シブヤ大学

授業レポート

2020/1/27 UP

見つけに行こう!いろんな視点
~シブヤ大学 まち歩き~

今日の授業はまち歩き。
それにふさわしいすっきりとした晴れになりました。

今日の授業は「自分と異なる視点」でまち歩きをすることが大きなテーマ。異なる視点を見つけるためにご一緒するのが、補助犬ユーザーの皆さんと補助犬たちです

今日の先生は、特定非営利活動法人 日本補助犬情報センターの橋爪 智子さん。
橋爪さんが専務理事をつとめる日本補助犬情報センターは補助犬とユーザーさんの情報支援や相談業務を行うなんでも屋さんです。(https://www.jsdrc.jp/

まずは橋爪さんから、障がいのこと、補助犬のこと、気を付けることなどをお話いただきました。橋爪さんが話し始めると、正面の画面には文字が映ります。聴覚に障がいのある方に向けて、UDトーク(https://udtalk.jp/)というアプリを使って話し言葉を文字にしています。

ところで、ここまで出てきた「補助犬」についてはご存じでしょうか。


補助犬とは身体障害者補助犬のことで、盲導犬・介助犬・聴導犬の3種類があります。
ちらっと聞く機会があったり、テレビや街で見かけることがあっても、ちゃんと知る機会はなかなか無いかもしれません。それぞれに役割があります。


 盲導犬:視覚に障がいのある方の安全で快適な歩行をサポート
 介助犬:手足に障がいのある方の日常生活動作をサポート
 聴導犬:聴覚に障がいのある方に必要な音を教え、音源まで誘導する。


そして、今回私も初めて知ったのですが、補助犬に関する法律が制定されており、公共施設や店舗は補助犬を受け入れることが義務となっているそうです。いまはまだ残念ながら入店拒否をされてしまうこともあるらしく、この法律の存在を知ってほしいと橋爪さんもおっしゃっていました。


今日は、盲導犬ユーザーのセアまりさん・塚越さん、聴導犬ユーザーの松本さんとまち歩きをご一緒します。


お三方の自己紹介を受けて、早速まち歩きのチームに分かれます。
今日まち歩きするのは恵比寿。駅前のにぎやかなエリアや恵比寿ガーデンプレイスなどがありますが、補助犬ユーザーさんと、補助犬とみんなで歩くとどんな発見があるでしょうか。

チームになって、ユーザーさんと生徒のみなさんの交流が始まります。チーム名と行く場所を決めたら、早速出発です。
私が参加したのは、聴導犬ユーザーの松本さん・聴導犬チャンプのグループです。松本さんからは拒否されることも恐れずに挑戦しようとの提案があり、より人混みの多い恵比寿駅付近に向かいました。

まず歩き始めて、「松本さんは聴導犬を連れていることで、聴覚に障がいがあると発信している」ということを学びます。


また、一緒に歩く時に松本さんとどうコミュニケーションをとるか、生徒のみなさんもいろいろと挑戦してみます。ジェスチャーで伝えたり、付箋とペンを持って歩いたり、出来ることは全部やってみます。
人が多い駅に近づくと、チャンプを連れて駅ビルを歩く松本さんに、すれ違う人たちも目を奪われているようです。エスカレーターも聴導犬と一緒だと2列分使うので、歩いて上ってくる人が(歩くのは本当はダメなのですが)「あれ?」となる場面も。


そして今日はお店に入ってみるというチャレンジをしてみます。


駅ビルの中にあるお店に聴導犬と証明書を提示し、犬と入っても大丈夫かということを生徒さんが聞いてみます。入店を断られることはなく、無事入れました。松本さん曰く、障がいがある人だけで入ろうとすると断られることも多いのだとか。今回は少し人数もいたことがプラスになったのかもしれません。


お茶をしながら、松本さんがご家庭でどんなコミュニケーションをとっているか、どんなことが普段あるのかたくさん聞かせていただきました。松本さんはご自身の声を忘れないように常にトレーニングをしているとのこと。そして読唇術でこちらの話す内容を汲み取ってくれることも多くありました。
お店の注文一つとっても、いろいろな場面ではっとすることがたくさん出てきて、普段は気が付かないことに気づかされる驚きの多い時間を過ごしました。


まち歩きから戻ると、「初めて知ったこと」「気づきや面白かったこと」をそれぞれのチームから報告してもらいます。


塚越さんチーム「チームピッケル」
・服はマナーコートという名前
・盲導犬は基本的に犬がユーザーさんの左につく
・介助するときにはクロックポジションで伝えることの大事さ
・この角にレストランがあるなど目印になるものを伝えるとユーザーさんの中でメンタルマップがつくれる


まりさんチーム「べえべ」
・エスカレーターや広場での介助が難しかった
・補助犬シールを貼ってくれるお店があった
・恵比寿ガーデンプレイスのシャンデリアがきれいだったのでまりさんにも共有した

松本さんチーム「チャンプのバリアさがしグループ」
・聴導犬を連れていることで聴覚に障がいがあると示せる(そうでないと気づかれない)
・コーヒーショップで注文と受け渡しが別だと、声でよばれるので気が付けない
・ジェスチャーなどコミュニケーションのとり方は工夫できる


なんだかみんな、各チームでまちを歩いて交流して少しの疲れとともに自然と顔が明るくなったような気がします。そして、他のチームの気づきに「そうなんだ!」の発見もありました。一緒に歩いて体感したからこそ、他のチームの学びにもとても興味がわいていました。


最後に今日ご一緒してくれたユーザーさんからも感想をもらいました。


塚越さん
「訓練を受けた後の盲導犬は学校を卒業したばかりのようなもの。ユーザーと組んで初めて社会に出るので、あたたかく見守ってほしい。そして、盲導犬もそうだがユーザーもひとりひとり違うのだということを分かってほしい」
まりさん
「入店拒否をされている場面などは、ユーザー自身が主張するのは難しい。他の人の口から言ってもらえるのがベスト。障がいがある人たちが社会に出ていくには、周りの人たちにもっと伝えていくことをお願いしたい」
松本さん
「聴覚の障がいは街が歩けてしまう。気が付かないだけで埋もれている生きづらさに気づいてもらえたらと思う。いろんな障がいを知って想像が広がることで社会全体が太っ腹になるといい。」

橋爪さんからは、今日は「へぇ~」の種を得られたのでは、声かけには勇気がいるけれど、どんどんやってみて社会参加をサポートしてほしいとお話がありました。

終わった後も話は尽きません。
普段通る道や駅も、今日をきっかけに少し違って見えてきます。
いろんな視点があることに気が付いたら、さらに楽しくまちを歩ける気がします。


レポート:菅井 玲奈
写真:中村 隆/高橋 徳治/菅井 玲奈