シブヤ大学
誰もが働ける社会を作る ソーシャルファームを知って、考えて、働きたくなるワークショップ

ソーシャルファーム(Social Firm)という存在をご存知ですか?

誰もが楽しく働くことができるような職場。挫折があっても、失敗があっても、困難があっても、障害があっても、働きたいと思っている人は多い。そうした人々が働くことができる場所が「ソーシャルファーム」です。

でも、ソーシャルファームは特別な場所じゃないんです。どんな会社でもソーシャルファームになることができる。

このワークショップは、ソーシャルファームとはどういうものか、どんな会社が取り組んでいるのか、どんな人がどんなふうに働いているのか、どうやってソーシャルファームになれるのか、さまざまな人々が楽しく働くことができるソーシャルファームの思想と実践を知り、未来の社会を考え、作る場所です。

2024年 第3回テーマ「ソーシャルファームのリアル(働く人の目線から)」

2024年11月7日(木) 19:00〜21:00

「誰もが働ける社会をつくる ソーシャルファームを知って、考えて、動きたくなるワークショップ2024」の3回・4回はひとつの会社を「働く側」と「雇う側」の2つの視点から見る授業です。第3回は「働く側からの視点」。2016年の会社創設後から刑余者(刑罰を受けたことのある人)を積極的に採用し、2023年に東京都のソーシャルファーム認証を得た拓実建設で働くお二人に来ていただきました。

拓実建設に入社したきっかけは、お二人とも受刑者向けの求人情報誌『Chance!!』を見たこと。「社長の笑顔が一番素敵だったことと、自分のやる気をサポートしてくれるという言葉が励みだった」と宮下さん。「『“本気でやり直そう”と決断するのはあなた自身です』と書いてあったんです。本気でやり直したいと思っていたので、そのメッセージが心に響いた」と内山さん。いま1年目の宮下さんは新人の相談などの業務、まだ3ヶ月の内山さんは現場で解体作業に従事されているそうです。お二人とも現在の仕事に自負とやりがいを感じていることがお話から伝わってきました。

お二人のお話で心に残ったのは、刑期の終わりが見えてくる頃に不安になるのが仕事のことだということ。「仕事しなきゃ、考えなきゃと思っていました。でも、僕には(仕事を)選ぶ権利はないと思っていたんです。刑務所に入ったから。でも拓実建設は1番給料が良くて待遇もいい。これは社長に会ってみたいと思って応募した」と内山さん。宮下さんは遠方だったため1年ほど手紙のやりとりの中で、「最初に1番の疑問を聞いたんです。『出てからどんなことをしてくれますか』って」。それでも、社長は本来だったら嫌だろうなと思う質問でも「なんでも言っていいよ」と言ってくれた。「もう質問攻めだったんですけど、それでも社長は全部返してくれた」。身元引受人にもなってくれた。「身元引き受け人がいたから、刑務所の外にある農場区の寮に行くこともできました」。

「刑務所の外に出た時は一人」という言葉も心に残りました。刑務所に入るということは社会から断ち切られてしまうことなのだろう。社長が身元引受人になってくれ、仕事と生活に必要なものを揃えてくれる。やり直したいと思う人たちが再び社会とつなぎあうためには、それはどんなに心の支えになるだろう、と思います。

また、宮下さんは仕事場が「なんでもフラットに言い合える関係」であること、同じような境遇を経て仕事を続けている人がいることは「自分も続けられるという安心感につながっている」とおっしゃっていました。

近藤先生とお二人との対話や会場からの質問から、カミングアウトや偏見あるいは先入観(近藤先生は“予期不安”という言葉を使っておられました)というテーマも浮かび上がってきました。内山さんからは「どう見られているのかはやっぱり気になる」という発言もありましたし、グループディスカッションの発表からは、「カミングアウトしてくれた時、やっぱりどう接したらいいのか、どう聞いたらいいのか、どこまで聞いたらいいのかという、ある意味ちょっと腫れ物を触るみたいな接し方になってしまうっていうのはあるんだなと思った」という感想もありました。

近藤先生からは、「カミングアウトすることってめちゃくちゃ怖いと思うんです。でも、やっぱり話すことに意味はあると思います。それを誰かやらないと、偏見とか解像度は変わっていかない。今日はお二人に来て話していただいたので、みなさんもだいぶ解像度が上がったのではないでしょうか」との言葉があり、宮下さんからは、「やっぱり最初は誰もが一歩引いてしまうと思う。だから対話していく中で、見極めて初めて話ができるんだと思いました。はっきり言って犯罪者がみんながみんな怖い人間でもないし、どちらかと言えば寂しい人間で、一人では生きられないから悪さして、あげくやっぱり一人でいられないからって再犯してとかしてると思うので、弱い人間だと思って見てたら、全然怖くはない。その辺はよくわかってもらえたかなと思います」。

詳細はぜひ、議事録でお読みください。次回は、拓実建設の柿島社長と『Chance!!』をつくってらっしゃる三宅さんに来ていただき、今度は経営者の目線から、支援をする目線からお話いただきます。