2025年 第2回テーマ「ソーシャルファームのリアル(働く人の目線から)」
2025年9月10日(水)19:00〜21:00
「誰もが働ける社会をつくる ソーシャルファームを知って、考えて、動きたくなるワークショップ」の第2回・第3回は、ひとつのソーシャルファームを「働く側」と「雇う側」の2つの視点から見る授業です。第2回は「働く側からの視点」。シングルマザーを支援するAnimo Plus株式会社から、吉野晶子さん、甲斐伊佳子さんのおふたりに来ていただきました。

吉野さんは、時間や働ける場所に制約のあるお母さんたちでもパソコンさえあればできるように、外部企業から委託された業務を分解してマニュアル化し、その仕事をお母さん方に業務委託したり、お母さんのスキルアップや就労支援につながるスクールの運営にも携わっています。一方の甲斐さんは発達障害のある子どもを預かる保育園型療育施設の仕事をしています。シングルマザーは就労困難な状況だったり、時間が限られたりしていて非正規雇用の方も多いという状況。また障害のある子どものお母さんは、療育に預けるために今の仕事を辞めたり、仕事を途中で抜け出さなくてはいけない状況にも陥りがち。Animo Plus株式会社では、ママサポセンターという就労できる場と、子どもたちを長時間預かれる場所の双方から支えようとしているのです。

お話するうちに、吉野さん、甲斐さんご自身も不登校のお子さんを抱えていたり、シングルマザーだったり、就職氷河期の頃には女性だという理由で不利だった経験があったり、とおふたりとも働くことに対するそれぞれの葛藤を経験し、紆余曲折がありながら現在の仕事をしているということも見えてきました。甲斐さんは、「以前の仕事場では家庭の事情を話すことなどできなかった」。それがAnimo Plusの社長は、甲斐さんの娘さんの事情を聞くなり、「お子さんも一緒にここで働けばいいじゃない?」と言われたことで、肩に入っていた力がふと軽くなったのだそうです。

自分がいないと回らない、休みも取らない。「責任感と言ってしまえばいいかもしれませんが、いまとなっては頑張りすぎたと思います」。それがいまは“お互いさま”がキャッチフレーズ。子どもが熱を出したとか体調が悪いとかいう連絡も、当日のLINEひとつでOK。「人にそう言えるようになってから、自分にも優しくなったと思える」。
お話を聞きながら思ったのは、人は誰でも“仕事”と“生活”を切り離すことができないし、仕事も生活も関連しあいながら人は生きている……そんな当たり前のことでした。吉野さんの職場には障害を持つ方もいらっしゃるそう。その人ができることやってきたこと、得意なことが活かせれば、仕事にはなにも不都合はない、と吉野さんはおっしゃいます。

働くということに強さを求め過ぎていないか、強さのために弱さを隠しているのだとすれば、生活に困難を抱えていても輝ける職場に共通することとは、“弱さを語れる”というところではないだろうか、と近藤先生は指摘されました。目に見える障害がなくても、人はそれぞれなにか弱いところを持っている。職場でもそれを“お互いさま”だととらえることができればいいのかもしれない。
グループワークで話し合った参加者からのコメントでも、短時間でもできる仕事を工夫することや、ひとりひとりと対話すること、“お互いさま”というキーワードなどは、シングルマザーや障害を持つ方も含めて、さまざまな人にも共通するのではないかという共感の声が多く聞かれました。もし、そんな職場ばかりならソーシャルファームは不要なのかもしれないという意見もありました。しかし、意識してやらなければならないのは、そうではない職場も多いから。マニュアル化の取り組みも「いい感じにやっといて」のためではなく、それぞれの仕事の中にどんな本質があるのかというのを明らかにして、その人を見て、そして任せるということであり、仕事のすべてを抱え込まなくてもよい状態をつくっているから。そこには“そのままでいい”と受け止めてくれる場所だからじゃないか、と近藤先生。次回はそういう場として会社を経営している側からお話をうかがいます。
