シブヤ大学

授業レポート

2014/10/18 UP

廃棄花再生プロジェクトと考える。
"もったいないもの"プロデュース

 今月のThink Collegeでは、「SHY FLOWER PROJECT」について、古橋あや香さんにお話しいただきました。


「SHY FLOWER PROJECT」とは“助けてと叫ぶことの出来ないすべての花の為に”をコンセプトに、咲いたまま捨てられる廃棄花をうつくしく可愛く、再生させるプロジェクトです。廃棄される花を会場やお花屋さんから回収してドライフラワーにし、それをフラワーデザイナーがコサージュやリースなどにして新しく蘇らせる活動をしています。運営に携わる古橋さんに、このプロジェクトが生まれるきっかけから実現に至るまでをお話いただきました。


 ある日突然、二子玉川駅で「きれいなまま1日や数時間で捨てられてしまう装飾花はもったいない!」と思い立ったという古橋さん。そこから、お花屋さんに160件電話をするなどしながら装飾花の現状を知っていきます。そこで花業界内での流通はあるものの、特定の場所にその流れが留まっていることを知った古橋さんは、「では一般の人に伝わるにはどうしたらいいだろう」と考え始めます。


 そして以下のことを考えたそうです。


○プロジェクトの人格(年齢、性格、住んでいる場所、夢など具体的に設定してプロジェクト自体を擬人化する)


○ネガティブな側面をポジティブに変える(プロジェクトの強みになる)


○壮大な夢をもつ(そのプロジェクトが活躍するメディア、活動の場を設定)


○PRに使用するビジュアル、主な活動を決める 等々


 「SHY FLOWER PROJECT」の目的は廃棄花を「なくす」ことではく、一度飾られた装飾花は捨てるもの、という「価値観をかえる」「人の意識を変える」ことだと古橋さんは考えました。では、価値観を変えるにはどうしたらいいのでしょうか?


その第一歩は「人に伝えること」です。そしてより多くの一般の人に伝わるように「廃棄花をアイドルとして復活させよう」と思い至りました。廃棄花を人間にみたてると、それはどんな人でしょうか?


古橋さんは 一生懸命で自分を知ってほしいミーハーな23歳の女の子をイメージしました。その子がコラボレーションしたい相手は誰だろう、掲載されたい雑誌は何だろう…というように、実現可能性とは関係なく、この子がコラボしたいと思うだろうターゲットにだけ的を絞り、具体的な夢を描いていきます。このように人格を決めることで、統一したブランディングが叶うとのこと。


そしてその夢(ビストロスマップの花を回収したい、ほぼ日手帳の柄になりたい、ファッションショーを花まみれにしたい、等々)をH.Pで発信したり、活動をメディアに掲載していると、応援する人や一緒に活動したいという人が集まってきたそうです。


 そこで、授業では課題に取り組み、プロジェクトのプロデュース方法を考えてみました。お題は「ラーメンの 残った麺で 墨絵を書く」というもの!?「捨てられる麺の価値を変えよう」というのが目的です。5人1組になって和気藹々と話し合うこと15分。様々なおもしろいアイディアが出てきました。その一部をご紹介すると…


○プロジェクトのポジティブな面:麺の残りかすを絵具にするということ自体がばかばかしくて面白いということで注目を浴びる。


○人格:ラーメンの庶民的で馴染み深いというイメージや、残りものを集めるということから哀愁漂う50代窓際族と設定。(タレントでいうと温水洋一さん)


○活動:作った絵具を商品化し、それを使って漫画家さんに作品を描いてもらおう。


 


ちなみに、古橋さんは


江頭2:50さんが「DEGARASHI2:50」となって毎日深夜2:50に全国どこかの店に残りのラーメンを回収しにいくというプロモーション案を出していました…!


 このように、一見ばかばかしく思えることでも、何人かでちょっと真剣に考えると面白いアイデアが出てきます。「みんなに、いいプロジェクトを考えて、社会をいい方向にかえていってほしい」と語る古橋さん。日常生活で「これってもったいないな」「違う方法はないのかな」とふと思っても、独り言では個人的なことのまま。少しでもいいことを思いついたら人に話してみよう。誰かに伝わることで仲間ができ、社会が動き出し…地球が変わる。「自分も社会を変える一員だと思ってほしい」という古橋さんの実感のこもった力強い言葉で授業は締めくくられました。


 ■人に届かないと人は変わらない


 古橋さんのお話はプロジェクトをいかに人に伝え、広めるか、ということに焦点が当てられていました。それは彼女が(株)リクルートで企画営業をしていた経験からきているのかもしれません。古橋さんは、自分の中にしかないもやもやしたアイデアをとにかく具体的に、明確にして人に伝えようとしているのだと思います。人格化する、というのは具体化のわかりやすい例です。それを聞いて、「人は得体のしれないものは応援しないよなぁ」と思いました。プロジェクトの活動や目標が具体的であればあるほど、見る人は自分の応援する姿も具体的に想像でき、参加しやすくなるのかもしれません。


参加者の中には花屋さんで働く方もいらっしゃいました。その方曰く、結婚式等で飾られた花を来場者にお配りしたり、自宅に持って帰ることなどを提案すると「もったいないけど荷物になるから捨ててほしい」という人も多いそうです。それは自分の家で飾るか、捨てるかしか選択肢がないからではないでしょうか。「SHY FLOWER PROJECT」のように再利用する選択があるのだと知れば、その方法をとる人が増えるのかもしれないと思うと、人に伝わることの重要さを感じます。


 ■誰かにものすごく嫌われるくらいじゃないと、誰かにものすごく好かれることはない


 これは授業の中で古橋さんが言っていた言葉です。「SHY FLOWER PROJECT」はターゲットを特化しているため、それ以外の方々からは批判をうけることもあるそう。でも、批判をうける度に「自分のやっていることは間違いじゃなかったと思う」という古橋さん。誰にも批判はされないけれど誰の心にも響かないことではなく、批判をうけても誰かの心に響くとんがったことが、社会を変える動きにつながるのだと改めて思いました。


 ■忙しくても、ソーシャルプロジェクトはできる


 コピーライター・CMプランナーの仕事をする中、SHY FLOWER PROJECTを運営し、今年出産もしたという古橋さん!自分はそんなに沢山のことはできない、とつい思ってしまいますが…


SHY FLOWER PROJECTの活動は、参加したい!という人からの連絡が古橋さんのもとに多く届くそうです。その方々と、Facebookやメールを使って連絡をとり、花の回収等を分担して行い、全部を一人でやるわけではないからできるのだと話していました。確かに、一人であれもこれもやろうと思うと、考えるだけで嫌になってきます…だからこそ、「これっていいかも!」というアイデアが浮かんだら、人に伝えて、巻き込んでいく力が大事になってくるのですね。  


今回は人に伝える大切さと方法を考えるきっかけとなった授業でした!

(レポート:ボランティアスタッフ:中野恵里香)