シブヤ大学

授業レポート

2013/8/26 UP

あたりまえの暮らしって何? ~NPO法人ぱれっとの活動を通して考える~

「当たり前の暮らしってなんだろう?」
きっちり定義してしまうよりも、問い続けることが大事

本日の講師は、特定非営利活動法人ぱれっと事務局長の南山達郎さん。
学生時代からぱれっとのボランティア活動に携わり、障害者雇用を行うスリランカ料理店の店長を22年間務めた後、2013年4月よりNPO法人ぱれっとの事務局長に就任されました。

ぱれっとの信念は「就労、暮らし、余暇などの生活場面において障害のある人達が直面する問題の解決を通して、すべての人達が当たり前に暮らせる社会の実現に寄与」すること。
それを叶えるため行っているお菓子屋の工房やケアホーム、障害者と健常者が共に暮らすシェアハウスなど複数の活動について、映像を交えて1つ1つ丁寧に解説をしてくださいました。
(途中、お菓子屋ぱれっとがつくったクッキーのプレゼントも!)

そのなかには南山さんの原点となるエピソードも。
今から20年以上前、障害者が食べ物自体をつくることもめずらしかったそうです。
そして下請けばかりで月給も安い。「働くことが自立につながると掲げながら、決して良くない条件で働くよう強要することの何が自立なのだろう?」
そんな疑問からお菓子屋ぱれっとはスタートしたそうです。

そして、今回授業がつくられるきっかけとなった「ぱれコレ」の紹介も。
障害のある人もない人も混じりあって、一緒に作り上げるファッションエンターテイメントです。
映像のなかの出演者は誰もが笑顔で楽しそうです。
南山さんの解説がないと、障害あるなしはもちろん、みんな同じ“表現者”のようにみえます。

60名のメイクアップアーティスト、振り付けの先生なども多く関わり、全部で100人くらいの規模で行われます。「違う色と色とがまざりあうことで、思いがけない新しい色が生まれる」と南山さんはいいます。
「障害の有無にかぎらず、得意なこと、不得意なこと、できること、できないことはあります。障害があるために健常者にはできることができないというケースがある一方で、感じるままに自分を表現することはとても得意だったりするんです。『社会のルールや概念に縛られている私に、何か、とても大事なものを思い出させてくれました』といったぱれコレスタッフの一言も忘れられません」

ぱれコレは、自分の表現の仕方、振り付け、衣装を、皆で話し合って決めています。
障害のある人ない人誰もが平等に、自分が楽しむためにやっている。
そこには障害があるなしという線引きには捕われない自由で楽しい場がありました。


後半のディスカッションでは、「当たり前の暮らし/当たり前でない暮らしとは?」「当たり前に暮らせる地域社会はどうしたら実現できる?」について参加者とともに考えていきました。

「わかりやすかったのは震災直後。選択があるかないかが大きいのでは?」
「当たり前ってみえないもの。海外に行ったり、ギャップを知る、異質なものと関わる経験が必要。
そうすれば、いろんな人がいやすい社会になれるのでは」

参加者が思い思いに語るなかで、南山さん自身、当たり前ってなんだろう?と、スタッフの皆さんとつねに確認をしているそうです。
「その裏に当たり前でない暮らしってなんだ?何が当たり前で、何が当たり前じゃないのか。
こんなことなんじゃないか、を垣根なく語ることが大事。当たり前ってことに答えはない。
当たり前って何だろう?と意識してもらったことに意味があると思っています」

当たり前に暮らせること。
そのヒントは、多様な価値観を受け入れてくれる人、場、
支えてもらえるような仕組みが“当たり前”あることでもあり、
私たちが問い続けることをやめないことにあるのかもしれません。

(ボランティアスタッフ:山本絵美)