シブヤ大学

授業レポート

2023/9/25 UP

「継承の場面」 その10
子どもの未来について~これまで、今、これからの子育て

こんにちは。シブヤ大学ボランティアスタッフの佐々木です。
9月16日に行われた「継承の場面 その10 子どもの未来について~これまで、今、これからの子育て」のレポートです。場所は恵比寿社会教育館の三階です。
今回は、少子高齢化と文化の継承に悩む市役所の職員の方、保育園の園長先生の方、フリースクールの代表の方など、子どもや子育て、継承の課題に日々取り組むプロフェッショナルが集まりました。親から子へ、社会から子へ、地域から子へ何を継承していくのかについての、深く熱い議論の様子をお届けします!

今回ご登壇いただいた先生は、「株式会社子育て支援」代表の熊野英一先生(通称くまちゃん)と、僧侶であり理学療法士の鈴木秀彰先生(通称ひでちゃん)です。
くまちゃんは外資系企業等を経て10年ほど前に保育所経営や社員研修の道へ。
ひでちゃんは実家がお寺だが継承しないという決断をしたお坊さんで自身も子育て真っ最中。
くまちゃん専門のアドラー心理学とひでちゃんの仏教は共通点も多いそうです。



今回は参加者が少人数ということもあり、まずはたっぷりの自己紹介タイム。
それぞれの普段の疑問や悩みを共有します(恐縮ながらボラスタの佐々木もがっつり参加しています)。先生と、そして参加者同士が問題意識を共有できるのは贅沢な時間ですね! プロフェッショナルとしての悩みも、親としての悩みも共有してまずはお互いへの理解を深めたところで、くまちゃんから日本の教育や子育てに関してショッキングなお話がいろいろありました。

まず、現代は何が正解かわからない時代(人生100年、VUCA、With コロナの時代)ということ、
そして人口が減り続けていて、西暦3000年には日本人は2000人程度になっているかもしれないということ、
日本の若者が社会の一員として社会を作っていくことに希望を持てない状況であること、
高学歴な子どもほど失敗を恐れてチャレンジできないこと、
不登校の子ども達の人数が増えていること…。

どれも聞いたことはあるけれど、どこか他人事で、危機感をもって捉えられていない人は多いのではないでしょうか。

参加者からここでいろいろと質問が。
他の国ではどのように自己肯定感を高めているのだろうか、
不登校や無気力・不安を抱える子どもが増えている理由、
こどもの「やりたくない」を受け入れることが主体性を伸ばすということなのか、
自己肯定感が低いわが子をほめ続けたがそれでいいのか…。
そして、現場のプロフェッショナルが抱える課題としては、
保護者の期待もあって「与える教育」をしてしまう、
古いやり方をどうしても引きずってしまう、
教師やケースワーカーなど子どもをケアする人材が不足している…。
いろんな疑問や意見、課題が次々出てきて、初っ端から議論は大盛り上がり!

くまさんによると、不安や自信を持っていていいと自分を肯定できることを、アドラー心理学では自己受容というようです。
現代の子どもは、ちゃんとしていなくてはいけない、評価されなくてはいけない、失敗してはいけないと自分を追い詰めて、どうせできないと思って最初からチャレンジしなくなってしまうようです。。。 参加者からも、先生たちもちゃんとしてなきゃいけないと思いすぎだよね。勇気をもってこれまでのやり方を手放して、人として自分に素直でいられる大人のほうがかっこいいよねという話が。

ふむふむ、専門家の教師や 保育士ですら難しいということですが、では親としてはどのように子どもと接したらいいのか。

くまちゃんは、そこで「信頼」というキーワードを出してくれました。
「信用」は条件付きだけど、「信頼」は無条件。 自分を、「ポンコツだけど価値がある」と親が信頼して認めてくれることで、自然と動き出せる子どもに育つらしい。親が自分の意図で子どもを操るために褒めるのはNG。あとは子どもが成功しても失敗しても共感することが大事。子どもたちは親にありのままの自分を認めてほしいし、自分らしくいられる居場所を求めているんですね。



そもそも「○○してあげる」という上下の関係が親子でも会社でもあって、これが継承されてきたところがあります。けれどこれでは下に置かれた人の成長を妨げる。「Education」は本当は、人間と人間として対等な関係にいる他者が、相手の能力を「引き出す」という意味を持つ言葉なんですね。
そういう意味では、できれば上の立場の人が気付いて変わっていかないといけませんね。 スポーツの世界では結果を出すのは権力で動かす組織ではないことが徐々に証明されるようになってきた、ということです。

最後にひでちゃんから重要な指摘が。親であっても、教師であっても、人間なので、神仏レベルのサービスは難しい。自分が満たされていないと難しい。「人に何かしてあげたい」が存在意義になってしまうと、多様化の時代なので必ずしもよくないとのこと。
そうですね、親が良かれと思って子どもにすることが必ずしもいいとは限らないですよね。大人自身がありのままの自分でいることが、まずは大事かもしれません。 いろんな立場の人が集い、子育てについて考えた深~い時間でした。



(レポート:佐々木織恵、写真:元木秀樹)