シブヤ大学

授業レポート

2019/8/28 UP

都会の真ん中で土に触れ野菜を育てる 「IT」×「アグリカルチャー」が描く未来

今回の先生は渋谷生まれ渋谷育ちの芹澤さんです。芹澤さんは、元々はIT企業勤めだったのですが、家業である花と緑の業界へ転身しました。その後は得意のIT分野を活用し事業を拡大していきました。現在はプランティオ株式会社にて、「みんなで野菜を育てる世界へ」をVisionに持続可能性のあるパーマカルチャーを提案しています。



初めに、「アグリカルチャーの意味」についてお話をしてもらいました。芹澤さんは農業=産業であり、アグリカルチャー≠農業、つまりアグリカルチャーは農業ではないと言います。
一説によると、農という文字は象形文字で、森・林を切り開くイノベーションという意味があります。
そして、アグリカルチャー(agriculture)は土地を耕すという本質的な行為を意味し、アグリカルチャーはどちらかというと農を意味する言葉だそうです。工業的な意味の産業ではなく、もっと人類のライフスタイルの中心であり、生活を豊かにしてくれるものだと教えてくれました。

プランティオは先ほどのVisionを提案する上で欠かせないMissionとして「みんなで楽しく育てるカルチャーを作る」を掲げています。その中で、新しいカルチャーの流れとして「アグリテイメント」を主張しています。アグリテイメントは”アグリカルチャー”と”エンターテイメント”を掛け合わせたもので、意味はその名の通りエンターテイメントとしての農です。

最近は、アグリテイメントやパーマカルチャーという概念をよく聞くようになりました。それらの流れが台頭してきているのは、民主化の流れだと芹澤さんは言います。中央集権的な形だった銀行が、仮想通過が台頭し始めて少しずつ分散・モジュール型になるように、世界は銀行を中心に様々なコンテンツが民主化し始めています。しかし、日本は民主主義国なのですが、民主化が中々進まず、特に重要な食の民主化が進んでいないという現状があります。

他の国では野菜を手に入れる手段が、八百屋やスーパーで買う以外にも、自分で作ったり、ご近所さんから貰ったりすることがあるそうです。NYやロンドンなどの都市生活者でもそういったことがあるのですが、東京での野菜を得るための選択肢は、基本的には「買う」ことのみになってしまいます。そのような現状を打破するため、食の民主化のため、食料問題や自給率をあげあるためにも、プランティオは持続可能性のあるパーマカルチャーを提案しています。



また、持続可能性のあるパーマカルチャーを提案する上で、持続可能な栽培に必要な技術の1つとして、新しい『土』の開発を行っています。
何度でも繰り返し使える地球に優しい素材でできた夢のような素材です。しかも材料は火力発電から出る灰を使っていて、廃材を利用するため、地球環境にも優しい製品となっています。作成も簡単で、これからは土をもリサイクルするのがスタンダードになる時代が来ると言います。

そして、みんなで育てている野菜の情報の可視化や、スマホで解錠できるようにとアグリカルチャーを支えるための細かなテクノロジーも導入、それらをデータベース化する事によって、持続的な運営をします。
収穫された野菜も、イベント化や、みんなで食べたり、レストランに持ち込むことができるなど、最後までアグリカルチャーを楽しむ仕組みが出来上がっています。このようなアグリカルチャーをカジュアルにすることによって、少しずつ都市生活者とアグリカルチャーの関わりが増えていくのかなと感じました。



最後に、パーマカルチャーの普及として有機野菜の種を会場の参加者の皆さんに配る際にPay it forwardのお話をしてくれました。Pay it forwardとは、親切をされたら、親切をしてもらった以外の人にお返しして、親切の輪を広げていこうという意味です。

アグリカルチャーについて、体系的な話から、技術的な部分までとても分かりやすくお話をしていただきました。お話を聞いた後は、アグリカルチャーのある持続的な都市の未来を実際に頭の中に創造でき、芹澤さんが率いるプランティオによってより良い、より面白い未来が来るのだろうと考えさせられ、今後の動きが非常に気になりました!

自分達が食べている野菜や、農を見直す良い機会にもなり、少しずつですが、農に触れながら都市生活を行おうとも思いました。皆さんも、屋上菜園や、市民農園などで、農に触れてみてはいかがでしょうか。

芹澤さん、本当に素晴らしい授業をありがとうございました。




(レポート:赤坂駿介、写真:伊藤扶美子)