シブヤ大学

授業レポート

2009/10/14 UP

「歩き・見て・感じ・聴く、ギャラリーツアー。」

ブックディレクターの江口宏志さんを先生に迎え始まった、表参道のギャラリーお散歩ツアー。「面白そうな授業があったから思わず有休をとっちゃいました」という方から、「何か作るのが好きで服もパンも家も作っちゃいました」という方、「この前砂漠に木を植えに行ったんですよ」という方まで、話せば話すほど面白い生徒さんたちとの会話も楽しみながら、5つのアートスペースを回りました。

1.デザイン事務所2×4エキシビジョン「IT IS WHAT IT IS」@EYE OF GYRE
会場を埋め尽くすのは、「2×4のメンバーのアイディアフラッシュから、完成されたデザインが世の中に出たとき、どう溶け合うのかまでを表現した」という、1,000ページもの本。2×4の頭の中をのぞいているような導入部から、徐々に洗練された表現へと完成されてゆき、最後はニューヨークの街や、記者会見中のトム・クルーズのバックを飾るユニークなデザインは、会場自体がひとつのストーリーを描いていました。「2×4のメンバーは本当にシャレ好きというか面白い人たちで、この意味ありげに貼ってあるメールは、ただオフィスでネズミをつかまえたぞ、っていう内容なんですよ(笑)」ナビゲーターの須田卓さんから、2×4メンバーのおちゃめな裏話も聞けて楽しいひとときを過ごしました。

2. 榎本佳嗣さん写真展「Tokyo wink」@gallery ROCKET
「ここ、もう二度とたどり着けなそう(笑)」と生徒さんたちが口にするほどの細道を通り、知る人ぞ知る隠れ家ギャラリー「ROCKET」に到着。2階建ての空間を吹き抜けにした、開放感あふれるこのギャラリーでは、1~2週間のペースで若手クリエイターの作品を展示しているそうです。今回の展示は、榎本佳嗣さんの写真展「Tokyo wink」。榎本さん曰く「ここで作品を展示すると、写真の見え方が違う。流行とは違う捉え方をするというか、手垢がついていないというか」だそうです。まばたきするように東京を切り取り、あるがままを映し出すその写真に、とてもしっくりとくる空気が確かにそこにありました。榎本さんご本人から、作品について様々な想いを聞ける質問タイムの後、お土産をもらって、次のギャラリーへ。

3. 田尾沙織さん・千葉尚史さん写真展「私の場所・僕の場所」@DEE'S HALL
フォトエッセイストであり、ギャラリーオーナーである土器典美さんと、写真家の田尾沙織さんが出迎えてくれた「DEE'S HALL」。オーナーである土器さんに、このギャラリーのコンセプトを尋ねると「うーん、展示の共通点は、あたしが好きなもの(笑)」とのこと。ハイセンスでありながら、自由で幅広いジャンルのアートに出会えるのもこのギャラリーならではの魅力かもしれません。作品紹介をしてくださった田尾さんは、あたたかい雰囲気のとてもかわいらしい人で、その作品もどこか田尾さんの人間性を表わすような優しさに満ちていたように思います。生徒さんに人気だったのが、入り口付近にあった外国の墓地の写真。「この明るい雰囲気が好きで、思わず2、3日通ってしまいました。」というこの作品は、墓地と思えないほど光が美しく射す写真でした。

4. Leatitia Benat×Takeshi Hommma× Henry Roy× Mark Borthwick「Light Streams」@Center for COSMIC WONDER
日が落ち、辺りが暗くなってきた頃訪れたのが、「Center for COSMIC WONDER」。ファッションブランドとして有名ですが、アートや出版というジャンルにおいても独自の世界観を作り上げています。「公園のように開かれた場所で、自由にお客さんと時間を共有できる場所でありたいと思っています。」というコンセプトどおり、アートに彩られた店内は広々として居心地がいい空間。今回の企画展では、4人のアーティストがそれぞれに「光」をテーマにCOSMIC WONDERの魅力を表現していました。

5. 江口宏志さんのお店「NOWIDeA by UTRECHT」
このツアーのゴールは、案内してくださった江口さんのショップ。店内には、洋書を中心とした様々な本が並び、その隣にはギャラリーを併設しているそうです。ちょうどこの日はギャラリースペースでライブを行っていました。たくさん歩いたので、テラスで一休みしながら、ゆっくり反省会。「生きている人の本を売ろう、というのがNOWIDeAのコンセプトで、ここが作品を作っている人を紹介する場所であり、つながっていく基点になればいいなあと思っています。」と江口さん。その想いは、ギャラリーを運営している人やクリエイターを訪ね、紹介し、話を聞くという、今回のツアーのコンセプトにも繋がっているように感じました。

「もっと色んなギャラリーに行って見たい」、「人のつながりが生む、シブ大らしい良い授業だった」などの意見の出る、大成功の授業でした(…個人的にもシリーズ化してくれたら嬉しいです)。授業に参加できなかった方も、ちょっとしたお散歩やオシャレなデート、金欠だけど遊びたい!という時まで(なんと今回紹介していただいた場所はすべて無料!)、表参道のギャラリー巡りはいかがですか。

(ボランティアスタッフ : 花輪 むつ美)