シブヤ大学

授業レポート

2015/3/9 UP

刺繍糸でつくる、自分だけのアクセサリー
〜ものづくりの街での仕事と暮らし〜

【私のまなび】


①好きをとことん追求するとカタチになるだけでなく、それで周りもしあわせになる
②人とのつながりはやっぱり財産
③仕事と暮らしがつながる新しい働きかた


【先生のことば】


「とにかく外へ出よう!」


 何のツテもなく上京し、東京での活動をどう広げるかを模索されていた先生が行なったことは、とにかく人の居る場に出ること。行動だけでなく心もオープンにしたからこそ、人の輪が広がるにつれて活躍の場も広げていくことができたのだと思います。


【授業レポート】


 とてもよく晴れた休日の昼下がり、開始5分前に全員集合!なモチベーションの高い参加者の皆さん。受付時には緊張した面持ちでしたが、展示されていた先生のアクセサリーを見て、内心とってもウキウキされているのが伝わってきました。


 さっそく作業が始まるかと思いきや、参加者の皆さんの緊張をほぐすために「妄想他己紹介」を。自分の隣に座っている初対面の人を、妄想力(という名の想像力)をフル動員させ、「○○出身で、△△△が好きな人です」などと紹介しちゃおうという、ちょっとしたレクリエーションです。皆さんとまどいながらも上手に他己紹介してくださいました。そして、答えあわせをするように自己紹介も。趣味や家族構成がばっちり当たったりもして盛り上がり、笑顔が一気に増えて緊張がほぐれたようでした。


 そして、先生の藏藤(くらふじ)さんのお仕事と私生活のつながりについて、写真を交えながらお話しをうかがいました。ずっとものづくりに携わってきた藏藤さんが、会社を辞めて上京し、クリエイターとしての道をどう歩んできたのか。順風満帆ではなく、屋外イベントに参加はするものの、なかなか東京での活動を広げられずにいたそう。とにかく外へ出て、人の集まる場に参加するなかで、とあるクリエイターさんとの出逢いからすべてが始まったとのこと。いまや友人は100人超!いまや「ものづくりの街」としてクリエイターがたくさん住んでいることで有名な墨田区ですが、実はそれを知らずに移り住んだという話には内心びっくり。きっとクリエイターとしての運や才能が、藏藤さんを墨田区に引き寄せたのだと思います。志の高い仲間たちといろんな会話をし、協力し合い活躍の場を広げていく。たくさんの素敵な人と巡りあわれたのも、藏藤さんの明るくまっすぐひたむきな人柄ゆえだと思います。そして、管理栄養士でもある藏藤さんはその資格を活かして、本職とは別に区で行なわれている食に関するイベントのお手伝いをされているとのこと。助けてもらうだけではなく、地元や仲間に恩返しがしたいという気持ち。仕事と暮らしが別個のものではなく、つながって、境界線がなくなっていく、新しい働きかた。きっとこれからの社会に必要な考えかたなのではないかと思います。なかなか聞くことのできない貴重なお話しでした。


 参加者の皆さんと藏藤さんの心の距離が縮まったところで、刺繍糸アクセサリーつくりに挑戦!刺繍糸とビーズを、藏藤さんオリジナルの方法でアクセサリーに仕立て上げていきます。刺繍糸、と一口に言っても「こんなにたくさん?!」と思うほどの色があり、選ぶのが大変そうでも楽しそうでもありました。藏藤さんのレクチャーと、作り方シートを見ながら、針を上に下に左に右に動かしていく皆さん。端から見ていても、何をしているのかわからないほど細かな作業を、懸命に進めていきます。じっと押し黙って作業するのではなく、参加者同士でも「ここはどうするの?」「これで合っているかな?」と助け合う、わきあいあいとした温かい雰囲気が印象的でした。1時間ほどかけて皆さんが完成させたアクセサリーパーツは、小指の爪ほどの大きさ。それほど技術が必要とされたということですが、繊細で愛らしい作品ができあがりました。そのパーツを使って、藏藤さんがピアスやイヤリングに仕上げてくださいました。しかも、実際販売されているアクセサリーと同じパッケージに入れて。世界にたったひとつの、自分だけの素敵なアクセサリーを手にした皆さんの柔らかな笑顔が、感動や達成感を物語っていました。できあがって終わり、ではなく、そこから参加者同士や藏藤さんとのおしゃべりに花が咲き、この場を閉じてしまうのがもったいないくらいでした。ここまで参加者と先生がフレンドリーに関われるワークショップはなかなか無いかもしれません。


 おしゃれで素敵なアクセサリーはお店にいけばいつでも手に入ります。ですが、時間や手間をかけ、自分の手でつくりあげたアクセサリーは大切な宝物になったのではないかと思います。藏藤さんの笑顔とアクセサリーが、みんなにしあわせを運んでいるのが感じられる授業でした。


 


Fil et bijou(フィル・エ・ビジュー)
http://filet.stores.jp


フランス語で「糸とビーズ」の意味からきています。「祖母からもらったたくさんの刺繍糸」を原点にガラスビーズに何度も糸を通す独自の手法を用い、色彩豊かなアクセサリーを製作しています。


 


(写真:小林玲/レポート:前田涼子)