シブヤ大学

授業レポート

2010/5/7 UP

“おとなの自転車あそび”は、「制約があるから」楽しい?

今回の教室は、いつもと勝手の違う、シブヤのど真ん中、西武百貨店渋谷店B館の紳士服売り場の一角。
現在、「バイクコンシャスライフ」と題する全館プロモーションを展開する売り場の中でも、
コレクションバイシクル群とファッション小物,ファニチャーをディスプレイした、集中展示コーナーが、「臨時教室」です。

開講前から会場周辺を行き交う人が、さりげなく視線を送る先には「シブヤ大学」の巨大バナー。
ちらりちらり目をやりながらも素通りです、さてさてどんな生徒さんが来るのかなー。

で、集まったのは、まさに自転車ブームを反映するのか、老若男女の面々。
20代とおぼしき男性から、55歳、自転車の世界に魅了されそうで怖いと吐露した自己紹介の男性まで、興味の幅や関心レベルも異なる、定員をオーバーする計14名。しかも、そのうち6名は女性です。

さてさて、いきなり、”腰カックン”な結論めいた話で恐縮ですが、
講師の豊田さんは「スーツ&革靴で楽しむ、大人の自転車遊び」を、おすすめした訳ではありませんでした。
スーツで自転車乗ろう、革靴で自転車乗ろう、の提案じゃないんですね。

というのも、講師の豊田さん、
知る人ぞ知る、英国靴、鞄、服を扱う専門店を都内で展開する経営者さん。
(かくいう私も、このお店のファンで、当日、ここのカントリブーツ中心のコーディネートでスタッフ参加し、豊田さんと楽しくお話させて頂きました。こういうボランティア動機もあり、ですよね)

このお店の性格上、勤務スタッフは、スーツもしくはジャケットとドレッシーな革靴の着用が、当然必然として義務づけれているらしんですね。
そして例外なく、もちろんオーナーの豊田さんにもね。
つまり、まず、”スーツ&革靴(着用)の制約ありき”の前提、なんです。

15年ほど前から、ご本人曰く「足腰の衰え防止」に始めた、という自転車ライフ。
とは言っても、道楽の程度が超達人レベルの豊田さんですから、英国車はもちろん、イタリア、フランス車などの名車や高級車を渡り歩く中で、”スーツ&革靴(着用)の制約ありき”の”通勤ツーリングに最もふさわしい自転車選び”の回答が、ツーリング特性とレース特性の両要素を兼ね備える「クラブモデル」と称されるカテゴリーの英国車、「EPHGRAVE(エフグレイブ)」だったんですって。

かつ、サドル後部には、キャンバス地のバックを付属させていて、この中に、折り畳んだジャケット、手袋、ズボン裾クリップ(冬はパーカー、耳当て)などを収納することも出来るところも選択理由とのこと。(その他にも、タイヤカバー、ライト、ボトルホルダーなどの付帯装備の点にも触れておりました)

そして今も毎日、自宅から渋谷区内の事務所までの、“脂肪燃焼にはちょい足りない”約15分の「通勤ツーリング」を楽しんでおられるそうです。

当日はこの豊田さんの通勤に使う愛車を、教室となる百貨店内の会場に運び入れ、傍らにおきながら,時折解説を加え、授業が進行されました。その自転車のコンディションとパーツの道具としての美しさは一見の価値あり!(フォトリポート、ぜひ参照ください)英国趣味漂う、グリーンを基調としたフレームカラーと,カラーコーディネートされたグリーンのキャンバス
サドルバックのシックな趣味の良さが際立っておりました。

講義は、かなりマニアックな自転車のブランド名やパーツ名など専門用語が支配する感もあったのですが、生徒さんからは、おすすめサドル素材は?/革靴で滑らない?/自転車で選ぶ靴変わる?/ヘルメットはかぶる?/オーダーと名車、どっち選ぶ?/耐久年数は?など、数多くの質問が出、その一つ一つにのやりとりを真摯に答え、楽しむ豊田先生の姿勢が印象的でした。

そのうち、話は「自転車」からすこし脱線して、同じく趣味である「カメラ」の話に。
なんでも最近、コレクションピースのレンズを組み合わせた愛機のデジタルカメラを、サドルバックに収納して楽しんでいるんですって。
カメラ/写真は、本授業コーディネーターでもあるオヤビンこと佐藤さんの本業でもあるので、なおさらの楽しい脱線です。
それでも、自転車好きとカメラ好きはどこか共通するようで、生徒さんもカメラに関する質問まで出て興味シンシンです。

そんなこんなで予定の時間が来て、集合写真撮影で授業終了。
それでも写真撮影が終わり会場を片付け始めても、まだまだ帰ろうとせず、自転車の傍らで、豊田さんや参加者同士で余韻を楽しみ話し込む、”大人の自転車あそび人仲間”の光景が、ほほえましく、いい感じでした。


それにしても最後まで、経営者らしいシビアな側面をみじんも感じさせない、豊田さん。

いい意味で、いち英国趣味青年が、調べるのが好き!と公言し、知りたいこと/モノに面すると、世界中に(多いときは一方的に100人近くに)メールを送って、探して、見つけて、買って、取り寄せての繰り返しで、自転車、カメラ、ギターなど、好奇心と共に人生を味わい楽しみ、それがそのまま齢を重ねて”おやじ”になった感じ、で、授業全体に穏やかな雰囲気を醸し出してました。

そんな豊田さんならではの、”趣味を人生とし仕事とするスタイル”をテーマにした「続編授業」を聴きたいと思ったのは、私だけではないはずです。

(ボランティアスタッフ/姉妹校「東京にしがわ大学 準備室」職員 菱沼秀行)