたみたい。腹が減っては作業はできぬ、ということでまず行った流しうどんの時には、流れるスピードが案外速くてびっくりしたのもあったのか、みんなのキャッキャッとはしゃいだ声で溢れていた。

食後休憩のあと、6つのグループに分かれて「イナカの日常」を体験する。山に登って薪を取ったり、トマトやきゅうりを収穫し、お蕎麦やお豆腐・郷土料理を作る。そうそう、きちんとエコですから、宿泊する家のすぐ後ろに生い茂る竹を切って、お箸やコップ、お皿も作ったり。

50人分の食器を用意するのに額に汗かきながら、中々切れてくれない竹と格闘した結果手にマメを作って、お豆腐を作る環境があまりにも暑くて30度以上あるはずの外に涼みに出て、これでもかこれでもかっというくらいひたすら蕎麦粉を練ったりして、結構な労働のはずなのに何故か楽しい。笑顔が消えない。

驚いたことも沢山。みょうがは地面に埋まっているのを掘り出すこととか、生のナスはリンゴみたいに甘い、とか、薪を取りに入った山は背の高い木々に囲まれて真夏日が嘘のようにひんやりしていたとか。

一番嬉しかったのは人の温かさ。講師の里美発見団の方たちは先生と言うよりかは、ずっと前から知っていた近所のおじちゃんおばちゃんという感じ。しわくちゃの笑顔はとっても近寄りやすかった。作業に四苦八苦しているのを見て、「ほれ、かしてみい」と言わんばかりに僕たちの何倍もの速さで作業をした後で、隣にどっかり座って丁寧に教えてくれる。不器用だ、生意気だ、なんて言われたけど、愛ですよね、愛。僕の浴衣の帯の結びがあまりにもだらしないのでにんまりしながら結び直してくれたりもして。う、ちょ、ちょっとキツ過ぎで…す…。時々放つわかりにくい洒落も可愛い。

なんかヌメヌメする温泉に入った後は涼しくなってきたお外でご飯。各グループがどれだけ作業を楽しんだか、というプレゼンの後、参加者の「合作」に舌鼓を打つ。美味しい。お肉なんて要らないね。このときだけでなく、里美で食べた物の美味しいこと美味しいこと。ピーマンの炒め物、キノコのてんぷら、産みたて卵、巻き寿司などなど。当たり前だけど東京で食べるものとは比べられないほど。んー、思い出すだけでも幸せ。

嬉しいハプニングも。参加者の中に針灸師さんがいたのですが、急遽、針を使った治療の余興、疲れが取れるツボの簡単なレクチャーがあって、「誰でも講師になれるというシブ大の精神が良く出ているな」と思った瞬間でした。皆さん、「手三里」ですよ。

夜は男女別の家で就寝。女子のほうは仕事のこととか、結構まじめなことを話していたみたい。男子はもう、2時くらいまで、ここでは書けないような内容で盛り上がる。仕事も、この企画に参加した理由もバラバラなのに中学校の修学旅行みたいな空気だった。でもしっかり電気をつけている間は障子を閉めないと。おかげで「寝ている間に何かいろいろな虫に這われた」という男子多数。

二日目はさらにゆっくり。

竹墨で風鈴を作ったり、野草や花を竹の容器で生けたり、温泉でまったりしたり。20畳はあるたたみ部屋のど真ん中で、二つ折りにした座布団を枕にしての昼寝は気持ちよかった。宿泊した家は築100年以上の古民家だったのだが、縁側がすっごく立派で、見事な柱にもたれながらの読書。ふと外を見ると、見えるのは緑の田んぼと、青い空と、隣家の瓦屋根、そして庭の日陰でお茶をしながら駄弁るおじちゃん、おばちゃん、そして参加者の皆。気分が良くならないわけがない。

時計や携帯電話を見ることの無かったゆっくりな二日間の夏休み。参加者の一部は真っ黒、もしくは真っ赤に焼け、聞かずとも楽しかったんだろうな、ってわかる位の笑顔でいっぱい。

里美のお父さんお母さん、またひょっこり行きますね。

(ボランティアスタッフ 望月崇)

【参加者インタビュー】
1.小笠原健二さん(男性)
「しばらく野外で遊んでいなかったので、そういう機会を求めての参加でした。普段カップラーメンが多いせいもあって、ご飯がとても美味しかったですし、十数年ぶりにできた手のマメが嬉しかったです。」

2.手塚幸忠さん(男性)
「豆腐作りで味わった豆乳がとても美味しくてびっくりしました。もうコンビニで売っている物が飲めなくなる位。同業者としか最近話していなかったので、いろいろな方たちと触れ合えたのも良かったです。」

3.田中舞さん(女性)
「スタッフと参加者の隔たりが無く、皆で一緒に楽しめたのが良かったです。友達に誘われての参加で来る前は古民家をあまりイメージできなかったのですが、クーラーが無く不便なはずなのに、暑さを感じさせない昔ならではの知恵や工夫には驚きました。」