シブヤ大学

授業レポート

2011/1/19 UP

聴いて、触れて、声を掛け合って。サッカーボールが描く仲間の輪。

秋風が身にしみる土曜日の午後、渋谷区広尾中学校に集まったシブヤ大学生徒さんと地元サッカークラブの子供たち、そして先生を交え、約2時間にわたりブラインドサッカーを体験しました。

といっても、子供たちも生徒さんもブラインドサッカーやったことないよ!という人がほとんど。そこで、まずは肩慣らしとして、僕らは先生の指導のもと、アイマスクをつけた状態で小さな正方形を1周描く様に歩いてみました。つまり、目が見えない状態での歩行です。
これが思いのほかうまくいかず、違う方向へ歩きに行ってしまったり、歩数が足りなくて正方形をうまく描けなかったり―。最初はしっかりと歩けている人の方が少ないくらいでした。そう、視界を遮った状態で歩こうとすればするほど、「足で触れた地面の感覚」や「周囲の音」など視覚以外の感覚を研ぎ澄ますことが大事なことが分かってきます。でも、これだけではきれいな正方形を描けません。じゃあ他にはどんなことをしたらいいのだろう?
すると、次第に周りの仲間が「こっちだよー!」とか、「もう2、3歩前に歩いて!」などと、声を掛け合ってサポートするようになってきました。すると、うまく1周できる人も増加。この様に、周囲の人も歩数や歩く方向のアドバイスなど仲間の動きを支えることが大切だということが分かってきます。

こうして次第に実践レベルを上げていき、ついにはアイマスクをしてトラップ、ドリブル、そしてゴールに向かってシュートをすることに!
 ここでもトラップやドリブルなど難しいことは山ほどあるけれど、やはり、ここでの最大の関門はシュートでした。シュートを打つ側に立つと、いまの自分の立ち位置はゴールから見て一体どこにいるのだろう?そして、ここからシュートしたらちゃんと入るのかな?そんな迷いがどんどん浮かんできます。そうして悩んでいると、またまた皆が「右斜め前3歩のところにボールあるよ!」などと声を掛け、皆でゴールへのシュートを導いていました。
一般的なサッカーでもパスをもらう時に声を掛けたりしますが、ブラインドサッカーはそれ以上に周りが声を出し合わないとシュートはもちろん、トラップも、ドリブルも、パスも、そもそもうまく歩くことさえもできません。こうしてみると、ブラインドサッカーでのシュートは皆で生み出すものなのかなと思いました。

こうして、2時間に及ぶ授業はあっという間に過ぎていき、終わった頃には生徒さんや子供たち関係なく皆の間に笑顔と楽しい会話が広がっていました。授業の終わりに、先生の松崎さんがこんなことをおっしゃっていました。「視覚障がい者にとって、街中は色んなモノがあって動きづらい。でも、サッカー場は360度自由自在に動き回れる場所なんだ」と。僕らにとっては身動きがとりづらかったブラインドサッカーが、目の見えない人にとっては自由に動けるフィールドになる。それはきっと、1つのサッカーボールを通じて心が通い合っているからこそなのかな、と感じました。
たとえ視界を遮られても、相手を思って手助けする仲間がいる。仲間がいるから信じて前へと進める。そうして、互いの仲が深まっていく。
みなさん、寒い中の授業お疲れ様でした!

(ボランティアスタッフ 狩野元彦)