シブヤ大学

授業レポート

2018/12/19 UP

”人を想う”仕立て屋という仕事

UNIVERSAL LANGUAGE MESURE'S渋谷店での授業は3回目です。
1回目はお客様の立場でスーツのオーダー体験、
2回目はスーツ本体の作り方の授業でした。
3回目の今回は接客する側の立場で“相手を想う”コミュニケーションを学びます。

講師はUNIVERSAL LANGUAGE MESURE'S渋谷店、オーダースーツ担当のスタイリスト大野進也さんです。



大野さんのオーダースーツとの出会いは「成人式で誰よりもカッコ良いスーツを着たい」でした。

コミュニケーションの前に、“オーダースーツ”について学びましょう

◎スーツの歴史
15世紀ごろヨーロッパの貴族男性の服装は丈の長い“フロックコート”、乗馬や歩きやすいよう前身頃が短い“モーニング”でした。時代ともに動きやすく前も後も短くなり、20世紀に今のベストの付いた“スリーピース”が貴族のたしなみになりました。一般に普及したのは1920年ごろアメリカ経済成長です。

◎日本のスーツの歴史
江戸時代末期の文明開化で日本にスーツが入りました。当時は政治家や上流階級のみ、全てオーダーです。
一般に普及したのは戦後、既製品が流通するようになってからです。

日本の冠婚葬祭や一般的に黒いスーツを着ますが、海外では黒は葬式で着るかどうかです。日本で黒が一般的なのは、黒の軍服を冠婚葬祭で着ていた名残と言われています。

◎フィッター、スタイリスト(仕立て屋)の仕事とは

既製品スーツは安価な物もあり、完成品を購入するので直ぐ着用出来ます。
オーダースーツは比較的高価で作成に時間かかります。
にもかかわらず、オーダースーツの売り上げは年々伸びているそうです。以前はオーダーは高級店のみだったのが、今はセレクトショップ等、取り扱う店舗が増えたのもありますが、何と言ってもオーダーならではの魅力があるからです。

オーダースーツの魅力
・自分に似合う世界に一着のスーツになる(SUIT訳すと「似合う・合う)
・既製品と違ってサイズ、生地、デザインを自分の好みに決められる。

スーツには長い歴史があり、様々なマナーがあります。
生地だけで何千種類、小物(ボタン)やスタイル(型紙)の組み合わせは無限にあります。
サイズ感や色柄合わせは、素人よりプロが詳しいです。



スタイリストはコミュニケーション(接客)を通じて、お客様の潜在ニーズを探り、「着なければならないスーツ」から「着たくなるスーツ」を選ぶお手伝いをして、お客様の第一印象を良く見せます。

◎コミュニケーション(接客)の良い例・悪い例
大野さんがスタイリスト役、スタッフさんがお客様役で、良い接客例と悪い接客例をロールプレイします。

良い接客例
・笑顔
・相手の言葉を繰り返し、相手のイメージから具体性を引き出す(用途や予算、好みなど)
・肯定して会話を膨らませる

悪い接客例
・無愛想
・セールストークやトレンドを一方的に言う
・お客様の話を聞かない

実際のロールプレイイングにかかった時間は、良い接客例が5分強、悪い接客例は3分未満でした。これは、お客様の気持ちに寄り添った会話に時間がかかった差です。



大野さんは講義の中で何度も問いかけをしてきました。
そして参加者さんの答えを毎回ミラーリングしていました。
一方的に講義するのではなく、問いかけとミラーリングで共感を示し、参加者さんとコミュニケーションを取り続けていたのです。

◎ロールプレイングしてみよう
参加者さん同士で、お客様役・店員役になって、接客のロールプレイイングをしてみます。
説明の3Kを意識すると、皆さん初めてに思えないスムーズなコミュニケーションが出来ました。



◎まとめ
大野さんは、スタイリストの仕事とは「接客というよりカウンセリングをする気持ち」と言います。
お客様には来店する目的があるのですが、必ずしもストレートに訴えるとは限りません。中々言えない人もいます。
内気なお客様には、笑顔で柔らかく声をかける。
着たいスーツが分からないお客様には、服以外の興味や日常の話から、ニーズを引き出していく。
マナーやトレンドに的確に答えて、お客様に信頼してもらう。
お客様に寄り添い、ニーズ(スーツでは体型の悩み・サイズ・型紙・似合う色柄etc)を聞き出して信頼関係ができれば、お客様の「着たくなるスーツ」が必ず出来るのですね。

そしてコミュニケーションは、オーダースーツだけでなく、売買、仕事、家庭でも意識すると、お互いの信頼を作る事ができます。
スタイリスト側から“相手を想う”コミュニケーションを学んで、有意義な時間になりました。
大野さん、UNIVERSAL LANGUAGE MESURE'S渋谷店、スタッフの皆様、どうも有難うございました

(レポート:高橋純子、写真:青木優莉)