シブヤ大学

授業レポート

2011/8/8 UP

山登りの主役は自分です

なぜ山に登るのか。――そこに山があるから。
本当に好きなものに、理由なんていらないのかもしれません。
今回の先生は、山を愛し、山と生きる、プロクライマーの天野和明さん。

これまでに8,000メートル級の山々を6つも登頂し、
なかでもエベレストの近くにそびえる「ローツェ(8,516メートル)」を
日本人で初めて登った(酸素ボンベを使わず)、
日本登山界のフロンティアなんです。

授業は天野さんが勤務するICI石井スポーツさんの多大なご協力のもと、
営業時間の真っただ中にもかかわらず、フロアのど真ん中で、
一般のお客様の注目を浴びながら行わせていただきました。


これであなたもプチ・アルピニスト
5分でわかる登山の心得

山登りはしてみたいけど、何をどうすればいいのかわからない。
そんな登山ビギナーのために、一生モノの登山豆知識を
2時間の授業にグッと凝縮していただきました。

「歩き方」
フラットフィッティング(ベタ足)&小股で。
カカトから着地するのではなく、足裏全体でペタッと地面をとらえ、
後ろ足で地面を蹴り上げないようにそっと歩く。
また、一歩ごとの重心移動は短くする。
上手な人は音をあまり立てず、スーっと忍者のように歩きます。

「ペース配分」
常に一定のペースで歩くように心がける。
ビギナーほど、前半飛ばしすぎて、後半にバテます。
同じペースで歩くのが、結局もっとも疲れにくいのです。
登山でも、ウサギよりカメ戦法で。

「休憩」
歩きはじめは、30分経ったらまず休憩。
次からは45~50分を目安に。
1回の休憩は5~10分程度。
休憩中はカラダを冷やさないようにして、
水分・エネルギー補給もお忘れなく。

「水分補給」
ノドが渇く前に、コマメに摂取する。
持参する量は気温や天候により異なりますが、目安は
体重×登山時間×5ml。
たとえば体重50kgの人が4時間歩く場合
50(体重)×4(時間)×5(ml)=1000ml(ペットボトル2本分)

「栄養補給」
水分補給同様、お腹がすく前に、コマメに摂る。
炭水化物を多めにして、できればアミノ酸(BCAA)も。
栄養補給(カロリー)にも目安の公式があります。
体重×登山時間×6kcal。
たとえば体重50kgの人が4時間歩く場合
50(体重)×4(時間)×6(kcal )=1200 kcal

「服装」
フォーストレイヤー(一番下に着るもの)と
アウターシェル(一番上に着るもの)が特に重要です。
下に着るものは、汗をかくので綿の素材はさけ、発汗性のよいものを。
上に着るものは、温度調節がしやすいように着脱が楽なものを。
靴下はウール素材(特にメリノウール)がオススメです。

「バックパック」
大きさは、日帰りなら20~30リットル、山小屋1泊なら25~35リットル。
バックを背負ったら、まず腰骨の位置でウエストベルトを調整。
次にショルダーベルトを。もしもついていれば、最後にトップストラップを。


いざ、日帰り登山の旅へ
山梨県扇山にチャレンジ!

前日に教わった登山の心得を胸に、さっそく登山体験です。
キャプテンはもちろん、プロクライマーの天野さん。

8:45にJR中央線の「鳥沢」駅に集合すると、
みんな本格的なバックやウェアで身をつつみ、
すっかり登山サークルのゆかいな仲間たち。
天候にも恵まれ、遠足気分で、登山ビギナーズ15名は
意気揚々と扇山へ向かいました。

山を登っていると、絶妙なタイミングで
天野さんの登山ワンポイントレッスンがはじまります。
疲れにくい歩き方、悪路の歩き方といった山登りの基本スキルや、
地図の見方、視界不良のときのコンパス(方位磁石)の使い方、
青空トイレのマナー、食事の楽しみ方など、
プロクライマーならではの応用編まで。

壮大な景観や自然との触れ合いだけでなく、
山登りの本質的な楽しみを確かに感じたような気がします。


山の主人公は
あなたです

山では、主人公は自分です。
美しさも、楽しさも、何を感じるかは自分次第。
苦しいのも、準備不足の責任を背負うのもすべて自分。
その代わり、山は誰にでも平等です。
お金持ちにも、地位がある人にも、特別扱いはしてくれません。
特別な才能は必要ないし、いくつになっても楽しめます。
さいきん運動不足が気になる方や、一生楽しめる趣味をお探しのあなた、
今年、登山にトライするのもいいじゃないでしょうか。

(ボランティアスタッフ: 黒田紀行)