シブヤ大学

授業レポート

2007/3/1 UP

          

雨、ここはシブヤ。ここは道玄坂将棋倶楽部。
朝10時前、生徒が集まってくる。
「おはようございます。」
すでに端の席には瀬川先生。
なんとも落ち着いた空気が心地よい方だ。

10時過ぎ、授業が始まる。
先生が穏やかな声と笑顔で、将棋の歴史を語る。
将棋のルーツはインド“チャトランガ”というスゴロクゲーム。
それが世界に広がり、西洋では“チェス”中国では“中国将棋”となった。
日本では400年前にはすでに今の“将棋”が行われていた。
それが侍の戦いのシュミレーションとして武士の間に広まり、幕府や財界人の支援によってそれを専門の職とするものが出てきたのだと言う。
また、日本独特の「持ち駒」が誕生した理由も、
他国では「裏切り」として嫌われがちのこのルールだが、当時、日本は他国との戦いがなく内戦しかなかった為、「相手も、もとは同じ仲間」「殺すより生かす」という思想が強かったためと言われている。とのこと。
このルールのおかげで、よりゲームとして深み持ったことは言うまでもないだろう。
その後は“詰め将棋”、将棋においてとても大事な“詰める”(逃げ場をつぶして追い詰める)ということの練習である。初級の授業では3手詰み、上級の授業では7手詰みの問題が出される。
初めての人に、将棋のルールを教える上でこの“詰める”ということは一番理解されにくいことのようで、先生もいろんなところで苦労しているとのこと。
考え込む生徒たち…今までのシブ大のどの授業よりも脳内大騒動なのではないだろうか。
そしてその後には、お待ちかねの先生との対局。
詰め将棋で生徒の実力を見極めた先生は一人一人とハンデを決めていく、2枚落ち(飛車・角なし)~8枚落ち(飛車・角・香車・桂馬・銀なし)、こんなに減らして大丈夫?というほどのハンデがつき対局が始まった。今回行われたのは11面指しといい、先生が次々と盤を回っていき生徒11名全員と同時に対局する形式だ。
盤の前に座ると瀬川先生の表情が変わった。プロの顔だ。生徒の表情も真剣そのもの。緊張感のある空気が流れる。
パチッ!パチッ!といい音を響かせながら、まるでこの日の雨のように僕らを攻め立てる瀬川先生の駒、じわじわ僕らの靴を濡らして、確実に足元を濡らしてゆく。
苦い表情をする生徒たち、中にはいい勝負をする生徒さんも。
時間の関係で途中のまま終わってしまった方がほとんどで残念だったが、その後先生が一人一人講評していった。
授業後は雨も上がり、先生の優しい笑顔のような気持ちよい天気になっていた。

いろんな人のいろんな考えを包んでいるシブヤ。
そんな町で、将棋の盤の前でお互いの考えだけを読み合うコミュニケーション。
みんなが真剣に向き合うからこそ深い。
皆さんもやってみては?

将棋の、変わり者、親父くさいというイメージを払拭し、チェスのようなもっと知的なイメージを広げて行きたいと普及活動にも積極的な瀬川先生。これからもより一層のご活躍期待しております。


(ボランティアスタッフ 田口真也)