授業レポート
2014/10/20 UP
「渋谷の大改造計画に潜入」
~何も止めずに解体せよ!~ 2
「渋谷の大改造計画に潜入」~何も止めずに解体せよ!~ 授業レポート
文責:箕田 真衣
東急東横線 渋谷駅の地上ホームが閉鎖してから、1年半。それから渋谷駅周辺が白い布で覆われて、日々工事が行われるようになりました。工事以前でも迷路のような渋谷駅が、より迷宮化してしまってコリゴリなんて…。
でも、なんで工事が行われているのか、どんな工事が行われているのか、工事が終わったら渋谷はどうなるのか、意外に知らないことも。じゃあ、白い布の内側に入ってみよう!ということで、現在行われているは「東急百貨店東横店東館」 (以下、東急百貨店東横店)の解体工事現場に社会科見学に行ってきました。
今回の先生は、東京急行電鉄の永持さん。この解体工事現場で工事の指揮を執られています。身体中から、東急LOVEがあふれ出る素敵な先生です!
まずは、解体工事現場を見学する前に、座学にて渋谷の歴史、東急百貨店東横店の歴史について学びます。
「今、渋谷には何路線の電車が乗り入れているかわかりますか?」と永持さん。
そういえば、じっくり数えたことがなかったような…答えは、8路線。
この8路線が迷路のように乗り入れているのが渋谷駅の特徴。この特徴であり、このようになってしまった理由は、歴史を紐解くことで答えが見えてきました。
永持さんがおっしゃるには、今回の解体工事は史上最大に難しい工事だそうです。
それは、“何も止めずに”解体しなければならないこと。
解体工事現場の周辺には、JR山手線、埼京線、東京メトロ銀座線が走っています。
その他に、国道246号、明治通りが走っており、東急百貨店東横店の地下には、渋谷川が流れています。知っていましたか?東急百貨店東横店は、川の上に建てられたデパートなのです。
生徒の皆さんが座学を受けた場所は、東京メトロ銀座線の線路の下。建物の中なのに、線路の下と思う方もいると思いますが、銀座線は、東急百貨店東横店の中に線路と渋谷駅のホームがあるんです。なので、授業中に電車が通るたびに、ガタゴトという車両の音が響いていました。
ということは、東急百貨店東横店を何も考えずに解体してしまうと、銀座線のホームと線路が崩れてしまう。加えて、JR埼京線も東横店の2階部分のすぐ隣を走っているので、解体してしまうと線路が崩れてしまう。
だから、史上最大に難しい解体工事と言われているそうです。
座学でいろいろと学んだ上で、いざ解体工事現場見学へ。
工事現場なので、エレベーターはありません。一生懸命階段を上って、東急百貨店東横店の屋上8Fを目指します。5Fくらいから足が震え始めてしまいましたが、参加者の皆さんと声をかけあって、必死に上りました。
やっとのことで8Fに到着。そこには、澄み渡るほどきれいな青空が待っていました。
渋谷でこんなに広い空を見るのは初めてです。今は、撤去されてしまいましたが、当時は屋上遊園地などがあったそうです。
そこからは、現在すべて解体されてしまった東1号館跡の下に、渋谷川が流れている様子や、東急東横線のホームが解体され、国道246号線を渡る線路跡を見ることができました。学生時代に東横線ユーザーだった私としては、あの線路が無くなってしまうのかというのが、少し寂しい気持ちでもありました。
次に、6Fに降りて、中央館の解体工事現場へ行きます。
中央館の下には、東京メトロ銀座線が走っており、止めることができないため、普通に解体できる上層部分7F,6Fはそのまま解体していきますが、最後の5F部分は、東館と中央館の7階からワイヤーで5Fの床を吊って解体していきます。この5Fを吊って解体するということが、前代未聞の工事だそうで、今回の解体工事の一番難しい部分になるそうです。
最後に、地下に行き、東急百貨店東横店の営業当時に使われていた、荷物搬送用のトロッコを見せていただきました。東急百貨店東横店は、荷物を搬入するための入り口が建物の周りに取れなかったために、国道246号線の南側に搬入口を設置し、そこから地下200mをトロッコに乗せて荷物を搬入していたそうです。このように、東館の中にはいろいろな工夫が施されていたんですね。
解体工事現場見学も終了。今回の授業の中で、印象に残った言葉。それは、建設中の建物を見るというのは、完成以降もその建物を見ることができます。しかし、解体中の建物は解体してしまったら一生見ることができなくなってしまいます。だからこそ、渋谷の街の中で工事そのものを楽しんでもらいたい。
無くなってしまうものだからこそ、そこにこれまでの思いでなどを詰め込んで、解体を見届けていくことも、一つの楽しみであり、私たち自身の生活の中で、次のステップに進むための学びにもなるのかなと思いました。
渋谷での街全体の工事は、すべてのプロジェクトが終わるのが2027年。現在、解体工事を行なっている東口一帯の工事は、2020年完了を目指しています。それは、東京オリンピックの際に、不便さが解消された渋谷駅にて外国からのゲストをお迎えするため。この授業をきっかけに、渋谷の街にいる私たち全員で思い描く青写真に向かっていく姿を見届けていきたいと思いました。