シブヤ大学

授業レポート

2014/5/29 UP

着る人もつくる人もしあわせになる?!
~フェアトレードから学ぶしあわせになるヒント~

皆さんはモノを買う時どんな基準で買いますか?
値段の安さ?トレンド?色?素材?

ふと商品を手にした時、私たちはそんな基準で悩みますが、「誰がどうやって作ったか」を考えてモノを買うことは珍しいかもしれません。ピープル・ツリーのつくるものは人と地球にやさしい貿易のしくみ“フェアトレード”によってつくられています。

今回のThinkCollegeでは、ピープル・ツリーの鈴木史さんと一緒に、着る人もつくる人も幸せになる暮らしについて考えました。ピープルツリーには「フェアトレードの10の指針」というものがあります。授業は、この10の指針を、鈴木さんなりに噛み砕いてくださったものをお話しいただきながら、進んでいきました。


1、機械より仕事の機会を


たくさんの人に仕事をつくること。発展途上国で仕事がない人は主に女性や、障がい者、教育を受けていない人です。私たちは彼らに仕事の機会を増やしています。


2、いつでも誰が作ったかわかる事。


「今着ている服が誰が作ったのか言える人はいますか?まわりの人と話し合ってみてください」
鈴木さんの呼びかけで、会場の人達で自分の服にどんなストーリーがあるのか話し合いました。ふと自分の服を見た時「あれ?これどこで作られたんだろう…」。今着ている服が”どこでどうやって作られたか”考えもしなかった自分がいました。

「誰がどういう工程で作ったのか、いつでもわかる状態って難しいですよね。私たちは、小さな団体を含めると150団体と取引しています。私たちはそのルートを観察して技術支援をしています。なにより顔が見えるものを身につけると愛着が湧いて嬉しくなりませんか?」と鈴木さん。

本当に見えているようで見えていない裏側
その値段の裏側、服の裏側では全く人権を考えられていない人達がいます。最近ではアパレル工場のビルが倒壊して1000人以上が亡くなった事故がバングラデシュでありました。
そのビルは亀裂が見つかっていて、従業員達は「このビルはいつか崩れる、ここで働きたくない」とオーナーに訴えていたそうです。しかし、オーナーもさらに上の取引先の納期には逆らえません。従業員は強制的に働かされていたそうです。その結果の事故でした。
そしてアパレル工場の取引先をたどっていくと・・・、私たちの身近にあるファッションブランドだったりするわけです。

安さの秘密を想像すること
私たちは何も知らないふりして、モノを買っていることが多いかもしれません。1着500円の裏側を考えずに買っている現実が今の世の中なのかなと思います。できるだけ買っている裏側が知れたらいいなぁと思います。それが私たちの言う”顔が見える”買い物なんです。


3、みんなが主役


今は買う人が優先の世の中です。ものづくりのプロセスの中で間に入る商社などの人達もたくさんいます。私たちは作っている人達が尊重されることを大事にしています。


4、買い手と作り手が平等である事。


平等って難しいんですけど、公正な対価を考えて取引しています。例えば生産者の人達が自分の子どもを学校へ通わせることができるような給料体制であること。商品そのものへの対価というよりも、商品をつくる生産者の方々が持続可能で健全であれること。それが、対等な“取引”と“対価”と考えています。


5、児童労働、強制労働がない。


絶対に児童労働、強制労働があってはいけません。ただ一般のアパレルブランドは、「自分たちのブランドは児童労働ないです!」って本当に言い切れるか、わからないかもしれません。理由は、間に色んな会社が関わっていて隠されていたりする事があるからです。


6、女性やマイノリティを動きやすくする。


例えば発展途上国の人達はまだ地位が向上出来るチャンスが少ないです。私達は女性が家でも働ける環境や、立場の弱い人達が働きやすい環境を作っていきたいと思います。


7、安全な労働環境を守る。


これはどの国でも難しい問題なんです。バングラデシュのビル倒壊事故で例を出しましたが、縫製工場では火災の事故が多いんです。電気の整備が行き届いておらす、配線がショートしやすいのです。働いている人の労働環境をサポートしてあげることが大切です。


8、組織づくりをサポートする。


工場同士でお互いの技術をシェアする機会を作っています。お互いの技術を指摘し合い、よりよい製品を生み出す関係づくりを行っています。


9、変化を促す。


私たちの活動を社会に訴えることにも積極的に取り組んでいます。例えば、4月24日は、ファッションレヴォリューションの日。ファッションが世界をよくする力になれることを伝えていきたいですね。


10、環境に配慮する。


作る行程で環境に負荷をかけない。例えば、無農薬で綿を栽培するようにしている。その土地の生態系を壊さないことを心がけています。



~フェアトレードの10の指針のお話の後は質問タイム~


Q:ファッション性も大切だと思うけど、そこはどんな風に取り組んでいますか?
→トレンドを読むのは勿論大前提。
どんな服が好まれるかデータ分析して、お客様の動向も常にチェックしています。
”フェアトレードだから買う”ではなく、”かわいいデザインだから買う”を当たり前にしていきたいです。

Q:電気アイロンよりも手織りミシンでやって欲しいと言っていましたけどそれは近代化を妨げているのではないですか?
→発展途上国では電気はすごく貴重であり、また安定もしていません。足踏みミシンだと電気は関係なく作れます。その土地の条件に根ざしたものに対応する事が大切です。

Q:仕事において出来ない人と出来る人のバランスはどうしているんですか?
→その人の出来る人のレベルに応じて考える事が大切です。この人は何が出来るかにフォーカスすると、その人だからできることが見つかります。



着る人もつくる人もしあわせになる未来


私たちが普段なにげなく買うもの。見えているようで見えないものをぜひ考える機会になって欲しいです。
アパレル側も今まで買い手ばかりを見ていましたが、これからは、生産者、間に入る人達全てが主役になれる社会になるようにしたいと思います。

また、皆さんもいろんな場所で働いていると思いますけど、それぞれに苦手なこともあり、また出来ない人と言われる人達にこそ出来る事もあります。それに、こちらが気付けないだけで、その人が活きることは絶対ある。これをこの仕事を通して学びました。そんな人達を温かく認めてあげる職場作りをしてほしいです。


自分の身につけているものについて「誰がどんな風に作ってくれたか」を説明出来たら、値段じゃ計れない愛着が生まれてきそうです。私もこれから買い物するとき、商品の裏側までしっかり見ようと思った素敵な講義でした!

皆さんも買い物する時の基準に”だれが、どんな風に作ったか”まで考えてみませんか?
普段の買い物がもっと楽しい時間になるかもしれませんよ。


(ボランティアスタッフ:伊集院 一徹)