シブヤ大学

授業レポート

2007/2/26 UP

        

「午前中がんばって昼からは休む!」
「昼間は寝て夜になったら動き出す。」

こんな暮らしをしているのは大学生だけではない。実は、身の周りにある植物の中にもこんなヤツはいるのだという。いったいどういうことなのだろうか?

その謎を説明してくれたのが、メディア・アーティストの銅金裕司先生とゲストの藤枝守先生。銅金先生は今回の授業でシブヤ大学4回目となる。

「人間に脳波があるように、植物も生物だから何らかの電位変動があるはず」

もともと銅金先生は、植物の実体に興味を持っていたという。そんな先生が、大学教授で作曲家でもある藤枝先生と出会ったのは15年前のこと。植物と音楽、それぞれに対するアプローチが、“プラントロン”の介在によってコラボレーションを果たした。
“プラントロン”とは、葉の表面に電極を付け、そこから微弱な電位変化を取り出してコンピュータで解析することによって植物の生態情報を得るための装置である。そして、この電位変化を音に変換することにより、メロディが生まれるのである。藤枝先生は、このメロディを、琴やピアノなどで表現することによって、現代音楽の作品にしたのであった。授業中にそのCDがかけられると、目を瞑って鑑賞している生徒の姿が見られた。

“プラントロン”によると、そのメロディ(電位変動)は、サボテンが“夜行性”であるように、一日の中の光の変化によって変わるほか、植物が何らかの音を聞いたときや、同じ様に電位を持っている人が近づいてきたときなどにも変化する。

「その電位変動自体は規則性が証明されていないが、その不規則性の背後には、私たち生きものに通じる何らかの規則性があるんじゃないかなと思うのですよ。」
と、銅金先生は言う。そうだとしたら、それ故に、私たちはこの植物の電位変化が生み出す音楽を聴いて心地よさを覚え、それは水槽の中の熱帯魚を眺めているときのように時間を忘れて安らぎを感じられるというのも、ごく自然なことなのかもしれない。

“植物の声”という新しいヒーリングミュージックによって、普段は目で観察するしかなかった「植物の生」を、“耳から”感じ、考えるきっかけができた。生物は、全てその個々の存在が相互作用し合いながら生存している。そんなことを、植物から教わったような気がした。           

            
(ボランティアスタッフ 桐村 愛)