シブヤ大学

授業レポート

2015/1/9 UP

自己流で良いのかな?
~アタマとカラダで学ぶ一歩先のランニング教室~

ランニング&マラソンは冬が本番のスポーツですよね!
ただ、ランニングって気軽に始められる分、どうしても自己流になってしまい、あれ?これってどうなの?
もっと速く走れるようになるためにはどうしたら?と多々悩みが増えていきます。
そんな今回の授業はランニングにまつわる疑問を解消しようということで、パーソナルスポーツトレーナーの
藤沢さんと高校の国語教師でありながらスポーツトレーナーの石山さんをお招きし、藤沢さんからはスポーツを
するうえでよく耳にする「乳酸」についてのお話を、石山さんからはより省エネルギーで筋肉を動かすためのコツを教えていただきました。

~「乳酸がたまると疲れる」というのは誤解!?~
まず初めに藤沢さんから“乳酸”に関するお話をしていただきました。
みなさん、乳酸って体を動かすと出てきて、たまりすぎると体に悪いというイメージをお持ちではないですか?
筋肉は糖分をエネルギー源の一部としているので、筋肉が中強度の負荷を受けると筋肉の中では糖の分解が高まります。
ですが、酸素供給が追い付かないと乳酸値が蓄積されて筋中に乳酸がたまっていきます。
筋中に蓄積した乳酸は血中を介し、肝臓に送られここで糖へと分解されます。そして、糖に変換された乳酸は、
またまた血中を介し、遅筋、心筋、脳内へと運ばれていきます。
遅筋&心筋ではミトコンドリアがエネルギーへと変換してくれますし、脳内ではみなさんご存知の通り脳の唯一の
エネルギー源は糖なのでそのまま使われるというわけです。
なんと、体の中でこんな素晴らしいリサイクル構造ができあがっていたとは、、!!
つまり乳酸は体を動かすためのエネルギー源だというわけですね!


~ランニングでよく聞く「乳酸が溜まって終盤失速した」というのはウソ?~
上記の説明からいうと「乳酸が溜まった」という状態は“筋中にエネルギー源の糖がある”という状態だと捉えることができますよね。
乳酸は筋肉がエネルギーとなる糖を分解した結果生じるものですから、筋中に糖分がたくさんあり、
それをしっかり分解できている人は筋中の乳酸値も高くなります。逆に筋中の糖分が枯渇(低血糖)し、
糖が分解されなければ、比例して乳酸値も低くなるということです。
つまり、乳酸が溜まっている状態は筋肉にとってはうまく機能できている状態なのです。
では、なぜランナーは後半失速してしまうのでしょうか?
藤沢さんによると、疲労の原因は①血中の酸素濃度低下②筋中の低血糖③遅筋の鍛え不足だということです。
それぞれを解消するには、①はVO2max(最大酸素摂取量を上げて)血流を良くする。②はエネルギー補給で回復可能。
③に関しては中負荷の筋トレをなるべくたくさん長い時間をかけてやると良いそう。

【最後に私が個人的に一番衝撃的だった事実をひとつご紹介します】
ランニングは片足を踏み出すごとに片足に体重の約3倍以上の負荷がかかるそうです。
つまり、ランニングをするということは筋肉を破壊する行為だとか。
えええーー筋トレのつもりでやってたんだけどー(汗)という声が聞こえてきそうです。
初期の筋トレとしては良いそうですが、ある程度長時間ランニングをすればするほどエネルギー源が枯渇し、
筋肉を分解してエネルギーを作ろうとするので筋肉量が落ちる。とか。。。
また、基本的に糖と脂肪を消費して走り、糖が枯渇して来ると脂肪代謝をメインにして走る。
脂肪を減らすには低強度のスローペースで走れば脂肪代謝がメインに働いて燃焼はされるとのこと。。
強度の高いランニングになると脂肪は燃焼しづらいそうです。

つまりダイエットのために走るといいつつ、甘いものをつまみ食いしながら走ってもいつまでたっても体の脂質は
燃焼されないので、ダイエット目的のみなさんは気をつけましょう!!

後半は石山さんより効率的な筋肉の動かし方について、実際に体を動かしながら教わりました。
~筋肉の省エネルギー化とは?~
お正月、家族や親戚一同で集まるとなにかカードゲームやボードゲームをする機会もありますよね。
そんな時、「はいお父さん負けたからデコピーーン!」って普段あれこれしつこく言われていたらここぞと思って
思いっきり痛いやつくらわせたいと思うじゃないですか?(あれ、私だけ、、、?)そんな時ってどうします?
親指と中指にぐっと力を入れてパワーが溜まったなと思ったときに、いっきに親指を離して中指がお父さんの
おでこにクリティカルヒットするはずですよね?これが、筋肉がパワーを発揮する構造となります。

わかりやすく言えば輪ゴムを思い出して下さい。ビンビンに伸ばした輪ゴムを離すとビューンと飛んでいきますよね。
逆にだるんだるんな輪ゴムを離してもその場にぽとりと落ちるだけ。
つまり、筋肉は縮めることでパワーを放出しますがその前には必ず伸ばす行為が必要になります。筋肉を縮める前に伸ばす過程があることで、より大きなパワーを発揮することができます。
人間の筋肉はうまくできていて、伸ばしっぱなしにならないように神経が反射して、このまま伸ばし続けたら切れる
という状態になると急激に引き伸ばされると危険を察知し、神経の反射で勝手に縮まります。これを「伸張反射」と言います。腱も、伸ばされたらもとの状態に戻ろうとします。このサイクルがうまくできているのがカンガルーで足の腱が異常に長く、
地面に足が着いた瞬間に筋がぐっと伸びその反射で1回に7メートルも進むことができます。

これをランニングに活かすと、地面に足が着いた瞬間にぐっと筋と腱が伸びていることを意識し、
瞬時に縮めることが重要だそうです。※地面への接地時間が長いとその分エネルギーが放出され弱くなってしまう。
また、動かしたい筋肉の反対側の筋肉に力が入ってしまうことで、お互い相殺してしまわないように、反対側の筋肉は緩めるように意識することも重要だと石山さんはおっしゃっていました。
例えば、お辞儀をしようとするときに背筋に力をいれてしまってはうまく上半身を曲げることはできませんよね。

また、テーマが“省エネ化”ということで大きく無駄な動きをしないことも大事だと教わりました。
ランニングでは膝をあまり曲げすぎないことを意識しなければいけませんが、ひざが沈んでしまう原因は
なんとお尻にある中デン筋という筋肉!

では、みんなで鍛えようじゃないかということでみなさんお待ちかね、実技の時間になりました。生徒の皆さんは2人1組になり、先生に指示された筋トレをお互い正しくできているかどうかチェックし合いながら和気あいあいと取り組まれていました。
石山さんからのまとめは体を動かし続けていると脳から「縮め」という命令が出続け、運動をやめてもしばらくはとまらずそのまま放置しておくと筋肉が少し縮んだ状態で固まってしまうので必ず、ストレッチをすることということでした。また、これは覚えておいてほしいのですが、ひとつのストレッチにかける時間は20~30秒でないと効果がないそうです。


今回の授業は、ランニング超初心者のわたしには少し難しい部分があったものの、乳酸の発生する仕組みや
筋肉の動かし方など目からうろこなお話もたくさんありとても楽しくお聞きすることができました。
参加者の皆さんからは積極的に質問がでており、みなさんの意欲あふれる授業だったと思います。
今回はあいにくの雨で実際代々木公園を走ることはできませんでしたが、それでもストレッチや筋トレなど楽しんでくださった皆さんが多く良かったと思います。

(写真:ボランティアスタッフ 荒井雅代、レポート:ボランティアスタッフ 加藤白峰)