授業レポート
2014/10/18 UP
スクール・オブ・ロック!
~ガッコウでは教えてくれないDJジョンさんの音楽の授業~
「アメリカでのステージは多少遅れて始まるのがロックなんだ」
そんな冗談のようなJohnさんの一言から10分遅れで始まった「スクール・オブ・ロック!」。
今回の先生Johnさんは、日本で生まれて渡米し、レコード店のアルバイトをきっかけに音楽関係のお仕事を次々とこなし、お仕事のご縁で日本に帰ってきたそうです。現在はDJやMCなどをこなしながら『FM dining・cafe・bar』でおいしいごはんと素敵な音楽を提供しています。
アメリカ仕込みのロック精神からでしょうか、その瞬間をとにかく楽しませることがJohnさんの信条でありロックの在り方であるようです。
今回の教室でありJohnさんの経営するお店でもある『FM』は、おしゃれでかつ温かみのある雰囲気。店内には所狭しとCD、DVDが並び、サインやポスターも目を引きます。
授業はランチタイムから始まりましたが、その話題も店内に飾られているものや流れているBGMのことばかり。Johnさんもお店の仕事をこなしながら生徒の会話に混ざり、話題を膨らませてくださいました。「その映画のサントラはとてもいいね、だったらこっちの映画もいいよ」と映画の貴重なパンフレットまで出して説明してくれるJohnさん、とっても素敵です。
おなかがいっぱいになったところで仕切りなおして、Johnさんの講義が始まりました。
ロックの始まり、と聞くとビートルズを思い起こす方が多いと思いますが、ロックのルーツは1950年代のブルースにあるとJohnさんは言います。ビートルズは、芽を出し始めていたロックを全世界にハイスピードで広めた立役者なのだそうです。そして「60年代から70年代のロックが僕は一番好きなんだ。きちんと自分たちで作っている音楽、っていう感じがするからね」といい、Johnさんの語り口がいよいよヒートアップ。ロックの最高の祭典「ウッドストック」と最悪の祭典「アルタモント」によるロックに対するイメージの変容や、Johnさんが愛するレッド・ツェッペリンの魅力などを熱く語りました。
「ロックのNo.1であることのポイントは、ライブで素晴らしい音楽を提供できること、オーディエンスと一体になれることだ」「毎回進化していくアーティストが一番好きだ」というJohnさんの言葉に、ロックにとどまらないアート(芸術)の真髄が隠れているように感じられました。
Johnさんの講義の魅力は、店内に設置されたTVでライブ映像などを流してくださること、そしてJohnさんご自身がライブを観た経験やお仕事中にバンドマンにお会いした話を面白おかしくふんだんに盛り込んでくださることにもあると感じました。ポール・マッカートニーにサインをもらったエピソードを実物を見せながら話し(「彼は本当にナイスガイなんだ!」)、レッド・ツェッペリンのライブ映像を流して感嘆のため息をつくJohnさん(「やっぱり彼らはかっこいい…!」)。彼らをリスペクトしているのが伝わってきます。生徒の皆さんもすっかり満足気。
少し休憩を挟んで、後半の講義は80年代以降にうつります。
80年代以降は音楽性よりも歌詞やルックスを重視する風潮がおき、ニュー・ウェーブ(シンセサイザーの登場)やMTV(映像で音楽を楽しむ)など新たなスタイルが生まれました。ライブであることの重要性が薄れていくこの風潮をJohnさんはあまり好ましく思っていないような印象を受けましたが、そんな中でもイチオシのアーティストをあげるときは生き生きとしていました。特にマイケル・ジャクソンのライブ映像を流したときは、映像を用意したJohnさんが生徒以上に興奮していたのが印象的でした。
2000年代にネットが登場し、いつでもどこでも音楽を聴けるようになったこと、今は多くのアーティストが集まるフェスタが主流になり個々のライブが減ってしまったことに触れて、Johnさんによるロックの生態のお話は幕を閉じました。音の質が低いデジタルだけでなく、きちんとアナログの生きている音を聴いてほしいというJohnさんの思いが伝わってきました。
最後の質問の時間に、興味深いやりとりがありました。
「Johnさんにとってのロックとはなんですか?」と生徒の一人が質問をしたところ、「それが一番難しい質問なんだよなあ」と笑いながらJohnさんが返します。
「…アート(芸術)は、人それぞれの受け方があっていいと思うんだ。そして僕にとっては、やっぱり、“no music no life”だなあと。僕はいろいろ味わうのが好きだから、ロックだけじゃなくジャズも聴くしクラシックも聴く。聴けばもっと聴きたくなるしもっと知りたくなるんだ。そしてロックは…僕の人生全て、かな。ソウルフード。音楽を聴いていると自分になれるし、安心できるんだ」
時代ごとの必聴のアーティストをJohnさんが時間ギリギリまであげて生徒がメモしたり、放課後にはJohnさんイチオシの映画を鑑賞したり、最後まで、終わったあとまで活発な楽しい授業でした。休憩時間にはJohnさんから積極的に多くの生徒と1対1での会話を設けていた様子も印象的でした。
『FM』ではリクエストした音楽や映画を流してもらうこともできます。音楽について、映画について、心ゆくまで語りたい方は、どうぞ『FM dining・cafe・bar』まで。
【私の「まなび」】
・決め付けないでいろいろな音楽に触れていくことで、好きになれるものに出会えるかもしれない
・とにかくその場を楽しむこと、楽しませることが大事!
【先生の「ことば」】
・「ロックは楽しいのが一番だ!」
・「ライブで素晴らしい音楽を提供し、オーディエンスと一体になれるのがロックのNo.1のポイントだ」
・「毎回進化するアーティストが一番好き」
・「アート(芸術)は人それぞれの受け方があっていい」
・「音楽を聴いていると自分になれる、安心できるんだ」
(写真:インターン 梶文乃 レポート:ボランティアスタッフ 高橋遼)