シブヤ大学

授業レポート

2016/2/1 UP

真室川で、真室川の人とがんばる。



自然、まち、歴史、文化、食べもの、お酒、暮らし
もちろん、そのものだけでも楽しめるけど、地元の誰かと一緒だともっと面白い。


そんな「新しくて面白い何か」を求め参加を決めた、人に会いにいく旅、今回は山形県の真室川町篇。


真室川に生きる「人」と出会いふれ合う、食べる、「人」と会う、そして食べる…
そんな二泊三日を通して多くのものを得た旅になりました。


1日目:12月12日(金)

19:16 東京駅発 
帰宅するサラリーマンでごった返す東京駅で集合。
仕事帰りにスーツのまま直接集合場所へやってくる参加者も…。


22:45 新庄駅着
暖冬のため、今年はまだ雪が降っていない真室川。
雲一つない夜空には驚く程多くの輝く星を見ることができました。
「この素晴らしさ伝えるにはどうしたらいいんだろう?」
「真室川に来て、しか言えないよね。」
なんだか旅の最初に一つ、何かを得た気がしました。


 


2日目:12月13日(土)


9:00 
佐藤昭夫さんは真室川イチの物知り名人。



「川や山のこと、植物のことは何でも知っている。
生きているうちにできるだけ多くの人たちにその恵みを教えたい。」


そう話す昭夫さんに教わりながら、土に手を突っ込み、服や靴を汚しながら参加者全員で一心不乱に里芋を掘りました。



掘った芋は持ちきれないほどたくさんお土産として頂きました。


10:30 
その後は、「まざれや」に移動し、「あがらしゃれ真室川」(真室川のおいしい食材を伝統的調理法で提供する農産加工組合)の櫻本さん、大沼さん、佐藤克子さん、佐藤かよさんに教わりながら、先ほどとった芋も合わせて調理実習を行いました。


 


食後はまざれやの沓澤さんから、真室川で耳から耳に伝わる伝承のお話を聞くこともできました。

「おいしいもの、おいしいものを追求するのではなくて、昔からあるもの、自然を大切にする。」


そんな真室川の生活や暮らしを大切に、丁寧に生きる真室川のお母さん達の想いに触れました。



14:30
お腹がいっぱいのままバスに揺られたどり着いたのは、築150年を超える古民家。
そこでお話を聞いたのは佐藤春樹さん。 


 

「真室川の人と、真室川で頑張る。」


そんな強い想いを持ち、春樹さんの祖父母が育てていた伝承野菜(地域の人々が古から守り受け継がれてきた野菜)、甚五右ヱ門芋の生産量を増やし、そしてより多くの人に届くよう活動を行っています。


伝承野菜の生産者の大半は高齢者であると言われています。そんな作り手とお客さんを繋ぎ、消費を増やすことで真室川の農業を支援する、それが春樹さんの目標です。

15:45
春樹さんのお話を聞いた後は、とある中学校へ移動。

株式会社庄司製材所の庄司和敏社長にお話を聞いたのは、廃校となった中学校を改築した製材所。
木材を加工するだけではなく、その廃材をエネルギーに変換し、それを再利用する、そんなことも行っています。


「この地域を、働く人を守りたい」



無くなりかけた町の中心であった学校からビジネスをやっていく、朝五時から自分が現場である全ての工場に足を運ぶ、それは庄司社長の真室川への想いがあるからこそだと感じました。


余談ですが、
「暖房の効いた暖かい部屋でキンキンに冷えたビールを飲む。」
それが庄司社長の考える「豊かさ」だそう。

みなさんにとっての豊かさってどんなものですか?

私にとっての豊かさってなんだろう。
そう考えることがこれからの生活における小さなヒントになりそうな気がします。


 

3日目:12月13日(日)


9:00 真室川町→金山町
「金山町には、同じ冬、春はない。(嫁いできて)いい所に来たなあ、そう思ったときに自分で選んだんだって。
そんな時に、息子、娘はどうなんだろう、もっとここを好きになって欲しいと思った。」





そう話す栗田和則さん、栗田キエ子さん夫妻との出会いからはじまった最終日。


その言葉の通り、金山町の良さを多くの人に知ってもらうための活動をしています。
「自分で考えて生み出す。そしてそれを利用し、暮らしていく。」
日本で初めてメープルサップの採取を成功させ、それを加工して商品を作る。
「暮らし考房」を設立し、人と繋がり、伝えていく。

「できないではなく、私だったらどうできるか」
「小さなことを時間をかけて続けていく」


大好きな山村のことを、自分のことを楽しそうに話す栗田さんがとても素敵でした。

9:40 
その後エコロジーキッチンへ移動です。
この建物、すごく歴史を感じさせる佇まい。
聞くと、昔この建物は旧蚕業試験場を再整備し、現在では住民の憩いの場になっているそう。


昔からあるものを壊すのではなく、大切に使い続けていく。そんな真室川の人の暮らしが垣間見えるようです。

10:15
そんなエコロジーキッチンで出会ったのは、サトウエミコさん



全員での調理実習。
見慣れない野菜に興味津々の参加者、普段しない料理に四苦八苦の参加者、先生!とエミコさんに作り方を聞く参加者。




「野菜の表面だけを見ないで、その後ろに何があるのかを考えて欲しい。
そこにある歴史、物語、想い、それを作ったのは誰なのか、それを知ってほしい。」


山形だけではなく、全国各地に飛び出して生産農家の方々のお話しを聞きに行くエミコさん。
大切な子供や家族に何かできるかなあ、というのは自分が考えることからはじまると話します。

それは小さなことなのかもしれません。でもそんな小さな心がけが、何か私の生活や暮らしを少し良いものへと変えていくんじゃないかな、エミコさんの話を伺い、そんな気がしました。



14:00
昼食の後、伝承野菜の復活・生産に取り組まれているお話しを話してくれたのは、真室川町役場の高橋伸一さん

「ないもの探しじゃなくて、あるもの探しをしなきゃいけない。」


高橋さんの地道な聞き込みなどの努力と地域の方々の協力、そうして伝承野菜の復活を成功させることができたと話します。


「守る、保存するだけではなく、それを生かしていくことが大切。」
『あがらしゃれ真室川』という本を出すなど、伝承野菜やその調理法を広めている高橋さん。まだまだ、新しい伝承野菜のあり方は模索中とのこと。

14:30
「クリエイティブという自分ができることで、大事だと思うことを伝えていく。」




東京で実家のお米を販売したことをきっかけに実家との距離が縮まり、広告会社を辞め、山形県新庄市へ戻ってきた吉野敏充さん。 


「いいお店、農家、それを知ることができる場所があればいいんじゃないか。」
吉野さん自身は農業を主にするのではなく、デザイン事務所を経営しています。
「Kito Kitoマルシェ」を主催したり、農家さん達に一年かけて会いに行き、本にまとめたり。

昨日の佐藤春樹さんや他の方々と方法は違いますが、目指す場所、大切にしているものは同じなのかもしれません。そしてそれはきっと新庄へ戻ってきたからこそ気付けたもの、そう感じました。

15:30 振り返りワークショップ
最後の締めくくりは、二泊三日の学びを共有するタイムです。
あっという間だったけど、とっても中身の濃かった二泊三日。


「真室川の人は、みんなやりたいことをやっている。
なんとかしなくちゃっていうんじゃなくて、ただシンプルにここが好きだから。」

「みんなまだまだ現役!パワフルな方々と出会い、私も頑張ろうって思えた。」

「地域のコミュニティ、その中でつながり、協力し、情報交換をする姿勢を学んだ。これは地方でも都会でも生かしていけると思う。」

「自分の主観で物やサービスの値段の低い高いを考えていたが、明日からはその金額の後ろにあるものを考えてみたい。」

「素敵な人の周りには自然に素敵な人が集まって、関係が広がったりいいものができていくんだなと実感した。」

「まるで常に情熱大陸を見ているようだった。終わりが気になるので、是非また戻ってきたい。」



一人ひとりの参加者が違った視点からの学びや感想を持つ一方で、全てに共感できる、そんな時間でした。

20:45 東京駅着
真室川の方々に頂いたたくさんの学びとお土産、そして少しの疲労を持って東京着。
二泊三日の人に会いに行く旅、お疲れ様でした!


自然、まち、歴史、文化、食べもの、お酒、暮らし
もちろん、そのものだけでも楽しめるけど、地元の誰かと一緒だともっと面白い。

そんな新しくて面白い「何か」を求め、参加を決めた、人に会いにいく旅。

その「何か」はきっと、東京だから、地方だから、そんなものはないということ。
自分の大切な人がいる、自分が選んだその場所を、
そして一日一日を真室川の人たちのように大切にしていきたいな。そんなことを感じたこと。

抽象的な表現ではありますが、明日からの生活が少しキラキラして、何か違ったものになりそうな予感がします。



さて、今回の人に会いに行く旅は、あくまでもダイジェスト版。


今回の旅の参加者が再び、真室川を訪れる。
この授業レポートを読んでくれているあなたが、真室川を訪れる。

そうしてもっともっとたくさんの「人」に出会うことで、新しい何かに出会えるのかもしれません。



それでは、また次の旅でお会いしましょう!




(レポート:長門遥)