授業レポート

2015/10/26 UP

“つなげる事”が“価値を生む“
価値交換で社会問題を解決するポレポレ

教室に入った途端、目に飛び込んできたもの。
それは、色鮮やかで、きめ細やかな絹織物でした。
「さわってもいいですか」「綺麗、素敵だなあ」という声が聞こえる中、授業が始まります。


今日の先生はNPO法人ポレポレの高橋さん。
この「メコンブルー」という織物をはじめ、発展途上国で作られた製品の流通を支援する活動をしています。 


「流通支援」と聞くと、私たちはどうしても、企業におけるビジネス・商売をイメージしてしまいがちです。 
その流通支援をNPOという形で行い、そして 「地域の社会問題の解決につながる」製品の流通を支えているという、高橋さん。



単なるビジネスという言葉で片付けられない、高橋さんの活動は、エストニアでの事業から始まります。


最初は誰も日本で売っていないものを売りたい、という思いもあってエストニアまで来てしまったという高橋さんが出会ったもの。
それは、辺境に住むおばあちゃんたちが1枚1枚手で編んだニットやカーディガン。

高橋さんはニットそのものだけを販売するのではなく、おばあちゃんから聞いたエストニアの文化・料理の話を添えて、日本のお客さんに送ったそうです。


当時のエストニアでは、農業休閑期に現金収入を得る手段があまりありません。
そんな彼女たちに、現金収入を得る機会を生み出します。孫の大学の授業料を出せた、と嬉しそうに報告してくれるおばあちゃん。


編み物ができてうれしい、孫だって着たがらないニットを日本の人が着て喜んでくれるなんてうれしい、と言ってさらに編み物に精を出してくれてしまうおばあちゃん。
さらに、日本でその商品を手に取った人からおばあちゃんに返ってくる、たくさんの感謝の手紙。 


作り手、そしてお客さんの生活をお互いが豊かにしあう、そんな関係がエストニアの辺境から生み出されていったと言います。




そうした関係は高橋さんとエストニアのおばあちゃんとの間でも育まれていきます。
ある時、高橋さんはおばあちゃんたちが世界で一番きれいだ、という入り江に案内されたそうです。
きらきらと水面が輝き、空は真っ青、一面の花畑。
そこは地域の共同墓地でした。


「もし悲しい時があったらここへおいで」とおばあちゃんから言われたという高橋さん。


また、周囲から、現地のおばあちゃんたちのコストをもっと安くできるだろう、そうすれば儲かると言われながら「付き合いのあるおばあちゃんにそんなこと絶対できなかった」と語る高橋さんの言葉の端々からは、エストニアのおばあちゃんとの親しく、お互いを信頼しあっている関係性が感じられました。


辺境の地での高橋さんとおばあちゃんたちのかかわりが、現地の社会問題の解決の道しるべとなり、日本の人々の心まであたたかくなるものを、生み出していたんですね。


 


メコンブルーの支援をはじめとする現在の活動にもそれらは受け継がれています。
メコンブルーは、カンボジアの中でも貧困の多い地域で、伝統的な機織りの技術を用いて作られています。


そこはかつて、教育の機会に恵まれず、仕事を得られない女性が収入を得るために売春のような手段に出て、エイズにおかされてしまうという、負の連鎖が存在した地域でした。
貧困の悪循環を切らねばならない、そのために女性がしっかり仕事をして収入を得られる場が必要だ――そんな思いから生まれた織物生産の場。


 

女性の生活を変えたい、という強い思いを持って活動していた現地の女性たちをぜひ支援したいと、高橋さんは日本での販路拡大に乗り出します。


自分たちが仕事をしている意味・目的を切実なほど分かったうえで働く女性たち。
そして、これだけ優れた絹織物を作っている、という仕事への誇りをもつ女性たち。
彼女たちの思いは日本で商品とともに受け取られ、
また、彼女たちも、国を超えて喜んでくれるお客がいるからこそ仕事に精を出す。
そんないい循環の中で、よりよいものが生み出されているそうです。


 


「ものを買う以上の価値を届けたい」高橋さんは言います。


「自分はあくまでサポート。どこでも作れるものは扱わない。本当に現地のためになるものをつくりたい」という高橋さんからは、事業に対する強い思い入れが感じられました。


授業終わりに織物を囲むように高橋さんに質問をするみなさん。
織物が、授業終わりにまた一際輝いていて、いいなと思えたのは、これらのものがここに至るまでの思いを知ったからこそだと思います。



思いがつまったものを選び取って、自分のものとして使うことが、きっとものづくりに関わる現地の人や高橋さんだけでなく、自分の中でも豊かさ、新たな価値を生み出していく。


そしてその価値をいつか私も誰かにお返しできたらいいな、と感じた授業でした。



(レポート:梶文乃/写真:加藤白峰)