授業レポート
2014/11/21 UP
地域づくりの時代に
4限目:「地方に必要な編集力」
Hikarie で行われた1から4限までの連続講義 “地域づくりの時代に”。
最後にお話していただいたのは、編集者で、有限会社りす代表の藤本智士さんです。
藤本さんは編集というお仕事をされていますが、一言に編集といっても、その仕事内容は様々。本の編集や雑誌のライターをすることは想像できますが、それ以外にもご自身で本を執筆されたり、ものづくりやイベント運営、DVDのディレクションなどもされているそうです。
藤本さんに惹き付けられる不思議な魅力を感じ、私自身、話を聞くことに夢中になって、講義中レポート担当であることを忘れてしまうほどでしたが
「編集」の魅力や、物事と向き合う時に何を大切にしたら良いかなど、たくさんの発見があった時間でした。
このレポートでは、大きく分けて以下の三つのことをお伝えしたいと思います。
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・編集の原点となった経験
・自分の目で本物を確かめること
・秋田県発行「のんびり」について
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■編集の原点
藤本さんが大学を卒業して上京し、様々な人と出会う中で今の編集の原点となった機会がありました。それは自分でフリーペーパーを作り始めたこと。
フリーペーパーを多くの人に見てもらえるようになり、様々な人に執筆のオファーをする中でプロフェッショナルの人々と出会います。
彼らの多くが言ってくれたのは「原稿料はいらないから。」という言葉。
自分のフリーペーパーに対する気持ちが伝わったことに感動し、それと同時にどうしたら恩返しできるか考えた際に
「僕自身がプロフェッショナルになろう。」と決意し、本格的に編集というものに取り組んでいくようになったそうです。
すいとう帖
編集の力を強く感じたのは、藤本さん自身がつくった「すいとう帖」という本でした。
元々の事務所は大阪にあり、小学生が学校帰りにふらりと寄っていくような、そんな場所だったそうです。
ある日、ふと女の子が「飲む?」と言って、差し出してくれた水筒のお茶がキンキンに冷えていた。
その感動を伝えたいと思い、水筒のある暮らしをまとめた本として「すいとう帖」を作ったところ、
多くの人に評価され、水筒というものが暮らしと結びつけられて新たな視点をもって見直されたとのこと。
“マイボトル”という言葉をつくったのも、藤本さんだそうです。驚きました。
それまでずっと、世の中を変えたいだとか、理不尽なことがあるなあとか、そういった気持ちが心の奥底にあったそうですが、
すいとう帖をきっかけに、編集の力で世の中に影響を与えることができると強く感じ、編集というものにさらに惹かれていったそうです。
■自分の目で本物を確かめること
藤本さんは雑誌Re:S(りす)をつくる中で、自分の車で日本中さまざまなところをまわったそうです。
そのお話を聴くなかで心に残った言葉がありました。
・「本物は、検索して出てくるようなものじゃない。」
・「うちのおかんが “ええやん” っていうものをつくりたい。」
「本物」は検索で出てくる手前にあるもの。
有名だから、だとか、世の中で流行っているから、だとかそういった理由ではなく、
自分の足で現場に赴き、自分の目で本物を確かめる。そして自分だけが拾えたことを広めたい。
自分自身が心から感動したことを広めていきたい。普通の人が、普通に、“いい”と感じられるものをつくりたい。
・「設計図を書きすぎずにやる。」
すべて予想のできる中で完結させるのではなく、7割は設計図を書いても残りの3割はポテンシャルで勝負する。そこから良いものが生まれる。だから取材に行く時も、目的地に向かう途中でおもしろいことがあれば躊躇せずそこにとどまり、結局目的地へ行かず取材が終わることもよくあるとのこと。
そう話す藤本さんから、本物を追い求めていく強い気持ちが伝わってきました。
■秋田県発行「のんびり」
秋田県が発行している、地域情報紙「のんびり」。
県内と県外の人が内からと外からの両方の視点を持って一緒につくっているフリーマガジンです。
経済指標という視点から見れば、日本の中で秋田県は高くはありません。
しかし震災後、一概に経済指標で地方を見るのではなく、違った視点で地方を見るなど価値観が変わってきました。
そのような時代の流れの中で、秋田から日本のこれからのビジョンを発信していくことに意義がある、秋田という地方から日本の未来を変えようという意識を持ってやっている、と藤本さんは話します。
「編集者って、有名人を広めるのではなく、誰も知らないような人を”すげえ!“と言って広めるものではないでしょうか。」
「編集とは、現場でものつくっていく、ええもんつくっていく。それで世の中変えていく。それが編集の力だと思います。」
本当に良いものとは何なのか、良いものを良いと感じられる心を持つ自分であれているか、
一つのものの見方を少し変えるだけで世界がとっても魅力的に見えてくる・・・・
藤原さんのゆったりとした口調から、ひしひしと熱い想いが伝わってくる中で
そんなことを深く考えさせられる時間でした。
(ボランティアスタッフ:深澤まどか)